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ビジネス交渉で「武装」するより「自然体」が強い理由

ビジネスのあらゆる交渉に通用する「普遍的な原則」を抽出し、強者にも負けないための「鉄則」としてまとめ上げられた『交渉の武器』。著者は日本を愛するアメリカ人弁護士ライアン・ゴールドスティン氏だが、『交渉の武器』の中身は法律に関する交渉にとどまらない。日々、利害関係者との調整に奔走するすべてのビジネスパーソンに通じる内容となっている。今回は、丸紅株式会社に勤務し、海外の猛者たちとさまざまな交渉を重ねてきた金澤美可氏を対談相手に迎え、『交渉の武器』がビジネスの現場でどう生かされているのかを語り合っていただいた(構成:前田浩弥)。

「わからない」「知らない」を堂々と言えるか

金澤美可(かなざわ・みか)2007年に総合家電メーカーに入社し約4年間一貫して海外営業・海外マーケティング業務に特化、業務用食品機器や太陽光発電システム等の幅広い製品を担当し、いずれも深い業界知識を身につけながらメーカーパーソンとしての社内外営業のスキルを磨く。2011年に総合商社の丸紅株式会社に入社。2011年〜2017年の約6年間は化学品本部で再生可能エネルギー関連製品の営業に従事し商社パーソンとしての営業力とプロジェクト組成力、オーガナイザー機能を習得する。その後2017年にIoT・ビッグデータ戦略室、2018年にデジタル・イノベーション部で全社のデジタルトランスフォーメーション推進を担当。2019年4月からは広報部に配属。
ライアン・ゴールドスティン(Ryan S. Goldstein)クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン外国法事務弁護士事務所東京オフィス代表。カリフォルニア州弁護士1971年シカゴ生まれ。1993~95年、早稲田大学大学院に留学。98年、ハーバード法科大学院修了。99年、アメリカの法律専門誌で「世界で最も恐れられる弁護士チーム」に選出された、クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所(現)に入所。2005年に同事務所パートナーに就任。2007年に東京オフィスを開設。2010年に日本に常駐するとともに東京オフィス代表に就任した。東京大学大学院法学政治学研究科・法学部非常勤講師、早稲田大学大学院の客員講師などを歴任。

ライアン・ゴールドスティン氏(以下、ライアン) 今日はよろしくお願いします。今回、対談の相手として金澤さんをお招きしたのは、『交渉の武器』が第一線のビジネスパーソンに本当に役に立つ内容なのか、金澤さんにお話を伺って確かめたかったからなんです。

金澤美可氏(以下、金澤) そんな大役を私が!?(笑)一介のビジネスパーソンですよ、私は(笑)

ライアン いやいや、だからこそいいんです。金澤さんは丸紅という総合商社で日々、社内外の交渉に奔走している。『交渉の武器』は私が「弁護士」として培ってきた交渉術をまとめたものなのですが、それが「ビジネスの現場」でも役に立っているかどうかを知りたい。そう考えたとき、金澤さんにお願いしたいと思ったんですよ。

金澤 ありがとうございます。『交渉の武器』は、毎日が交渉の私にとって、「ああ、交渉ってこういうことなんだ」「こんなときはこうすればいいんだ」という、交渉の「基本的な考え方」を改めて教えてくれた一冊です。とても役に立っていますよ。

ライアン 本当に? 無理に言わせていませんか?(笑)

金澤 そんなことないです!中でも私がその通りだと思ったのは、『「自然体」こそが最強である』という項目ですね。

ライアン 具体的に言ってもらえると嬉しいですね。どうして、そう思ってくれたんですか?

金澤 私は、常に「自然体」を保つことは、実は難しいことだと思っています。つい、自分を大きく見せようと繕ってしまったり、「相手より大きな利益を得よう」と打算が働いてしまったりして……。でもそういうことはすぐ見抜かれますし、こちらも見抜きますからね。

『交渉の武器』を読みながら自分の仕事を振り返って、「自然体で相手と交渉をするためには、事前に十分な下準備が必要」とか、「日ごろから相手と信頼関係を築いておくことが重要」というようなことに改めて気づかされました。

そういえばライアンさんも、どんなときも常に「自然体」ですよね?

ライアン 私はちょっと、自然過ぎるかもしれないですね(笑)。

金澤 それがすごいなといつも思っていました。
ライアンさんにお会いするまで、私は「弁護士という職業は、相手を打ち負かすのが仕事だ」と思い込んでいました。でもライアンさんは、相手との会話でいろいろな情報を引き出しながら、相手に対する理解を深めて、そのうえで極めて「自然」に、自分の有利な条件へと交渉を収束させていく。「打ち負かす」というよりも、「やんわりとエスコートする」というような、そんな自然さがあります。

ライアン いっぱい褒めてくれますね。でも、金澤さんのおっしゃるとおりだと思います。オフィシャルな場で「自然体」になるのは本当に難しいですよね? 仕事の現場で「自然体」になれるには、5年くらいの経験が必要なんじゃないかな……。

仕事に就いて最初の数年は誰でも、覚えることがたくさんあるし、緊張するしで、自分の頭や体が自分のものでないかのような感覚に陥るでしょう。私も若いころは、「変なことをしたら上司やお客さまから叱られるんじゃないか」などといろいろ考えすぎて、ガチガチになってしまったことありますよ。

でも、成功体験を積んで、少しずつ自信がついてくると、だんだん自然に振る舞えるようになってきます。

金澤 そうですね。私も今振り返ると入社1〜2年目はまったく自然体になれていなかったと思いますが、一生懸命上司の交渉の進め方を観察したり自分なりに試行錯誤しているうちに、徐々に自然体になれる時間が増えたと感じます。

ライアン 弁護士も同じですね。若くて経験の浅い弁護士は、なかなか自然体になんてなれないものです。経験の浅い弁護士ほど、「高い報酬をいただいているのだから、『わからない』とか『知らない』なんて言ってはいけない」と考えてしまう。だけど、これが間違いなんですよ。

もちろん、報酬に応えようとする姿勢は素晴らしいことだけど、彼らは自分の知らないことを質問されたときになんて答えるか聞いていると、「えー……それはとても複雑な質問ですね。それはケースバイケースで、こういう場合とああいう場合もあって……」とがんばってしまうことがある。その気持ちはよくわかるけれど、逆効果なんですよね。

金澤 弁護士に限らず、わからないところを突かれて、そんなふうにしどろもどろになってしまうビジネスパーソンはたくさんいます。私も、今思い返すと“冷や汗”がでる様な場面はありました。

ライアン そうですよね。私も、若いころはそうでした。
でもベテラン弁護士は違う。私が若いころ勉強させてもらったあるベテラン弁護士は、クライアントから質問を受けたときに「それはわからない。だから2日間検討させてくれ」とはっきり言ったんです。私は「クライアントに『わからない』って言っていいんだ!」と衝撃を受けましたよ。

そのあと、上司は「クライアントの質問はとても鋭い質問で、即答できなかった。だから検討の時間がほしいと伝えた。それだけのことだよ」と言っていました。何の嘘も、繕いもない。だからこそ、結果として、クライアントからの信頼を得るんです。ともすれば、「わからないことをごまかさず、さらに2日間の時間をとって考えてくれたんだ」と、即答するよりも大きな信頼を得ることになる。

「自然体」の根本は、わからないことをわからないと言う「勇気」にあるんです。もちろん、事前に準備できることはすべて準備し、わかる努力をしたうえでの話ですけどね。...

提供元:ダイヤモンド・オンライン

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