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カンボジアの森に眠る古代都市「イシャナプラ」(サンボー・プレイ・クック)探訪


カンボジア・コンポントム州の美しい森の中に、サンボー・プレイ・クックと呼ばれる遺跡があります。ここは、有名なアンコール遺跡群よりも古い時代に造られた寺院及び古都遺跡で、古名を「イシャナプラ」といいます。2017年7月には、カンボジア国内3番目の世界遺産に登録されました。観光客もまだまだ少ないこともあり、未だ森の中に眠り続けているような神秘性をも感じさせる、いにしえの都です。

「イシャナプラ」は7世紀、真臘の王都として繁栄

写真:Tomie Tomy

広義のアンコール地域が都となったのは、日本の平安遷都とほぼ同時代です。では、イシャナプラが栄えた時代がいつかといえば、日本では飛鳥時代にあたり、聖徳太子の政治や法隆寺建立(607年)、さらに大化改新(646年)などがあった頃です。日本が律令国家に向けての国造りに邁進していた時代、カンボジアではのちの東南アジア最大の国家建設につながる道程にあり、それまでに類を見ない大都城が出現しました。
サンボー・プレイ・クック遺跡は、煉瓦造りの寺院群が有名ですが、その西側には 環濠と河川で囲まれた一辺2キロの都城遺構があり、一方東側にはメコン河支流のセン川と結ぶ水路や道路が整備されていました。河川ルートで外洋への道が開かれ、諸外国とも通じていた国際都市だったのでしょう。この国は当時、中国の文献で真臘(しんろう/チェンラ)と呼ばれていました。
「イシャナプラ」の名は、当時の王イシャナヴァルマンの都として史料に現れます。「隋書」には絢爛豪華な宮廷模様が描き出され、城内に2 万余の家、国内に30の大城があったといい、殷賑を極めていたようです。イシャナヴァルマンは、マヘンドラヴァルマン(チトラセナ)王の王子で、サンボー・プレイ・クック(これは後世の呼称/「豊かな森」の意)の地に王都を築きました。漢籍史料にはこの父子がかつての宗主国「扶南」(ふなん)を征服したとあり、それが現在の通説となっています。

見どころは煉瓦造りの寺院群。興味深い八角祠堂や空中宮殿

写真:Tomie Tomy

一般の観光者が訪れるのはやはり、煉瓦造り寺院のエリアでしょう。主な伽藍として北(プラサート・サンボー)、中央(プラサート・タオ)、南(プラサート・ジェイ・ポアン)の3寺院があり、その周囲にもいくつもの祠堂が散在しています。
大半が煉瓦造りですが、一部砂岩も使用。中でも印象的なのは、南寺院を中心に幾つかの祠堂に見られる八角形のデザインで、法隆寺夢殿などの八角円堂を彷彿とさせます。東南アジアでもそれほど多くの類例があるわけではなく、この形状が選ばれた理由や意味など、とても興味深いところです。八角円堂は供養・鎮魂の意味を持つとも言われますが、こちらはどうなのでしょうか。
また煉瓦壁面のレリーフに、宙に浮いたような宮廷の姿が彫られた「空中宮殿」(フライング・パレス)があることでも有名。重厚なアンコールの石造寺院とはまた趣が違い、淡い暖色系の煉瓦建物はどこか柔らかく、森に守られた聖域といったイメージです。イシャナプラ全体で130を超える遺構サイト、個別数では300近い遺構が発見されています。

建物内部も必見。プレ・アンコール時代のクメール造形美

写真:Tomie Tomy

現在、各祠堂内に入ることが可能です。祠堂は屋根頂部が失われており、狭い室内は薄暗いながらも光が差し込みます。外壁と違ってほとんど装飾のない煉瓦内壁は、シンプルな造形ラインと仄かな色のグラデーションがとても美しく、安置されている神像ではヴィシュヌ神とシヴァ神が一体となったハリハラ神、シヴァ神の妃ドゥルガー女神像など、当時のクメール美術の傑作を目にすることができます(ただしレプリカです)。また中央寺院は様式的には少し時代が下ったものと考えられていますが、正面を守る一対の獅子像も印象的です。

タプロムだけじゃない!熱帯の大樹に包み込まれた寺院

写真:Tomie Tomy

石や煉瓦の隙間に入った種子が成長し、大樹となって遺跡を包み込む様は、アンコールのタプロム寺院が有名ですが、サンボー・プレイ・クックでも幾つか見られます。
樹木は、本当は遺跡の破壊者なのかも知れませんが、同時に、今にも崩れそうな構造を辛うじて支えていたりもします。まるで、繭が包み守っているようでもあり、がんじがらめに締め付けているようでもあり…。人間の創造と自然の営みとが、争いと和解の末に渾然一体となって存在するかの如き姿に、不思議な畏敬の念を覚えます。

写真:Tomie Tomy

王都は世界に通じていた。コンポントム市内には博物館

写真:Tomie Tomy

歴史的にインドの影響が色濃くあり、彫刻で描き出された人の顔立ちは西洋的な彫りの深さを感じさせます。一方、中国大陸とも交流がありました。当時のイシャナプラは、ジャングルに切り拓かれた国際色豊かな大都市だったのではないでしょうか。
往時、メコン河とセン川を遡り、都の東端に位置する門前町に至って船を降りた異国の旅人たちは、表参道や運河を西に進み、眼前に現れた美しい寺院群の偉容に息を飲んだに違いありません。このコースが都の表玄関であったのでしょう。さらに西に向かうと、華やかでトロピカルなエネルギーに溢れた大都城が待っている……いにしえの旅は、きっとそんな風だったのかもしれません。

写真:Tomie Tomy

現代の遺跡旅行は近郊の街、コンポントムをベースにするのがお勧め。トゥクトゥクなら市街から北へ1時間前後で寺院遺跡群に着きます。アンコールのお膝元・シェムリアップに比べると街の観光産業ははるかに寂しいですが、その分のどかさが感じられて何だかホッとすることでしょう。シェムリアップからだと、コンポントムはプノンペンまでのちょうど中間点あたりに位置し、車での所要時間は3時間程度。コンポントム市内にはサンボー・プレイ・クックの石造彫刻などを展示したコンポントム博物館もあります。写真は博物館外観。
<コンポントム博物館の基本情報>
住所:Achar Srak Village, Achar Srak Commune, Steung Saen District, Kampong Thom
電話番号:+855 (0)12 634 835
アクセス:コンポントム市街中心部より国道6号を北へ約2キロ
オープン:8:00 - 17:00
入場料:無料
サンボー・プレイ・クックは現在、寺院エリア以外はほぼ何も整備されていない普通の村や森であり、案内人なしで一般的な観光ルートより外れるのはお勧めしません。観光エリアにはレストランもオープンし、丸焼きチキンなどおいしいローカルフードが味わえます。1400年前に想いを馳せながら、カンボジアの歴史と自然を満喫する旅をお楽しみ下さい。

サンボー・プレイ・クック遺跡の基本情報

住所:Sambor Commune, Prasat Sambor District, Kampong Thom Province
アクセス:シェムリアップから約170キロ、コンポントム市街から約30キロ
オープン:7:30 - 17:00
遺跡入場料:2018年1月1日より、10USドル/人
2017年12月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認下さい。

【トラベルjpナビゲーター】
Tomie Tomy

提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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