「今の仕事にはやりがいがあるから、長時間の残業も苦にならない」「自分は体力もメンタルもタフだから大丈夫だ」と考えて、毎日ハードワークを重ねていませんか? 実は、仕事に打ち込み、高い満足感を得ている人ほど、知らず知らずのうちにストレスを溜め込み、突然メンタルを壊してしまう危険性がデータから明らかになっています。書籍『働き方の科学』より、エビデンスに基づいて「働きがい」と「メンタルヘルス」の意外な関係を紹介します。(構成/ダイヤモンド社・上村晃大)
「働きがい」がメンタル不調のサインを覆い隠す
「仕事のストレスが健康に悪いとはもちろんわかっているけれど、働きがいを感じていれば特に問題ないのでは」と思っていませんか?
確かに、仕事での成長を感じたり、大きな目標を達成したりすると、精神的に充足感を覚える人も多いでしょう。
しかし、慶應義塾大学の佐藤豪竜氏の書籍『働き方の科学』によれば、仕事に打ち込んでいる人ほどストレスが溜まっていることに気づかず、メンタルを壊しやすいことを示唆した研究があるそうです。引用してみましょう。
脳を麻痺させる「ワーカーズ・ハイ」の正体
残業が深夜に及ぶと、なぜかハイテンションになり、一緒に残業している同僚との間に謎の一体感が生まれることがあります。
先ほどの佐藤氏も厚生労働省の官僚時代にこれを経験しており、ランニングで快感を得られる「ランナーズ・ハイ」になぞらえて、これを「ワーカーズ・ハイ」の状態だと表現しています。
しかし、この高い仕事満足感こそが、非常に厄介な落とし穴になり得ます。高い自己実現の感覚が、長時間労働によるメンタルヘルスへの深刻なダメージを覆い隠してしまうからです。
ある日突然、糸が切れたように倒れる前に
「やりがいがあるから」「達成感が得られるから」という理由で長時間労働を正当化していても、人間の心と身体の限界はいつか来ることを、エビデンスは残酷なほど明確に示しています。
本人の自覚の有無にかかわらず、労働時間が長くなればなるほど、メンタルヘルスへの負の影響は確実に蓄積していきます。
「昨日まであんなにエネルギッシュに働いていた人が、ある日突然、会社に来られなくなってしまった」という悲劇は、こうした「働きがいによるストレスの麻痺」が背景にあると推測できます。