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【連載12】“スマスマ”やライブで伝わる、SMAPの本当の歌ごころ

風格と説得力を見せた、“スマスマ”松任谷由実、谷村新司とのコラボ

 SMAPの歌といえば、最近、“スマスマ”の歌コーナー『S・LIVE』で耳にした曲が、妙に心に沁みる。松任谷由実とのコラボで歌った「守ってあげたい」は、これまでに何度も聴いたことのある曲でありながら、とてつもない新鮮さで、耳に飛び込んできた。SMAPとユーミンの6人が、一つの輪になって歌う。視線の交わし方、動きのシンクロの仕方など、歌で通いあう心が画面から透けて見えるような気がして、何度見ても飽きないし、曲を聴けば聴くほど、歌詞の深みがジワジワと伝わってくる。また、谷村新司と「昴」を歌った回も見応え、聴き応えがあった。アイドルとシンガー・ソングライターということで、曲に対する思い入れは違うはずなのに、ステージに並んで立った時の風格や迫力、歌に込められた熱やその表現力、説得力は互角に見えた。別に、SMAPと谷村新司が歌で競い合っていたわけじゃない。でも、トーク番組やバラエティでは、歌に対して謙虚に振る舞う彼らが、大御所を前に、堂々と、自分たちなりの“伝える力”“届ける力”を最大限に発揮している姿は、たくましく力強かった。

 過去に何度か、“スマスマ”の歌のコーナーをレポートするために、現場に立ち会ったことがある。その時も、SMAPの5人がスタジオでゲストとセッションするのは、基本的には“ドライ”と呼ばれるリハーサルと本番の、2回だけだった。本番は、よほど致命的な失敗がなければ、たいてい一発で決まった。あの緊張感。ピンと張りつめた空気。一瞬の静寂。そこから始まる美しい音楽。「失敗したら録り直せばいい」なんて空気は一切なく、そこにいる誰もが、まるで生放送のような“一曲入魂”の集中力で挑んでいた。トータルの取材時間にしたら15分程度だったけれど、毎回“素晴らしいプロの仕事を見せてもらった”と思って、感動した。特別な、珠玉の時間だった。1曲なら3分程度の本番なのに、SMAPのメンバーはゲストの曲を覚え、番組用に振り付けを作ってもらい、覚えて、そのゲストの持つ世界の住人になる。ほんのちょっとした視線や物腰から、ゲストへの愛や尊敬の念がこぼれていく。

五人五様のSMAPの表現力、歌で心を一つにしてきた

 歌下手を自覚しているのは、中居だけじゃなく、草なぎもそうだ。でも、草なぎの声には、鈴のような涼やかな響きと、優しさと穏やかさがあって、例えば「セロリ」のように、愚直な男心を歌った曲や、アルバム『We are SMAP!』収録の香取慎吾との二人曲「短い髪」のように、深い後悔や哀しみを歌った曲に込められた情感の深さは、SMAPの中でもピカイチと言える。また、ギターに目覚めてからの、「藍色のギャング」(アルバム『Mr.S』収録)のようなギター曲での“楽しくてしょうがない”その突き抜け方など、SMAPの中では彼が、性格的には一番ロックなのかもしれないとさえ思う。

 稲垣吾郎は、ビジュアルと歌声の“安定感”が図抜けているが、実はなりきり力もあって、中居との2人曲「逢いたくなって」(『BIRDMAN 〜SMAP 013』収録)では“切なさ”と“甘さ”を前面に出し、香取慎吾との2人曲「クイズの女王」(『SAMPLE BANG!』)は、ちょっとミュージカル風の曲調が、その後の2人のミュージカルでの活躍を予感させた。2014年、ちょうど同じ時期に稲垣はパルコ劇場で、香取は東急シアターオーブで、それぞれに全く違うタイプのミュージカルに取り組んでいた。稲垣は軽快に、香取は重厚に。かつて、スエディッシュポップが流行った頃、ソロでカーディガンズの「Carnival」を歌ったこともあるように、SMAPの歌の“おしゃれ感”を牽引しているのは、実は稲垣だったりする。

 香取慎吾の『オーシャンズ11』を観に行った時、近くでKis-My-Ft2のメンバーが観劇していたので、あとでキスマイの取材の時、「『オーシャンズ11』、どうでした?」と聞いてみると、千賀健永と玉森裕太が、「香取くんの歌が上手くて感動した」と話していたのを覚えている。デビュー以来、SMAPの中で一番歌声に変化があったのが香取だ。もちろんSMAPの曲でも安定しているし、声量はあるしで、5人曲を支える1人であることは間違いないのだけれど、どちらかというとヒップホップ志向が強かった彼が、『オーシャンズ11』では見事にミュージカルスターとして、ゴージャスな存在感を発揮していた。歌にも並々ならぬ迫力があって、「こういう香取慎吾をまた観たい!」と思わされた。いろんな意味で、香取にはまだ未曾有の才能が隠れている気がする。

 とはいえ、SMAPの歌の要といえば、何と言っても木村拓哉である。ライブDVDを観るたびに、木村の歌でのアレンジ力に感心させられる。何度同じ曲を歌っていても、ちょっとだけアクションを変えてみたり、タメの時間を伸ばしてみたり。ライブでつい木村を目と耳で追ってしまう理由を、DVDでしょっちゅう確認する有様だ。“泣いてるんだ”という歌詞で、涙を指で拭う仕草をしたり、ちゃんと音楽に心が乗っかっていることを、声色と表情と体の動きを駆使して、全身で届けてくれる。ライブでの木村は、もちろん強烈なスター性を発揮しながら、音楽に対してものすごく献身的だなと思う。「STAY」の長い長いAメロは、やはり木村が歌ってこそ、胸を打つのだ。

 ユーミンが、<初めて言葉を交わした日の その瞳を忘れないで>と歌った時、SMAPのメンバーの目それぞれに、無垢な瞳の色が映った気がした。そうやって、彼らはいつも、歌で心を一つにする。
(文/菊地陽子)
【連載13】に続く

【連載 1】SMAP解散がもたらした喪失感 終わらないことは“残酷”なのか?
【連載 2】SMAPにとっては“異色”だった国民的ソング「世界に一つだけの花」
【連載3】SMAPきょう25周年 記者が見た5人の真実 PART1
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART2 〜中居正広と木村拓哉の素顔〜
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART3 〜稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾の素顔〜
【連載4】逆境に強いSMAP ライブで見せた成長と結束の物語
連載5】SMAPのベスト盤 木村の歌を中居がプッシュしたあの日
【連載6】SMAP 中居正広 自分たちのことでタブーは作らない、“自虐”という神センス
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