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朝ドラ“王道”フォーマットが支える『とと姉ちゃん』好調要因

スタート以来、視聴率20%割れがない朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK)。ヒロインの小橋常子(高畑充希)がプロポーズされた6月8日は24.6%と自己最高タイ記録になった。そんな好調が続く一方で、ネットではそのストーリーに「もの足りない」という声もある。では実際に高視聴率をキープする『とと姉ちゃん』の好調の要因とはどこにあるのだろうか。

15分という短い時間で起承転結、翌日への“切れ目ない期待感”も煽る朝ドラ

 「もの足りない」と感じるかどうかは個人の感覚によるが、『とと姉ちゃん』は波風が立っても、すんなり解決するストーリー展開が多いのは事実。たとえば、小橋一家は仕出弁当屋に住み込むことになり、厳しい大将にドヤされ続けて小さくなっていたが、いつの間にかひとつ屋根の下で互いに思いやる間柄になっていたり、常子が編入した女学校でクラスメイトから孤立して悩んでいたのも、親友がひとりできてからは描かれなくなった。そういったトラブルなどの事態が収拾するエピソードはそれぞれあるのだが、印象としては問題がいつもあっさり解決する。常子が会社をクビになっても、その週のうちに転職先が見つかった。

 こうした展開に対して「もの足りない」との声も出るようだが、では視聴率が落ちず、番組自体は好評なのはなぜかと考えると、朝ドラがそもそも、そのようなフォーマットで描かれるドラマであるからだろう。もともと朝ドラは“時計代わり”ともされて、朝の忙しい15分間で物語を楽しむもの。通常の1話が30〜60分の連続ドラマとは異なり、15分という短い時間のなかで起承転結を描き、翌日の放送もまた観たくなる切れ目ない期待感をあおる作りになる。

 もめごとなどの事件が起きても基本的にはそのなかで解決されて、毎日の放送(週6日)のなかで話が進んでいく。それが、嫌な気持ちにならず1日を始められる、ストレスなく観ることができる、毎朝習慣的に視聴するのに適している朝ドラの脈々と受け継がれてきた王道フォーマットなのだ。

冒険的な試みも経て受け入れられている朝ドラの多様性

 近年の朝ドラでは、冒険的な試みも取り入れられていた。宮藤官九郎の軽妙な脚本でアイドルの世界と1980年代をフィーチャーした『あまちゃん』は、クドカン節の効いた小ネタが随所に取り入れてサブカル層と若い世代のファンを取り込んで話題になり、『マッサン』では史上初の外国人をヒロインに起用という大英断で、朝ドラに新しい風を吹き込んだりもした。そうした制作陣の絶えない挑戦は結果をともなっていて、それぞれが人気作になるとともに、朝ドラという枠に多様性をもたせ、作品の幅を広げることにつながっている。

 そんな視聴者層を拡大する流れも経て、現在の朝ドラブームとも言える好調を受け継いでいるのが『とと姉ちゃん』だ。ドラマチックな展開ばかりで物語に引きつけすぎるでもなく、かと言って飽きさせもしない。15分間のなかで大事件はないが、なにげない身近な出来事やトラブルを“ながら見できる”ところがそのよさだろう。物語の展開は、朝ドラ本来のあり方を突き詰めている“王道”。そこに立ち返った『とと姉ちゃん』に視聴者は好感をもちつつ、惹きつけられているのだろう。
(文:斉藤貴志)

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