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杉咲花インタビュー『もうこれからは絶対にしたくない――』

会えなくなって、哀しくて泣いたり…

――宏のピエタをご覧になったときは、どんな気持ちになりましたか?
杉咲もう、言葉が出なかったです。“はぁーっ”って。なんか絵にすごいパワーが詰まっていて、逆に近づけなかったです。真衣がピエタを見るシーンを撮るまで、現場でも(絵の制作過程を)見ないようにしていたんです。大事にしたかったので。それがある日、現場に着いた瞬間に見えちゃって。“うわぁ!”って思って、あのときは落ち込みました(笑)。でもそれ以上に、絵のすごさに驚いて。この感情を大事にしたいから、もう見ないでおこうって思っていました(笑)。

――正直ですね。
杉咲この作品で、女優としてたくさんのことを学びましたが、いちばん大きかったのは、監督との出会いでした。監督は本当に嘘が嫌いなんですよね。それまで、ちょっと違うなって思いながらも、ごまかして演じている部分が私にはありました。でも、監督と出会ってから、絶対に嘘はつきたくないと思って。嘘をつかない方が難しいし、やっぱり嘘をついて生きている部分もたくさんあるから。演じるうえで、もうこれからは絶対にしたくないって。

――完成作をどうご覧になりましたか。エンドロールで流れる主題歌『ピクニック』は、どんなふうに聴こえましたか? 
杉咲撮影中はずっと真衣でいました。家に帰っても、宏に会えなくて、哀しくて泣いたりとか。ここまで役になり切ったのは初めてでした。だから(完成作も)どうしても真衣としてしか、観られませんでした。これからもこの映画を観るのには、ちょっと大きな覚悟が要るというのか。どうしてもあの夏を思い出してしまうから。それはすごく愛おしくもあるんですけど、哀しいから。大好きな人の死が描かれていたりもするから……。でも出来上がったのを観て、あぁこの映画に出られて本当によかったと思いました。主題歌は、打ち上げのときに初めて聴いたんですけど、とにかく泣きましたね。“宏が歌ってる!”って。やっぱり真衣として聴くことしかできなくて。“こんなの遺して、ずるい。バーカ”って思いました(笑)。でもうれしかったです。

恋愛かどうかは重要ではない

――宏と真衣の関係は、やはり恋だったのでしょうか?
杉咲うーん。私はこの映画を恋愛映画だとは思っていなくて。というより、恋愛かどうかってことは、そんなに重要ではないと思うんです。ただただまっすぐに生きているふたりが、たまたま出会って、惹かれていって、それが恋かどうかはわからないけど、とにかくこの人が大好きで……。どこか似たふたりなんですよね。まっすぐで純粋で、最後には生きたいって思いが強くなって。真衣にとっては、最初は自分よりも弱そうで、そういう人が近くにいることで、救われた部分もあったとは思うんですけど、この人がいないとダメな気がしてくる。ただ、今まで会ったことのない、大事な存在だったことは確かだと思います。

――『トイレのピエタ』を杉咲さんの言葉で表現するなら、どんな映画でしょうか?
杉咲なんだろう……魂の映画ですかね(照笑)。あ〜恥ずかしいっ。「(この映画を)どういうふうに観てもらいたいですか?」とか「どんなことを感じてほしいですか?」って(取材で)聞かれることがあるんですけど、それって本当に人それぞれだし、自分の『ピエタ』に対する思いは全部、映画に詰まっているから。ぜひ映画館で観てもらいたいんですけど、なかなかうまく言葉にできなくて、悔しいんです……。
――お話をうかがっていると、杉咲さんのなかで、まだ真衣が生き続けているようですね。
杉咲まだどこかにいると思います。最近は“はぁっ、哀しい”ということは少なくなったんですけど……。監督が『ピエタ』の小説を出されたんですけど、それもまだ普通には読めないなって。これからもずっと私のなかに真衣は居続けると思います。

――ところで最近、ブログでユニークな「映画」をアップされたりしていますね!
杉咲動画を撮ったり、自分で編集したりするのが好きなんです。『バービー』は、バービー人形で映画を撮ってみたいと思い立って、ドラマの撮影がお休みだった日に、人形とアイロンビーズを買いに行って、3時間くらいで作りました。『ピエタ』と出会って、映画に興味が出ました。それまで映画のことを全然知らなかったんですが、けっこう観るようになったし、映画に出たいと思うようになりました。

――ブログの写真や言葉からも、表現するのが好きなことがよく伝わってきます。いつか映画監督デビューする日が来るかも!?
杉咲ただの趣味です(笑)。『ピエタ』が自分のなかで大きなものになってしまって、これからは『ピエタ』を超えるものを作らないと、って。まだまだなので、とにかく女優業をがんばります。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂聡)

トイレのピエタ

 画家への夢を諦め、窓拭きのアルバイトをしながら何となく生きてきた宏(野田洋次郎)。ある日、突然倒れ、病院で精密検査をうけることになるが「胃に悪性の腫瘍ができている。3ヶ月の命です」と突然の余命宣告。
 そんな中、出会ったばかりの女子高生・真衣(杉咲花)は明るく「今から一緒に死んじゃおうか?」と声をかける。病人相手でも容赦なく、ありのままの感情をぶつけてくる真衣に惹かれていく宏……。

監督・脚本:松永大司
出演:野田洋次郎 杉咲花 リリー・フランキー?市川紗椰?古舘寛治
2015年6月6日(土)新宿ピカデリー他全国公開
(C)2015「トイレのピエタ」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

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