『あまちゃん』女優その後の三者三様

2年前に一大ブームを起こしたNHK連続テレビ小説『あまちゃん』。現在、BSで再放送されて、再びハマる視聴者も少なくないようだ。ただ、サイクルの早い芸能界で2年は大きい。同作をきっかけに人気を呼んだ出演女優たちのその後は、さまざまな様相を見せている。

◆条件が限られるなか慎重になった作品選び?

 同ドラマに主演して、一躍国民的ヒロインとなったのが能年玲奈。もともと中1でローティーンファッション誌『二コラ』のモデルとしてデビューし、女優としては映画『カラスの親指』で石原さとみと美人姉妹を演じるなど順調にキャリアを重ねてきた。そして、長澤まさみ、川島海荷の後を継ぎ『カルピスウォーター』CMに出演していたところで、1953人が参加したオーディションから『あまちゃん』のヒロイン・天野アキ役に抜擢。絵に描いたようなブレイクを果たした。

 だが、『あまちゃん』以後は出演作が少ない。『ホットロード』『海月姫』と映画2本に主演したほかは、オムニバスドラマ『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)の一篇に出ただけ。あとは『ENEOS』などCMくらいでしか姿を見られない。最近では個人事務所を設立したとのことで騒動が持ち上がり、思わぬところで話題になっている。

 『あまちゃん』の後、出演オファーは多かったはずなのに次回作がなかなか決まらなかったのは、事務所が作品選びにかなり慎重になっているためと見られていた。『あまちゃん』が大ヒットしただけに、より大事に育てたいということだったのだろう。朝ドラは“新人女優の登竜門”と言われ、菅野美穂、松嶋菜々子、竹内結子、石原さとみらがヒロイン役から一流女優になっている。反面、朝ドラでのイメージから脱却できず、以後はパッとしないケースも多い。そんなこともあってか、能年は『ホットロード』で(『あまちゃん』以前から決まっていたそうだが)心に傷を抱える不良少女、『海月姫』では内向的なクラゲオタクと、天野アキとは印象が大きく異なる役を演じた。

◆“演技がしたい”能年玲奈への期待と不安

 連ドラの方は近年、全体的に視聴率が低落傾向のなかで、人気者ほど数字が冴えなければネガティブな話題にされがち。現在放送中のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の井上真央のように。低視聴率がすべて主演女優の責任ではないが、仮に能年の『あまちゃん』後の初ドラマが7〜8%なら、どう揶揄されるか目に見えている。ステイタスを落とさないためには、出演作選びは映画以上に慎重にならざるを得ない。加えて、『あまちゃん』でヒロインを演じた以上、以前のように脇役というわけにもいかない。条件に合う作品が限られていたのは事実だろう。

 それにしても、『あまちゃん』が終わって、もう2年。テレビに出すぎて飽きられることもあるが、出なくて忘れられることもある。能年の事務所は今年1月クールで、あるドラマのヒロイン役を断ったとの報道もあったが、『あまちゃん』で付いたファンはそろそろしびれが切れる頃。いくら何でも間が空きすぎる……と思われていたところに、今回の騒動。単に作品選びに慎重になっていただけではない事情があったのかと、合点はいく。

 本人はブログで「演技がしたい! 演技がしたい! 演技がしたーい!」と書いていた。『海月姫』の取材でも、言葉数は少ないなかで“もっと仕事をしたい”との気持ちはにじみ出ていた。過去にも人気タレントが事務所とのトラブルで“干され”状態になったことはあるだけに心配だ。経緯はどうあれ、あれだけの逸材が埋もれてしまったら大きな損失で、ファンはやり切れない。とにかく彼女の新作を早くテレビで観たい。

◆有村架純、積極的な露出で好循環が生まれた

 一方、『あまちゃん』後に最も活躍が目につく女優といえば有村架純。天野アキの母親・春子(小泉今日子)の少女時代を演じ、出番は回想シーンのみで多くもなかったが、放送中からまずCM出演が『フロム・エー ナビ』『TEAS’TEA NEW YORK』など一気に増えた。翌2014年上半期のCM起用社数ランキングでは12社と、桐谷美玲と並び女性タレント1位に。

 連ドラも、『あまちゃん』以前は『SPEC』(TBS系)での本筋に絡まない婦警役などが知られる程度だったのが、『あまちゃん』終了前の『スターマン・この星の恋』(フジテレビ系)に始まり、『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)や『弱くても勝てます!』(日本テレビ系)などに相次ぎ出演。映画では『ストロボ・エッジ』『ビリギャル』と話題作での主演が続く。能年のメディア露出の少なさとは対象的だ。

 春子の少女時代は80年代の設定で、劇中の有村は聖子ちゃんカット。小泉今日子のデビュー時に似ていると話題になったが、1993年生まれの有村本人のイメージとは重ねられなかった。顔は売れつつ特定の色は付いていない状態だったのが、多くのCMに起用された一因。また、能年と違い脇役だったために、『あまちゃん』後も番手にはこだわらず、オファーがあれば基本どんどん受けた。多くの作品に出て人気と知名度が上がり、主演クラスでもキャスティングされ始める好循環が生まれた。

 有村はもともと可愛いヴィジュアルながら、芸能界のなかで突出するまでには行かず、大勢いるアイドル女優のひとりに止まる可能性もあった。『あまちゃん』ブームで来た波を逃さず、出演作を絶やさない戦略が成功して今に至る。ただ、多くの作品に出ただけに、新鮮さという意味での旬は過ぎかけている。年齢を重ねながら飽きられない存在になれるか、ここからが真の正念場だろう。

◆橋本愛、我が道を貫く活動スタンス

 若手女優では『あまちゃん』で能年に次ぐポジションだった橋本愛もいる。北三陸でアキの親友になった足立ユイ役。東京でアイドルになることを夢見る美少女で、アキとユニット“潮騒のメモリーズ”を結成。ふたりで振りを付けて歌うシーンはクライマックスのひとつだった。

 橋本も『あまちゃん』後は、4部作の映画『リトル・フォレスト』に主演、公開中の『寄生獣』でヒロインなど活躍を続けている。ただ彼女の場合、『あまちゃん』の前から映画出演は多かった。広く若手女優のなかでも1〜2を争うレベルで。『告白』でのクラス委員長役から注目され、大ヒットした『桐島、部活やめるってよ』や『さよならドビュッシー』などではヒロイン。ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞なども受賞している。その演技力や美少女ぶりだけでなく、どこか独特な個性をにじませる女優オーラはすでに高く評価されていた。

 『あまちゃん』で一般層への知名度は格段に上がったが、活動のスタンスは以前と変わらない。NHKBSプレミアムの『ハードナッツ!』で連ドラ初主演、演技派を集めたフジテレビ開局55周年ドラマ『若者たち2014』に出演したが、基本テレビとは距離を置き、映画をベースにしたまま。事務所スタッフによれば、「ドラマを避けるわけではないが、本人の気質的にどっぷり取り組める映画向き」とのこと。クールで強めな佇まいからも、役ながらアイドルとして歌った『あまちゃん』の方が彼女にとってはイレギュラーな流れで、過度にブームに乗らず我が道を貫いた。

 女優として三者三様の資質が、『あまちゃん』後により明確になってきた3人。能年はおおらかなスケール、有村は親しみの持てる可愛らしさ、橋本はエッジの効いた存在感を光らせながら、さらなる成長を見せてくれるはず。順当に行けば、それぞれにポジションを築いて、将来の日本のドラマ・映画界を引っ張る存在になるだろう。
(文:斉藤貴志)

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