2012年度の映画賞レースのラストを飾る『日本映画プロフェッショナル大賞』の授賞式が15日、都内の劇場で開催され、主演男優賞を受賞した井浦新、主演女優賞の前田敦子、作品賞の入江悠監督＆キャストらが登壇した。

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　『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』『かぞくのくに』の演技で主演男優賞を受賞した井浦は、監督賞を受賞した敬愛する故若松孝二監督（『11・25　自決の日　三島由紀夫と若者たち』『海燕ホテル・ブルー』）のマフラーをまとって、自ら受賞した賞のほか、若松監督の代理としてもステージに上がった。

　その井浦のスピーチは、若松監督への想いとともに今の映画界を憂い、映画ファン誰もが共感する、心から絞り出したかのような言葉だった。「日本映画界に今激震が走っています。地方でも東京でもミニシアターの閉館が増えて、（過去に比べて）映画は撮りやすくなったけど、上映ができません。そんな今こそ若松監督の功績を見直さなければいけない。僕が若松監督の背中を見て学んできたことのひとつは、全国津々浦々に自分の映画を届けに行って、観た方々と語りあうことです。監督が訪れて満員になった映画館で、観客にも劇場スタッフにもよろこんでもらう。草の根運動的なことですが、映画人として当たり前のことです。そういったことが大きな映画になればなるほど薄れてきていて、映画に元気がなくなるきっかけになっています。映画界が今の映画ビジネスを見直して前進していくことを心から願っています。若松監督の独立プロダクションは、最後の砦でした。映画を衰退させてはいけない。映画の火を消させてはいけない。映画人それぞれが一丸となって活動し続けなければいけない。日プロ大賞が続けられていることもとても価値のあることだと思います。今回の若松監督の受賞を機に作品をご覧になってください。貴重な日本の歴史を感じることができます」。この日の授賞式は前田が出席することもあり、満席の会場には、日プロ常連の映画ファンだけでなく、前田ファンらしき若い世代の男女も目立ったが、井浦の言葉には客席全体から惜しみない拍手が送られていた。

　一方、『苦役列車』（山下敦弘監督）の演技での主演女優賞となった前田は「映画を愛する皆様からいただけた賞で本当にうれしいです。まだ私は（女優として）タマゴですけど、胸を張って映画好きと言える自分でいたいです」と挨拶し、小津安二郎作品などを好んで観ていることを明かした。AKB48卒業後はコンスタントに映画出演し、主演作『クロユリ団地』がヒットするなど女優としての評価を高めるなか、自身の女優業については「出演させていただいたすべての作品から、いろいろな成長をするきっかけをいただいています。山下監督との出会いはそのなかでも一番大きいと思います。こういうふうになりたいという自分の姿を初めて話せました」。この日も、山下監督によるMUSIC ON! TVのドラマ『タマ子』夏編の撮影のあとに出席したという。

　また、この日の授賞式の最後に登壇した、作品賞『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』の入江悠監督とMIGHTY役の奥野瑛太、IKKU役の駒木根隆介らキャストは、そのほかの受賞者もいるステージ上で突然、劇中の役柄そのままのラップバトルを繰り広げた。そんなこれまでの日プロ大賞授賞式にはなかったサプライズに、観客、受賞者、スタッフを巻き込んで会場は大いに盛り上がり、彼ららしい作品への想いと映画への愛を届けた。その後、同作のオールナイト上映が終わった朝5時、劇場の外では入江監督、奥野ら『SR』キャスト＆スタッフが総出で観客を出迎え、一人ひとりと握手をしながらお礼を述べていた。この日の関係者のなかでも、映画人としてプロの姿を見せ、自ら作り上げた作品と映画そのものへの深い愛を、観客の心へもっとも伝えたのは彼らだったろう。

　今年で22回目を迎える日プロ大賞は、その年の映画賞レースのラストに発表され、作品への評価が高いにもかかわらず主な映画賞では受賞に至らなかった作品、様々な理由から興行面で結果を出せなかった作品を、独自の視点で選出、表彰する。

■日本映画プロフェッショナル大賞公式サイト