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ポン・ジュノ『いろいろな感情を表現したいから複雑になる』

鬼才監督としてその名を世界中の映画シーンに轟かせるポン・ジュノ。そんな彼が国際キャスト、スタッフとともに初めて手がけたインターナショナルプロジェクトが、世界167ヶ国で公開される韓国・アメリカ・フランス合作映画『スノーピアサー』。ポン・ジュノが今この作品を手掛けた意味、世界マーケットへの進出を計る韓国映画界の動向について聞いた。

映画のシナリオを書くときにいつも悩むこと

――『スノーピアサー』の原作を読んだとき、かなりの衝撃を受けたそうですね。監督は原作をどのように掘り下げていったのでしょうか。
ポン・ジュノ言ってしまえば、映画では原作がすべて変わっているとも言えます。登場するキャラクターや起きる事件、アクションなど。また、クロノールと言われる麻薬や、タンパク質でできたブロック状の食料、一年で列車が世界を一周することなども新たな設定です。でも、氷河期を迎え、生き残った人類が列車に乗っていること、その列車の前方には金持ちが、後方には貧しい人たちが乗っているという、原作漫画に描かれた発想が偉大だからこそ、この映画が作れたと言えるでしょう。

――監督は、映画には“いろいろ詰め込まない”ことも重要と言われていました。今回は、かなり詰め込まないことが難しかったのではないでしょうか。
ポン・ジュノそれは映画のシナリオを書くときにいつも悩むところです。必要以上に詰め込むと消化不良を起こし、映画を台無しにすることもあります。今回は、ギリアムとウィルフォードの関係、17年前の事件、列車の外に出て凍ってしまった人々、ナムグン・ミンスとヨナの関係など、テレビのシリーズならともかく、二時間ですべてを描くということは、かなりの密度にはなってしまいました。

――監督の映画で印象的なのは、笑いのシーンという人も多いと思います。監督はどのようなこだわりを持っていますか?
ポン・ジュノ確かに私の映画のなかの笑いは、痛快に笑えないものは多いですよね。だから好きな人と嫌いな人に分かれるみたいです。でも、人間の喜怒哀楽はそんなに割り切れるものではなく、喜びと一緒に怒りがあったり、いろんな感情が混在しているものなんです。そういう感情を映画で表現したいから、複雑な笑いになるんです。

――監督は以前、『母なる証明』をひと言で表していました。今回の『スノーピアサー』をひと言で表すと何になるでしょうか。
ポン・ジュノそうですね、「列車を壊せ!」はどうでしょうか。列車は映画のなかでは、システムを意味しますから、「システムなんてクソくらえ」という意味でもあります。

――監督の映画には、毎回、何かに対する疑問や怒りがテーマにあるように思います。それは、常日頃から感じていることなのでしょうか。
ポン・ジュノ私は小心者なので、怒りというよりも、恐怖を感じています。恐怖を感じると隠れることになります。隠れるとのぞき見ることになり、そうすると細かいものが見えてくるんです。クリエイターというのは、社会に馴染めない人が多いんですよ(笑)。馴染める人なら社会のなかでうまく生きていけますけど、そうでないからこそ、映画を作ったりしているんです。

――この映画のプロデューサーのパク・チャヌクさんは監督にとって仲間でもありますよね。やはりパク・チャヌク監督も欠乏しているからこそ一緒に映画を作ることができたんでしょうか。
ポン・ジュノやっぱりほかの監督も社会のなかで苦労はされていると聞きますよ(笑)。パク・チャヌク監督は古くから親しくさせてもらっていて、私の大先輩です。私はまだまだ若手です(と若手であることをアピール!)。

人間やシステムの本質を掘り下げることが重要

――そのパク・チャヌクさんが、今回の映画では、プロデューサーとして外部の方と戦ってくれたこともあったのでしょうか?
ポン・ジュノパク・チャヌク先輩は、プロデューサーである前に監督でもあります。だから、後輩監督の私がやりたいように映画を作れるように助けてくれました。シナリオ、キャスティング、編集の作業で、口を挟んできたことは一度もありません。もしかしたら、出資者などから何か言われたこともあったかもしれません。でも、私はそんなことを一切聞かされませんでした。そパク・チャヌク先輩がすべて吸収してくれたんじゃないかと思います。でも、3Dで撮るか撮らないかということでは、意見が対立したことがありました。

――3Dでは映画を撮りたくなかったんですか?
ポン・ジュノ個人の好みの問題だと思います。3Dはその空間に入っているような感覚がありますよね。私は平面化された表現により強いイメージを感じるんです。

――今回の映画は英語で制作されることもあり、英語圏での公開も念頭にあったと思います。そういう点で、以前とは映画作りで変わった部分などはありましたか?
ポン・ジュノそこまで考える余裕はありませんでした。この映画は2時間の間、列車が走り続けます。さまざまな人種の生存者たちが乗っているため、さまざまな国の俳優さんたちと撮影しないといけません。だから、そこに神経を使うことでせいいっぱいだったんです。どの国の人が観るからということに気を遣う状況でもありませんでした。それよりも、人間の本質とは、人間の条件とは、そしてシステムとは何か? ということを掘り下げるほうが重要だと思いました。人間としての普遍性を描けば、どの国の人が観ても理解できると思いました。でも、それは監督としての意見です。プロデューサーならば、国家別でどのようなマーケットがあるかという分析をする必要もあると思います。

――欧米でも公開を予定している大きなプロジェクトですが、監督が海外でもやりたいと思っていたのでしょうか?
ポン・ジュノ原作のアイデア自体が、「ノアの箱舟」のように、列車のなかにさまざまな国の人が乗っているというものだったので、韓国の俳優だけが列車にいるというのは不自然です。だから、ストーリーに沿っていった結果、インターナショナルな映画になりました。また、現場で最も大事なのは俳優です。彼らが演じやすい環境を作るために、アメリカやイギリスのスタッフも多くなり、自然と国際的なプロダクションになりました。今回は、あくまでも私は原作のコンセプトに沿って進めただけですが、プロデューサーはまた違った観点を持っていたでしょうね。走る列車を撮るのは技術的にも複雑で、製作費もかかります。そうなると、それに見合ったマーケットを確保しないといけませんから。

――本作のプロデューサであるパク・チャヌク監督やキム・ジウン監督も2013年にハリウッドに進出しました。韓国映画は近年、マーケットを海外に広げようという意思があるように思いますが、監督はどうお考えですか?
ポン・ジュノギレルモ・デル・トロ監督やアン・リー監督のように、持続的にハリウッドで撮れる監督というのは、なかなかいるものじゃありません。彼らのようにハリウッドで成功した監督もいますが、ハリウッドに挑戦するだけで終わる監督はもっとたくさんいるのです。昨年はたまたま韓国の監督がハリウッドに進出することがありましたが、韓国の映画界が計画していたわけではないと思います。私自身も、ハリウッドでこれからも撮りたいという目標があるわけではないんです。次に撮りたいと思っている映画のアイデアがふたつほどありますが、韓国国内の作品を想定しています。
(文:西森路代)

映画『スノーピアサー』

 2014年7月1日。地球温暖化を阻止するために、78カ国でCW-7と呼ばれる薬品が散布され、地球上はすべて氷河期のように深い雪で覆われた。かろうじて生き残った人類は皆、一台の列車「スノーピアサー」に乗って地球上を移動し始める。

 17年後の2031年。その列車では、多くの人間が後方の車両に押し込められ、奴隷のような生活を強いられる一方、一部の上流階級は前方車両で、雪に覆われる前の地球と変わらない贅沢な生活をしている。そんな中、ひとりの男が立ち上がった。男の名はカーティス(クリス・エヴァンス)。彼は、仲間を引き連れて、自由を求め、反乱を試みて先頭車両を目指すのだが…。

監督:ポン・ジュノ
出演者:クリス・エヴァンス ソン・ガンホ ティルダ・スウィントン オクタヴィア・スペンサー
【映画予告編】 【公式サイト】
2014年2月7日(金)全国ロードショー
(C)2013 SNOWPIERCER LTD.CO. ALL RIGHTS RESERVED

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『スノーピアサー』公式サイト

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