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令和の若者はなぜ“ポップ×ダーク”な表現に惹かれるのか? クリエイター・寺田てらが語る、新世代の感性

デジタルクリエイター・寺田てらさん

デジタルクリエイター・寺田てらさん

 Adoの楽曲にみられる世界観から、“地雷系”と呼ばれるファッションスタイルの流行まで、近年、若年層の間では“ポップ×ダーク”な感性が存在感を増している。明るく親しみやすい「ポップ」と、不穏さや毒気が漂う「ダーク」という、相反する要素を掛け合わせた表現は以前から存在していたが、今、改めて若者たちの心をつかんでいる。なぜ今の若者は“ポップさと影が共存する表現”に惹かれるのか。若年層から圧倒的な支持を集めるデジタルクリエイター・寺田てらさんに、その背景を聞いた。

「可愛い」「ポップ」だけでは埋もれる時代 若者が求める“違和感”

  • 寺田さんが手掛けたAdo「阿修羅ちゃん」MVイラスト。(ユニバーサルミュージック)

    寺田さんが手掛けたAdo「阿修羅ちゃん」MVイラスト。(ユニバーサルミュージック)

 Adoの「阿修羅ちゃん」やナナヲアカリの「ダダダダ天使」のMVイラストなどで知られる寺田てらさん。ビビッドな色彩とどこか不気味さを感じさせるモチーフを掛け合わせた作風はSNSを中心に広く浸透し、ヨウジヤマモトやanna sui nycなどファッションブランドとのコラボレーションも相次ぐ。

 その独自の世界観の原点は、子ども時代に親しんだインターネットカルチャーにあるという。小学校4年生の頃からネット文化に触れ、当時流行していた作品よりも、“アンチ大衆”ともいえる少しひねりのあるサブカルチャーに惹かれていった。

「表現面でもテーマ面でも、そうした世界観に影響を受けながら絵を描いてきました」

 では、こうした“ポップさと影が共存する表現”は、なぜ今の若者たちの心をつかむのか。寺田さんは、その背景に「違和感」という要素があるとみている。

「タイムライン主流のプラットフォームが増え、今は身近にエンタメがあふれています。日々、大量のコンテンツが流れていく中で、ただポップや可愛いだけのものは埋もれてしまうものだと思います。目に留まるのは、少し引っ掛かりがあるもの。“なんだこれ?”と思うような違和感があると、一瞬でも立ち止まる。そのわずかなアクセントが、記憶に残るかどうかを左右していると感じます。私自身も普段から、色の組み合わせやモチーフで『カワイイけれど、なんだかちょっと変』という奇妙さを意識しています」

 7月に発売される液晶トイ『PixTube(ピクチューブ)』に寺田さんを起用したタカラトミーの企画開発担当・冨樫宝子さんも「単に可愛いだけでは、今の子どもたちには届きにくくなっている」と話す。

タカラトミー企画開発担当・冨樫宝子さん (C)oricon ME inc.

タカラトミー企画開発担当・冨樫宝子さん (C)oricon ME inc.

「現代の子どもたちは情報社会の中で育ち、昔に比べてずっとリアルな感覚を持つようになっています。プリンセス像も、王子様を待つ存在ではなく、自立したキャラクターが描かれるようになりました。今の子どもたちは、昔ながらの可愛いだけでは物足りなさを感じることもある。『世の中そんなに甘くないよね』という感覚を、子どもなりに理解しているのだと思います。だから少しリアルで、少しダークさがあるもののほうが共感されているのではないでしょうか」

昨今の「考察文化」とも紐づく嗜好、ティーンが熱狂する“余白”

 では、若年層は“ポップ×ダーク”の表現に何を求めているのだろうか。寺田さんは、一口に若年層といっても、ティーン世代とそれより下の世代では少し違いがあるとみている。

「ティーンの子たちは、自分の“好き”をある程度理解したうえで、もう少し変わったものや、自分だけの好みを探しているように感じます」

 こうした少し変わったものへの興味が、ポップさの中にダークさや違和感を入れた表現への関心につながっているという。さらに寺田さんは、最近の「考察文化」とのつながりにも注目する。

「今、流行している海外のホラーゲームの中には、ストーリーの随所に考察要素が組み込まれている作品がたくさんあります。ただ面白いだけでなく、自分で考えられる“余白”があることが、今のティーンにとっての魅力になっていると思います」

  “ポップ×ダーク”の表現も、こうした「考察して楽しむ」体験と重なっているという。寺田さんは、自身が手がけたAdoの「阿修羅ちゃん」のMVでも、その傾向を強く感じたと振り返る。

「MVの意味や、『なぜこの動きをするのか』『なぜこの歌詞なのか』といった点に興味を持つ人がとても多いと感じました。その解釈がSNSで共有されて、さらに広がっていく。考えてシェアすること自体が、今のティーンのコミュニケーションになっていると思います」

キッズも求める「ひと癖」 超デジタルネイティブ世代の感性

 一方、ティーンより低年齢のキッズ世代が求めるものは、また少し異なる。寺田さんは「赤ちゃんの頃からデジタル機器に囲まれて育った世代なので、まずは理屈抜きで、感覚的に『面白そう』と思えることが大切」と話す。

 この「感覚的なフック」を意識したアプローチは、寺田さんがイラストやキャラクターデザインを手がけた液晶トイ『PixTube』にも反映されている。

「小学生向けの商品なので、ダークな要素はかなり抑えていますが、それでも『カワイイだけ』にはしませんでした。『違和感』と呼ぶほど強くはないものの、色使いや髪型などに少しだけ“ひと癖”を加えることで、子どもたちの直感に引っかかる要素を意識しています」

7月18日に発売された液晶トイ『PixTube(ピクチューブ)』

7月18日に発売された液晶トイ『PixTube(ピクチューブ)』

 『PixTube』は、レバー操作に合わせて液晶画面内のキャラクターがチューブの中を駆け巡り、お世話やミニゲームが楽しめる玩具。デジタルとアナログの遊びを掛け合わせた新感覚の液晶トイとして展開されており、寺田さん描き下ろしによる20種類以上の個性的なキャラクターが登場する。

 メーカー側もまさに、こうした子どもたちの目に留まる「直感的なフック」を求めて寺田さんを起用したという。

 タカラトミーの冨樫さんは「今の子どもたちに響くものを考えたとき、デジタル的な世界観との親和性が高く、ひと目で印象に残る寺田さんの独自の色彩感覚が決め手になった」と振り返る。さらに「デジタルの楽しさに加え、レバーを動かすアナログな体験を組み合わせることで、今の子どもたちが求める『新しい驚き』を届けたかった」と、開発の狙いを語る。

 膨大な情報やコンテンツに囲まれて育つ“超デジタルネイティブ世代”。ありきたりな表現では心が動きにくい彼らにとって、「少し違う」「少し気になる」という感覚は、興味を引きつける大切な入り口になっている。

 ティーン世代は自分で深掘りできる「考察要素(違和感)」を求め、キッズ世代は直感的にワクワクできる「感覚的なフック(ひと癖)」を求める。世代によって受け取り方は異なっても、その根底にあるのは「ありきたりではない意外性」だ。

 異なる要素をあえて掛け合わせることで生まれる新しい魅力の中にこそ、新世代の感性を動かすヒントが隠されているのかもしれない。

(撮影/逢坂聡 取材・文/河上いつ子)

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