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「アルファ世代」の子どもたちに必要なものは? “共感”と“主体性”を育むコミュニケーショントイの意義
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12月27日に発売される手のひらサイズのペットロボット「マイクロペット」(C) TOMY (C)2024 The Moose Group
生まれながらにデジタルと共に育つ世代に「いかに驚きを届けるか」
こうした背景から“超デジタルネイティブ”と呼ばれる世代を、創業101年を迎えた玩具メーカー大手・タカラトミーでは、どう捉えているのか。同社開発部の武田誠さんは、こう話す。
「これまでの子どもたちは、小学生・中学生へと成長するにつれゲーム機やデジタルデバイスに触れ、おもちゃから離れていくのが一般的でした。しかしアルファ世代は、物心ついた時からデジタル環境に囲まれて育っています。SNSとともに成長したZ世代よりも一歩先を行き、“慣れる”という段階をほとんど経ず、最初から使いこなしている世代です。そうした子どもたちに、どうすれば新鮮な驚きを届けられるのか。そこが大きなテーマになっています」(武田さん/以下同)
例えば、従来は画面内で完結していた液晶お世話遊びに“直接触れる”感覚を取り入れた『ぷにるんず』は、2021年の初代発売以降シリーズ化し、今年は遊びの要素やデザインをフルリニューアルした最新版「ぷにるんず ぷにすたる」を発売。10月に登場したデジタルトイカメラ『FUNSHOT』は、 レトロ感のある画質のアナログ要素と、撮影通知やスマホへ画像を転送できるデジタルな要素の融合が話題を集めた。
こうした試みを重ねる中で、タカラトミーが次の一手として送り出すのが、今月27日に発売される手のひらサイズのペットロボット「マイクロペット」だ。小さな体で多彩な表情や動きを見せ、お世話やコミュニケーションによって“成長”していく「マイクロペット」。同社はこの最新プロダクトに、アルファ世代へ向けたどんな提案を込めたのか。
画面で完結しない、“触れる”体験の価値
その後、2009年には人工知能を搭載した「マイクロペット-i」が登場。物を追いかけたり障害物を避けながら散歩したり、歌を歌うなど、より“自分の意思”を感じさせる本物のペットのような愛らしさを備えた。そして今回の3代目は、オーストラリアの玩具メーカー・Moose Toysとの共同開発によって「今の時代のマイクロペット」として刷新。目指したのは、液晶お世話トイで人気の“コミュニケーション体験”をマイクロペットで再現することだ。
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2002年7月に発売された初代マイクロペット。
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2009年7月に発売された「マイクロペット-i(アイ)」
その根底にあるのは、デジタル機器に慣れ親しんだアルファ世代に“驚き”を届けるとともに、他者の気持ちに寄り添ったり、自分から関わろうとする“主体的な遊び”を育みたいという思いがある。
令和版マイクロペットは、表情・音・リアクション・動きなど50種類以上の多彩な機能を搭載。頭部の星マークの色が、赤ならおしゃべり、青ならトイレなど、おねだりしてくれるので、それに応えていくと、レースやダンスといったできることが増え、新たな動きや表情も見せるように成長していく。
喜んだ表情を見せるだけでなく、間違ったお世話をすれば不機嫌になる――つまり、“相手の気持ちを想像しながら関わる”リアルなコミュニケーションを体験できるのが大きな魅力だ。
進化するAI玩具の中で、問われる“玩具メーカーの本懐”
その体験を実感した一人が、マーケティング担当のZ世代・中山日菜乃さんだ。
「遊べば遊ぶほど表情が変わっていくので、どんどん愛着が湧くんです。何を言っているかも自然とわかってきます。私が子どもの頃のペットロボットは、ここまで“生きているっぽさ”がなく、感情もあまり感じられませんでした。今の技術だからこそ実現できているのだと思います。何より、これが2498円で買えることに自社ながら、本当に驚きました」(中山さん)
中山さんが強調するように、“手に届きやすい価格”もまた、同製品の強みのひとつだ。近年はAIを搭載した数十万クラスの高価格帯ペットロボットも多いが、タカラトミーはあくまで「多くの人が手にできる価格」を重視した。
リクエストに応じたお世話のほか、おしゃべりなどのコミュニケーションも楽しめる。
最新AIを搭載すれば、より高度で“本物さながら”のペットトイをつくることは、もはや技術的には難しくない。タカラトミー自身も、多様な価格帯・機能の玩具を展開している。しかし一方で、どれほど技術が進んでも、子どもが日常的に触れ、繰り返し遊びながら愛着を育てていく、そうした“遊びの原点”をどう守るかは、メーカーにとって常に向き合うテーマでもある。
今回の取り組みは、高性能化を追うだけでなく、「手に取れる価格で」「毎日そばに置きたくなる存在に」という視点から、デジタル技術とのほどよい距離感を探った試みだ。技術の進化が加速する中で、“遊び”と“テクノロジー”をどう調和させるか。そのひとつの答えが、この商品に込められている。
“今の子どもたち”にフィットする遊びのかたち
「Roblox」内に「マイクロペット」のバーチャル空間が登場。カラフルなマップの中に隠れた「マイクロペット」を探して収集することができる。
デジタルとアナログ・リアル、ガジェットとKAWAII。異なる要素をあえて重ね合わせることで、これまでにない驚きや楽しさを届けようとするタカラトミー。近年、デジタル教育先進国のスウェーデンをはじめ北欧では、デジタル教材から紙の教材へ回帰する動きも見られるが、武田さんは「どちらが良い悪いという話ではありません」と語る。
「アルファ世代は、これまで以上に多様な価値観を持つ子どもたちです。デジタルにもアナログにも自然になじみ、どちらとうまく付き合う感覚を持っています。だからこそ、デジタルだけでは伝えきれない部分をアナログで補い、新しい価値につなげていきたいと思っています」
27日の発売を前に、アルファ世代に人気の没入型プラットフォーム「Roblox」内にバーチャル空間を公開。さらにTikTokやInstagramではショート動画も展開するなど、デジタル領域での展開を強化している。アジア、北米、欧州、オセアニア、中東、アフリカへと広がる販売地域で、マイクロペットがどのような体験価値を届けるのか。世界中のアルファ世代から寄せられる反応にも注目が集まる。
(取材・文/河上いつ子)