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“3兆円規模”に急成長の日本アニメ、半数以上が海外市場 日本アニメに特化した米VOD「クランチロール」の功績
ネットの違法アップロードで海外市場が冷え込んでいたアニメ業界を変革、清浄化へ
「当初から『クランチロール』は、日本アニメの可能性を強く感じていました。2000年代初期にネットでの違法アップロードが横行し、海外市場でのパッケージのセールスが落ち込んだ時期でもありました。そこと戦うには、なるべく早く、日本の放送と近いタイミングで“正規”に配信することが重要だと感じていたのです」(クランチロール・チーフコンテンツオフィサー・末平アサ氏/以下同)
現在では、パートナー企業の協力のもと、放送前に作品の脚本を得て翻訳し、吹替オーディションを実施。キャラに合わせた現地の声と言葉で、日本の放送と同時配信を行うことができる作品も出てきているという。
「我々にとっても挑戦でしたが、日本の制作会社にとっても、素材を先に共有するというのは非情に大きなリスクだったと思います。日本のパートナーのコミットメントや協力なくして、今の海外マーケットはなかったのではないかと考えています」
米Z世代はハリウッド映画よりアニメを観ている? コロナ禍、リアクション動画ブームで人気加速
「『Polygon』というアメリカのエンタメ情報サイトの調査によると、アメリカのZ世代の42%が毎週アニメを観ていて、彼らにとっては、ハリウッド映画などの従来メディアよりもアニメの方が共感できるというデータもあります。「クランチロール」のユーザーも、平均して月に約1000分、話数に換算すると月間45話ほど視聴されている計算になるのですが、それだけエンゲージメントが強いということがわかります」
「アメリカはターゲットが分かりやすく設定されており、子ども向けなら子ども向け、大人なら大人と完全にシフトしているところ、日本アニメは各世代に広く観られる世界観となっており、それが新しく感じられたのではないかと思います」
アメリカの若者からも「Cool」と称賛され、アニメを観たリアクションを撮影して公開する動画がSNSで拡散。ネットミームとしてムーブメント化している。それがコロナ禍で自宅で過ごす人々がアニメというジャンルを発見したことにより、アメリカにおける日本アニメ人気が加速したという。
2年連続日本で「アニメアワード」開催、世界中から3400万投票 国ごとの人気傾向が露に
「本アワードは、作品だけでなく、キャラクターデザイン賞やアクション作品賞、ドラマ作品賞、コメディ作品賞、作曲賞など各分野で表彰していて、アニメの認知を海外に広め、世界中のアニメ視聴者の愛と情熱を日本のクリエイターに直接届けることを目的として設立されました。今年はすでに、世界中のファンから3400万票を超える投票が寄せられています。やはりアメリカからの投票が中心ですが、今年は特にオーストラリアやスペイン、東南アジアからも昨年より増加し、日本アニメ人気がより世界中に広まっていることを実感しております」
昨年の「アニメ・オブ・ザ・イヤー」は、Netflix制作の『サイバーパンク エッジランナーズ』が受賞した。今年は『ぼっち・ざ・ろっく!』『チェンソーマン』『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』『呪術廻戦 第2期』『【推しの子】』『ヴィンランド・サガ SEASON 2』がノミネートしている。
「アニメアワードでは、こちらで見られる視聴データと、また違った結果が見られることが興味深く、ファンの情熱の強さも伺えます」
「世界中のアニメファンにサービスを提供することが我々のミッションです。これまでもファンの情熱を日本のクリエイターにつなげることで、アニメのエコシステムを構築してきました。今後も先行上映会、配信後のファンたちのつながりを作るイベントやグッズ販売など、配信以外のタッチポイントも広げて業界全体を盛り上げていき、アニメといえば『クランチロール』と呼ばれるサービスでい続けたいと考えております」
(取材・文=衣輪晋一)