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「脳がバグる」「絵が飛び出してる」…ガンプラの顔「箱絵」に魅せられたモデラーたちの“二次元”への挑戦

写真左/前多さん制作のドム。右足が大きく飛び出している 制作・画像提供/前多ミライ氏 写真右/モデルとなった箱絵 画像提供/前多ミライ氏 (C)創通・サンライズ

写真左/前多さん制作のドム。右足が大きく飛び出している 制作・画像提供/前多ミライ氏 写真右/モデルとなった箱絵 画像提供/前多ミライ氏 (C)創通・サンライズ

 ガンプラを購入する際、誰しも目にする箱絵(ボックスアート)。これから作ろうとするモビルスーツ(MS)が、いきいきと躍動する姿が描かれたパッケージに、モデラーであれば誰しも心躍らせた経験があるだろう。モデラーの中にはこの二次元の世界観を、三次元のガンプラで表現する人もいるほど。今回紹介するのは、そんな箱絵に魅せられた2人のモデラー。「脳がバグる」「絵じゃないの!?」など、数々の賞賛を受けてきた彼らが、どんな思いを持ち、どのように作品を作っているのか?

「箱絵」は、入っている中身と違う表現のパッケージが成立する不思議な世界

 『マクロス』などのプラモデルやフィギュアの塗装を手掛けてきた前多ミライさん(@fgl_mirai)。三次元の立体物を“絵画的”に仕上げ、SNSでも多くの賞賛を集めている同氏だが、その作風に至るには、ある出会いがあった。

「塗装の勉強していくなかで、フィギュア塗装の第一人者である村上圭吾さんの作品に一目惚れし、そこからはずっと村上さんの技術を学んできました。村上さんの作風は一言でいうと“絵画的”。フィギュアなのですが、絵のようなタッチで塗装されており、ここで学んだ塗装技術が私の根本にあります。
 すっかり“絵画的”な塗装にハマってしまった私は、プラモデルを買う際も、箱絵が絵画的な物を選んで買ってしまうようになりました。“絵画的”を意識して初めて買ったキットが『マクロス』に出てくる『リガード』でして、ここからプラモデルを“絵画的”に、箱絵と同じように塗装する事にハマっていきました」

 そんな同氏がガンプラデビュー作に選んだのが、ドムだった。

「このドムのボックスアートもどこか“絵画的”でとてもカッコ良く、一目惚れしたキットでした。『箱絵の再現』をするという前提で探して、このドムを見つけたという流れです」

 箱絵の再現をコンセプトにしたものの、完成したものは絵を飛び出す形。より躍動感のある作品が誕生したわけだが、同氏によると、それは偶然だったという。

「実は当初、脚や手がはみ出す表現は頭にありませんでした。背景画をパソコンで作り、A3サイズ(作ったドムがすっぽり収まるサイズ)でプリント・設置し、いざ撮影をしようとすると、アングルの問題で手足がはみ出してしまいました。はみ出さないようにカメラのアングルを変えると、今度は箱絵のポーズとは違って見えてしまいます。
 一時は、背景を作り直そうとも考えましたが、試しに撮った写真が思いのほかカッコ良く、臨場感が出て面白い表現になったのです。「箱絵の再現」としては失敗でしたが、偶然の産物として、結果「飛び出してくる!」という表現につながりました」

 これ以外にも、10回以上塗装をやり直したという光の反射など、細部にわたりこだわって見事に表現。SNSのほか、この箱絵を実際に描かれた森下直親先生からもコメントが直接届けられるなど、賞賛が相次いだ。そんな同氏は箱絵の魅力をどのよう感じているのだろうか?

「箱絵は商品の『顔』だと思っています。ですので、箱絵はカッコ良く描かれていますよね。『箱絵の嘘』という言葉もあり、カッコ良く見せるあまり、かなり誇張された表現がされていたり、実際に作ったプラモデルでは、とれないポーズで描かれていることが多いです。言ってしまえば、中身とは別物だということ。実際に入っている中身とは違う表現のパッケージ。でもこれが成立してしまう不思議な世界だと感じています。大げさですが、とても面白い文化ですし、アートに近い存在だと思います」

「箱絵」は、箱を開ける前のワクワク感を倍増させてくれるもの

 前多さんが、先人から塗装の技術を学んだように、前多さんをはじめとするさまざまなモデラーから塗装の技術を学び、箱絵作品作り上げたのが、モデラーのニコボルさん(@nicovol48)。ガンプラを本格的に初めてわずか2年で作り上げた「MG ガンダム2.0旧キットボックスアート風塗装」が、著名なモデラーを含め、多くの人に賞賛された。

「本当にたくさんのコメントを頂戴し、本当にうれしく励みになるものばかりでした。特に今日さん(@kyo512a)や、前多ミライさん(@fgl_mirai)、annkoromotiさん(@ufjmFR0BF7t5Jq7)、p.e.n.n.y.1さん(@penny_1x)など、『アニメ塗』『イラスト風』作品で、いつも勉強させていただき、刺激をいただいている憧れのモデラーさんたちからもコメントをもらい、SNSで交流ができたことが、本当にうれしく、ありがたく、作品を作る原動力になっています」

 そんな同氏が、この作風に挑戦してみようと思ったのは、先に名前の挙がったモデラーの今日さんとの出会いだった。

「本格的にプラモを始めて2、3ヵ月経った頃、ネットでいろいろと作り方を調べるうちに、今日さんのイラスト風模型をたまたま見つけました。ガンプラが、二次元的に見えることが不思議で衝撃的でしたが、それ以上にとてもカッコ良く感じました。また、明暗を強調した仕上げがとても好みであることにも気付きました。
 最初は『自分にはとても無理だ』と思っていたのですが、今日さんがブログやYouTubeでとても詳しく技法を公開してくださっていて、思い切って挑戦してみました。その後面ごとに明暗を付ける『モジュレーション塗装』に出会い、pZero2015さん(@pZero2015)のYouTubeで勉強させていただき、イラスト風に寄せたモジュレーション塗装がひとつの作風のようになってくれたのかなと思っています」

 SNSに投稿する際には、「リスペクトの気持ちを込めて、旧キット1/144の箱絵をオマージュして」というコメントとともに本作を発表。そこには、先人への思いがあった。

「イラスト風の作品を制作するにあたって、自身に絵心があまりないのもあり、勉強のために設定画集やボックスアート集を収集しました。そのなかでも初期の旧キットのボックスアートが本当にカッコ良く、後にエアブラシを使って描かれているのを知り、いつか旧キットボックスアート風塗装に挑戦してみたいと思っていました。
 そして、『今ならある程度形にできるかも』と思い今回挑戦したのですが、既にこのボックスアートを旧キットで再現されたCodyさん(@JkGLFKFkxFi9TtG)の素晴らしい作品があるのも存じておりましたので、『リスペクトの気持ちを込めてオマージュ』させていただきました」

 尊敬できる作品やモデラーと出会い、教えてもらうのではなく、自らどうなっているのか考え試行錯誤しながら技法を見つけ、自身の作風にしていく。「箱絵」という共通項がありながら、前多さん、ニコボルさんの作品にはそれぞれの色が感じられ、技術継承にオリジナリティを加えたガンプラシーンのすばらしさが垣間見られる。

 そんなニコボルさんに、最後に箱絵の魅力について聞いてみた。

「ボックスアートは、“キットの顔”。そこに機体が存在するようなリアリティ、躍動感を感じさせるものが多く本当に素敵ですし、箱を開ける前のワクワク感を倍増させてくれます。本当にどのキットの箱絵も素晴らしくカッコいいです。
 今後も、イラスト風に限らず、自分自身が『カッコいい!』『好き!』と思える仕上げで制作することです。まだまだ未熟なのですが、表現の幅を広げるために筆塗りにも挑戦しています」 

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