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『リラックマ』に『すみっコぐらし』…エールを送るだけがキャラクターの役割ではない、サンエックス90周年の重み
働く人すべてが疲れていた90年代後半、老若男女の心を掴んだ『たれぱんだ』が起点に
「1979年より“100%オリジナルキャラクター”にこだわり、これまでに1000を超えるキャラクターが誕生してきました。とはいえ、初期のキャラクターは、あくまで文具や雑貨など自社内の商品展開に留まっていました。転機となったのは1998年に誕生した弊社のレジェンドともいうべき存在の『たれぱんだ』です」(サンエックス広報担当・富田杏奈さん)
「1998年当時は、景気が極めて悪く、働く人すべてが疲れているような時代でした。そんな社会状況のなか、鉛筆の柔らかなタッチで主張も押し付けがましくなく、タレタレと脱力している『たれぱんだ』が、老若男女の心を癒している――そう分析をするメディアもありましたね」(富田さん)
爆発的な人気から、やがて『たれぱんだ』は、他企業のさまざまなコンテンツにも登場するようになる。現在のサンエックスの主力事業の1つとなっているライセンス事業を先駆けたのが、『たれぱんだ』だった。
どこか自信がなかったり、コンプレックスを持つキャラクターの方が多い
「むしろ弊社にはどこか自信がなかったり、モヤモヤしていたりといったコンプレックスを抱えているキャラクターが多いですね。表情もそれほど豊かではなく、見る人の心の状態によっては、笑っているようにも悲しんでいるようにも見えるのが特徴です。何かを押し付けることなく、気付いたらそばにいてくれた、いつでも寄り添ってくれていた、ネガティブな気持ちも肯定してくれた──。そんな存在になってくれたらという願いを込めています」(広報担当・和田くるみさん)
そんなキャラクターたちを生み出しているのが、サンエックスに在籍する約40名の自社デザイナーたちだ。
「基本的に制作はデザイナーの感性に任されますが、ガイドラインもあります。たとえばお酒やタバコ、暴力描写は当然NGです。また、例えば『すみっコぐらし』には、“ねこ”というキャラクターがいるのですが、実際の猫が食べてはいけないものは、そのキャラクターのそばに置かない。キャラクターの世界観や特性によって配慮することはさまざまです」(和田さん)
「2000年代には毎月複数のキャラクターが生まれていた時代もありましたが、長い間活躍するまでには至りませんでした。その教訓から2003年誕生の『リラックマ』以降は、生まれたキャラクターを時間をかけて会社全体で大切に育てるという、現在の体制になっています」(和田さん)
2012年に誕生した『すみっコぐらし』は、今年10周年を迎えてなお大人気だ。
「5つのメインキャラクターのほかにもどんどん増えて、現在は60キャラクター以上。今年は周年のタイミングにだけ降臨する『すみ神様』というキャラクターが登場しています。ちなみに5周年のときには単体で降臨されたのですが、今年は弟子も連れて降りてこられました」(和田さん)
パンダではない『たれぱんだ』、クマではない着ぐるみの『リラックマ』あえて“余白”を設けるワケは?
「いずれのキャラクターについてもビジュアルだけでなく、世界観やストーリーを大事にしているのが、弊社のこだわりです。とはいえ、わりと設定がシュールなので謎めいているところもあるかもしれません。そうした部分も含めて、ファンの皆さんと一緒に育っていきたいと思っています」(富田さん)
『たれぱんだ』や『リラックマ』も謎が多く、ユーザーが想像する余地がつくられている。
「『たれぱんだ』は、実はパンダではなく、『パンダのような生き物』なんです。その証拠に動物のパンダは尻尾が白いのですが、『たれぱんだ』は黒いんですね。また、この種族は個体差が大きく、5センチの子もいれば、5メートルの子もいます」(和田さん)
「一方の『リラックマ』は、実はクマではなくて着ぐるみです。背中にはファスナーが付いていて、食べすぎでちょっぴり太ってしまうとファスナーが上がらなくなることもあるんです。この着ぐるみは通販で買ったもの。着替え用に何着も持っていて、お洗濯もします。ただ着ぐるみの中身の正体は謎に包まれています」(富田さん)
「商品のためにキャラクターを開発するというよりは、キャラクターを立体的に育てて展開していく方針へと大きく切り替わったのは事実です。ただ文具は小さいお子さんも買いやすいですし、これからも弊社の原点である文具、雑貨といったプロダクトは大切に作り続けていきます」(富田さん)
(文/児玉澄子)
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