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milet、映画『TANG タング』主題歌を語る「曲作りを通したデトックス方法が見つかった」
デビューから3年、肩の力が抜けた「頑張ってる人に“頑張れ”ということで、辛くさせてしまうこともある」
──映像作品に数多く楽曲提供をするmiletさんですが、登場人物に感情移入はするタイプですか?
milet だいぶしますね。ただロボットに感情を抱いたことがなかったので、映画『TANG タング』はどうなんだろう? と思っていたら、逆にタングのほうから寄ってきてくれました。タングは人間とコミュニケーションが取れるのですが、やっぱりわかりあえないところもあって、そんな切なさも含めて人間同士っぽいんです。それでも人間は誰かと繋がっていたいもので、そんな優しい気持ちとちょっぴりセンチメンタルなところも主題歌に折り込みました。
──冒険エンタメ映画らしいスケールを感じさせる曲です。制作プロセスを教えていただけますか?
milet とにかくタングのビジュアルが可愛くて心を掴まれてしまったので、サウンドにもタングの要素をいっぱい入れました。資料でいただいていたタングの動画に、劇伴のように音を当てはめる作業を(サウンドプロデューサーの)TomoLowくんと重ねていって。ロボットの足音っぽいのに温度感も感じさせる音を探すみたいな、かなり細々した作業で、それが全部合わさった時にものすごく広がりのあるサウンドになりましたね。
milet 曲の最後にある音を入れたのですが、映画を観た方ならその意味に気づいてもらえるんじゃないかなと思います。楽曲を先に聴いてくれた方は、映画を観て答え合わせをしてもらえるとうれしいですね。
──7月20日にデビュー3周年記念ライブを終えたばかりですが、この3年でご自身にはどのような変化がありましたか?
milet 最近になって随分肩の力が抜けた気がします。以前はもっと「皆の心に届けないと」「一語一句こぼすことなく伝えないといけない」という思いが強かったのですが、そればっかりだと聴き手も疲れさせてしまうんじゃないかなって思うようになりました。頑張ってる人に「頑張れ」ということで、辛くさせてしまうこともあるっていいますよね。
すべての人に理解してもらうのは難しい「それでも歌ってもいいんだと思えるように…」
milet 自分に向かってくることもあります。この3年、本当にたくさんの曲を書きました。曲作りは大好きだけど、やっぱり大変な時もあるんですよね。だけど自分には曲作りしかできない。そのなかでうまくバランスを取るには? と探ってきて、ようやく曲作りを通したデトックス方法が見つかったんです。
──具体的にはどんな方法ですか?
milet (2月にリリースした)2ndフルアルバム『visions』で、自分の内側の深いところをたくさん歌うことができたんです。そういう曲は、すべての人に理解してもらうのは難しいかもしれない。それでも歌ってもいいんだと思えるようになりました。特に英語の歌詞は、プライベートな出来事や感情が入れやすいなと思います。
milet ゲーム『Tower of Fantasy(幻塔)』のテーマソングで、入れたいワードや世界観などの明確なリクエストがゲーム制作サイドからあったのですが、それと同時に自分が歌う意味も見出したくて“unrivalled”という単語を使いました。以前は英詞ほど理解してもらいたくて、わかりやすい言い回しを使いがちでした。そのなかでも、自分だけがピリッとするようなワードが降りてくると達成感があります。
大切にしたい“一対一”の関係 恩返しをしたくて歌っている
milet 現場に行くたびに、ご挨拶をする方は増えました。私はそんなに広い視野で物事が見られるほうではなくて、まだ自分がどんな立ち位置にいるのかよくわかっていないところもあるのですが、応援してくれたり、お世話になったりしている「あの人たち」に恩返しをしたくて歌っている、というのはずっと変わらないです。
────「あの人」としてぱっと思い浮かんだ人はどなたか教えていただけますか?
milet 5年くらい前に、近所の駄菓子屋のおばあちゃんに折り紙を教わっていました。チラシで折った金魚を「可愛い!」と言ったら会うたびにくれるようになって、そのうち道路沿いの花壇に2人で腰掛けて教えてくれるようになって。その金魚たちは今も家にいるけど、わざわざ出して眺めることもない。でも、捨てられないんですよね。
milet もう亡くなってしまったので、残念ですが──。ただ自分の周りにはたくさんの人がいるけれど、実は“一対一”の関係が複数あるだけで、またそうした繋がりを大切にしていきたいです。それは聴いてくれる方も同じで、ある誰かの言葉から気づかされることはたくさんあります。
──例えば、どんなことですか?
milet 昨年、国立競技場で歌わせてもらったときに、「この歌声をもっとたくさんの人に生で聴いてもらいたい」と言ってくれた方がいたんですね。それまでもライブは好きだったけれど、自分のキャリアとして大きな会場でやりたいと考えたことはなくて。だけどその言葉を聞いて、例えば日本武道館とか、そうした目標を見据えて活動していくことも大事なんだと、今では思っています。
(文/児玉澄子 写真/草刈雅之)
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