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「推しが尊い」「待って無理しんどい」英語で言うと?…日米のオタクが本気で作った英語本が話題「めちゃくちゃ勉強捗りそうで草」
“I love 〜!”しか言えない苦痛…推しの魅力を世界に発信したい人はいるはず
澤田未来さん 好きなアニメやアイドルの動画やSNSを見ていると、世界中のファンによるさまざまな言語での応援コメントが溢れています。英語に特化して体系的に集めたら、面白くて実用的な書籍になるのではないかと思いました。また、自分自身が外国人の友だちと交流する際に、“I love 〜!”や“I see!”だけではなく、もっと豊富な語彙力を持っていれば、自分の熱量を相手に伝えられ、相手の熱量も受け止められる。もっとわかりあえて、距離が縮まるのに…と歯がゆく思っていました。約2年前より本書を構想していました。
――社内では、どのような意見や議論があったのでしょうか?
澤田未来さん 学研には、いろいろなジャンルのオタクがいるので、基本的には面白がってもらうことができました。「推し活で英語なんて本当に使うのか?」という意見もありましたが、実際の動画やSNSのコメントを見せながら、「英語圏はもちろん、日本やアジアのコンテンツにも英語のコメントがたくさん投稿されている」「推しの魅力を世界に発信したり、英語圏オタクのコメントの意味を知ったりするために、英語を学びたいと考える人もいるはずだ」と説明し、理解してもらいました。
――平成生まれのオタク女性ユニット・劇団雌猫が監修していますが。
澤田未来さん 独りよがりなものづくりにならないよう、これまで数多くのオタクを取材している劇団雌猫さんにTwitterのDMで連絡し、監修をお願いしました。劇団雌猫さんにも「面白いテーマ」だと言っていただき、日本語の言い回しやオタク用語解説にアドバイスをいただくなどしました。
――さまざまなジャンルで推し活をしている100人以上のオタクにアンケートをしたとのことですが、どのような方にリサーチしたのでしょうか?
澤田未来さん 英語で言ってみたい単語・フレーズや、海外のオタク友達との交流エピソードなどについて、全20問から構成されるWebアンケートを作成しました。劇団雌猫さんのTwitter上で告知したり、学研の社員・知り合いのオタクコミュニティに共有したりして、100人以上の方から回答を集めました。漫画・アニメ、ゲーム、アイドルなど、いろいろなジャンルのオタクの方々による個性豊かな回答の一部は、巻末にスペシャルコンテンツとして掲載しているので、ぜひ見てもらいたいです。
「沼にハマった」の英語表現は? 英訳するだけでは、英語圏のオタクに通じない
澤田未来さん イベントで推しに話しかけることができるのは、たったの数十秒間。SNSで投稿できる文字数も限られています。そのような状況で、“I love 〜!”などのありきたりな言い方だけではなく、端的に愛情を表せる表現を知りたい、という声が多く寄せられました。そういった声に応えるべく、“Cuteness overload.(かわいすぎて悶絶します)”や“You’re drop-dead gorgeous!(美の暴力!)”など、短いフレーズをたくさん掲載しています。
――書籍掲載のワードは、どのように決めたのでしょうか?
澤田未来さん まずは、日本人のオタクの皆さんがどんな言葉を英語で言ってみたいかを調べるために、前述のWebアンケートを実施しました。さまざまなジャンルの方から回答を集めることができましたが、これをそのまま英訳する形では、英語圏のオタクに通じないと感じました。そこで、1年間毎日のように、あらゆるジャンルの英語圏のオタクのSNSをチェックし、そもそも言葉の裏側にある概念が世界共通のものなのかを調べました。
――1年間毎日とは大変な作業ですね。SNSをチェックして、どのようなことがわかったのでしょうか?
澤田未来さん 例えば、大好きな人物やキャラクターを前に、単純に「かっこいい」「素敵」だけではなく、「尊い」「語彙力が死んだ」などと思う概念そのものが、英語圏のオタクに本当にあるのか、ということを検証しました。その結果、共通する概念が多いことがわかったので、“So damn precious...”や“I get obsessed with 〜!”などの英語表現がよく使われているのを見つけては、これは「尊みがすごい」、これは「沼にハマった」という形で、近いニュアンスの日本語表現を当てはめていきました。そうして作った数百の日英のオタク単語・フレーズリストを、劇団雌猫さんや複数のネイティブスピーカーにチェックしてもらい、加筆修正を繰り返していきました。
――「複数のネイティブスピーカー」というのは、どのような方々なのでしょうか?
澤田未来さん 学研の語学書や辞典の校正・校閲をしているスタッフ、オタク文化や英語のスラングに精通する方を中心に、20人弱のネイティブスピーカーに協力してもらい、「英語圏のオタクにちゃんと通じる表現」を追求しました。彼らは自分のオタク友だちにもヒアリングをしてくれたので、正確に数えられないほど、たくさんのネイティブスピーカーにかかわってもらいました。アメリカの方が多かったですが、オーストラリアやニュージーランド、シンガポールの方もいました。
――そうなのですね。ネイティブスピーカーの方々が特によく使っているオタク用語はありますか?
澤田未来さん “fave”は“favorite”の略で、「推し」を意味する言葉として、ジャンルを問わず広く使われています。“My fave is so precious.(推しが尊い)”のように使います。また、“stan”は「〜を推す、熱狂的に応援する」という意味のスラングで、世界的ラッパーのエミネムの曲名に由来すると言われているそうです。
それっぽい言葉を無理やり作らず、オタクが実際に使っているフレーズを使用
澤田未来さん 「待って無理しんどい」「尊みがすごい」「語彙力が死んだ」「最高オブ最高」「実質無料」などでしょうか。本書の予約を開始した際には、ネットユーザーの方々からこれらのフレーズに対して「例文が実用的すぎる」といった声をいただくことができました。
――これらの単語・フレーズを英語に変換するうえで、気をつけたことはありますか?
澤田未来さん なるべく「そのまま英訳しないこと」でしょうか。実際にTwitterやYouTubeのコメント欄で英語圏のオタクが使っているフレーズを1つひとつ拾い、日本語のオタクフレーズと照合することで、日英のニュアンスを近づけられるようにしました。しかし、“My heart skipped a beat.(きゅんです)”や“perfect reaction(神対応)”など、どうしても日本語のリズミカルでユーモラスなニュアンスを再現できない場合もありました。そういった場合には、“god reaction”などといったそれっぽい言葉を無理やり作ることはせず、本当に英語圏で使用されている言葉のなかで、最もニュアンスが近い言葉を当てはめました。
――『世界が広がる 推し活英語』は、どのようなところをポイントに楽しんでもらいたいですか?
澤田未来さん あまりの推しの尊さに思考が停止して言葉を失ってしまったり、そうかと思えば友人に推しの魅力を布教する時は饒舌になったり…。私自身も経験があることですが、単語やフレーズの裏側にある「国境を越えたオタクあるある」に共感しながら読んでもらえるのではないかなと思います。あわいさんによる、表情豊かなオタク女子のイラストにも注目してもらいたいですね。読者の皆さんが、明日使ってみたい言葉が見つかるといいなと思っています。