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“本格派”料理番組は役割を終えたのか? 加速度を増す“時短レシピ動画”とは対極となる「プロの技術と叡智」への渇望

  • これまで料理番組の”顔”として出演してきた上沼恵美子、速水もこみち、平野レミ、滝沢カレン(C)ORICON NewS inc.

    これまで料理番組の”顔”として出演してきた上沼恵美子、速水もこみち、平野レミ、滝沢カレン(C)ORICON NewS inc.

 1974年より48年続いた『おかずのクッキング』(テレビ朝日系)に続き、1995年から27年続いた『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』(テレビ朝日系)が今春、放送終了となる。かつてはレシピをメインとした番組以外にも『料理の鉄人』『チューボーですよ!』『どっちの料理ショー』など、バラエティ色の強い番組も数多く存在していたが、現在ではアプリやYouTubeでレシピを検索する人も多くなってきた。もはや料理番組は御役御免なのだろうか。

『料理の鉄人』以降、“エンタメ化”した料理番組 レシピ伝える気ない?レミ&カレン人気

 『おかずのクッキング』(1974〜/テレビ朝日)と『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』(1995〜/ABC)の終了により、残る全国放送の料理番組は、『きょうの料理』(1957〜/NHK)と『キユーピー3分クッキング』(1962〜/CBC)など残りわずかに。『おしゃべりクッキング』の後番組も料理番組であることが発表されているが、ミュージシャンのDAIGOをMCに、どのような内容が展開されるのか注目が寄せられている。

 そもそも料理番組は、プロの料理人などがレシピを紹介し、レシピ本と連動して展開する“教養系”が多かった。しかし、空前のグルメブームの中に始まった『料理の鉄人』(1993〜99/フジ)以降、エンタメ化が加速。家庭では真似できないようなプロの料理を披露したり、タレントや一般人が料理をし、対決や判定を楽しむような『チューボーですよ!』(1994〜2016/TBS)、『どっちの料理ショー』(1997〜2006/YTV)、『愛のエプロン』(1999〜2002/テレ朝)、『SMAP×SMAP』(BISTRO SMAP)(1996〜2006/フジ)などのヒット番組も生まれた。
  • 料理研究家として長年人気を博す平野レミ(C)ORICON NewS inc.

    料理研究家として長年人気を博す平野レミ(C)ORICON NewS inc.

 「ですが、クックパッドなどのレシピ検索アプリが広く普及した2010年代以降は、レシピや料理を紹介する以上に、料理番組を観る動機がより求められる時代になりました」と話すのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。この頃、生まれた言葉が“料理男子”。『ZIP!』の料理コーナー「MOCO'Sキッチン」で速水もこみちが人気を博し、以降、ロバート馬場、坂本昌行ほか、男性タレントが料理の腕を魅せて“別の顔”をアピールするスタイルが流行した。

 もはや“料理男子”に目新しさを失った今でも、料理番組でエンタメ性を見出しているのは、個性的なキャラクターと奇想天外なレシピを打ち出す平野レミや滝沢カレンくらいだろうか。2020年初春に放送された『平野レミの早わざレシピ!』(NHK総合)では、“鶏の丸焼き ひトリ立ち”が「衝撃的なビジュアル」「腹筋崩壊した」などと話題に。また滝沢カレンは、ゴールデン帯で料理番組を観なくなった今、2020年よりゴールデン帯2時間SPとなる『カレン食堂』を放送。分量の説明を、こしょう「転んだときに肘についてる砂ぐらい」、パン粉「世界人口全てぐらいの量」、牛乳「明日飲むのに何の影響もない量」と表現するなど、レシピは完全大喜利状態となっていた。

ロケ番組、ジブリ飯、グルメドラマ…形を変えても映像で伝える“おいしそう”の強度は不変

 SNSやYouTubeでレシピ検索する人も多くなってきた今、文字や映像が手元に残らない料理番組のレシピを参考にする人は急減。一方で、『くいしん坊!万才』(1974〜/フジ)のような全国ロケ型番組は変わらず生まれており、『相葉マナブ』(2013〜/テレ朝)、『満天☆青空レストラン』(2009〜/日テレ)、『バナナマンのせっかくグルメ』(2014〜/TBS)、『ごはんジャパン』(2015〜/テレ朝)などが放送されている。

「また、『家事ヤロウ!!!』(テレ朝)などはSNS時代の現在の流れに乗り、公式インスタグラムで、番組内で紹介した家事が得意ではない人でも簡単に作れるレシピをリアルタイムで投稿。そのほか、ジブリアニメに登場する料理は、『天空の城ラピュタ』のラピュタパン、『となりのトトロ』のサツキの手作り弁当、『ハウルの動く城』のベーコンエッグなど、今も度々話題に上っており、ドラマ『孤独のグルメ』に登場した店が放送後に行列を成す動きも観られる。先述のそれぞれが話題になっているのを鑑みるに、グルメはいつの時代も強いジャンルと言えます」(衣輪氏)

 一方で、『ぴったんこカン・カン』や『メレンゲの気持ち』など、食レポが人気コーナーだった長寿番組は次々終了。『相席食堂』『有吉ゼミ』『マツコ&有吉 かりそめ天国』では、おいしさを伝えるよりも笑いに特化した演出となっており、『相席食堂』で元プロレスラーの長州力が放った“おいしい”表現である「飛ぶぞ」は、ネットスラングとしても一般化。紹介された料理そっちのけで視聴者を喜ばせている。

「ひたすらご飯を食べるだけの動画をアップしているおかずクラブ・オカリナさんの『ときどきオカリナ』ほか、YouTube界でもかつてのテレビ界のように、料理・大食い・激辛チャレンジの動画は変わらず人気チャンネルが多数。海外在住or旅行中の日本人が、主にアジアの屋台飯の厨房で撮影し、豪快にフライパンを振ったり、大量のチャーハンを作り上げる様子のみを映した動画も無数にあり、かなりの再生数を稼いでいる。つまり、料理や食卓シーンはいつの時代も変わらぬ需要があるものの、好きな時に好きな料理を自由に検索できるようになった今、テレビ上での献立も作り方もあらかじめ決まっている押し付けレシピや食レポでは、もはや視聴者は満足しない時代になった」(衣輪氏)

ネットレシピとは異なる料理番組需要、おいしい・楽しいを“丁寧”に伝える不朽の正統派

  • 『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』に27年出演してきた上沼恵美子(C)ORICON NewS inc.

    『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』に27年出演してきた上沼恵美子(C)ORICON NewS inc.

 それでも、検索アプリやYouTubeが普及して久しいが、『キユーピー3分クッキング』が60周年、『きょうの料理』が65周年を迎えた理由は、やはりネットでは得られないプロのレシピや確かな専門知識が得られるからだろう。27年続いた『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』、48年続いた『おかずのクッキング』の番組終了の報道に対しては、ともに惜しむ声が数多く寄せられた。

 『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』の後番組に関しては、「下処理の仕方などもとても丁寧で、本格的な料理が家庭でも真似できるいい番組でした。どんな方が後番組に出ても同じがいい」「変にバラエティ色を強くして料理以外のコーナーなど増やさず、DAIGOさんと料理の先生たちが純粋に楽しく料理を作る番組がいい」「料理とエンタメのフュージョンの料理番組はいくつもあったけど、正統派の料理番組を希望」「忙しい主婦には時短動画が有難いのだろうが、テレビの料理番組ファンはレシピだけが目的ではない。料理家とアシスタントのかけあい会話も楽しみのひとつで、15分間、ゆっくりと料理を作る過程を見ているのが好きだ。新番組が料理を素材としたバラエティ番組になるのだったら残念だ」といった声が相次いでいる。
 数々の名料理人=スターを生み出してきた『料理の鉄人』も、2012年『アイアンシェフ』として復活するも惨敗していた。不況が続く失われた30年の中では、高級食材を扱った高級料理での対決というスタイルは視聴者に合わず、前述のバラエティ色が強かった料理番組も、こぞって放送終了を迎えた。

 『おかずのクッキング』では、土井善晴が「塩むすび」や「湯豆腐」のレシピをプロ視点で紹介したことが話題になった。1分以内に時短レシピを見せる動画が大量生産大量消費されている今、料理番組に求められているのはそういったプロの丁寧な仕事、かつ家庭で役立てるちょっとした手間や工夫の知識ではないだろうか。テレビまで時短・エンタメに走ってしまったら、日本の食文化はますます失われていくだろう。『おしゃべりクッキング』後番組しかり、正統派料理番組が令和も受け継がれていくことを願いたい。


(文/中野ナガ)

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