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人気心理カウンセラーが56歳で歌手デビュー 全キャリアを捨て挑戦するワケ「人を羨んでばかりの自分が嫌だった」

 40歳で佐川急便を退職し、心理カウンセラー・心屋仁之助として独立。数々のベストセラーを著し、講演会やセミナー、バラエティ番組でも活躍してきた彼が、今度は56歳にしてシンガー・ソングライターに転身。名義を本名に愛称を付けた「Jin 佐伯仁志」に変え、「ゼロからの紅白」を目標に音楽活動に専念し、9月24日にはデビューアルバム『〜風になれ〜魔法のうた』を発売する。異色の経歴を歩んできた彼が、すべてのキャリアを捨てて無謀とも思える挑戦に踏み切れた、その原動力について語った。

既存ファンに忘れられてもいいから、本当に自分がやりたいことに挑戦したかった

  • Jin佐伯仁志,心屋仁之助,

    Jin佐伯仁志(写真/片山よしお)

──佐伯さんは心理カウンセラー時代から講演会で歌を披露されてきたそうですね。

Jin 佐伯仁志 はい。きっかけは2012年に日比谷公会堂で著書の100万部突破記念の講演を行った時に、「講演以外のプログラムも入れてみては?」と提案されて3曲歌ったことでした。中学からギターを弾いていましたが、社会人になってからは忙しくて離れていました。それがステージで歌う気持ち良さを知ってしまい(笑)。そのうち講演1時間半に歌のパートを30分というスタイルが定番になっていきました。

──2017年には日本武道館を満員にするなど、心理カウンセラーと音楽活動が両立できていたにも関わらず、専業に踏み切った理由は?

Jin 佐伯仁志 そうは言っても、講演が終わって歌パートになると会場を出て行く人が続出していたのも事実です(苦笑)。心理カウンセラーとしての僕が期待されているのは、音楽ではなかったわけです。それでも自分では音楽ができるだけで「9割の幸せ」を感じていました。これを「10割の幸せ」にまで持っていくには、音楽に専念するしかなかった。端から見たらバカ者でしょうが、自分を止められなかったんです。名義を本名に戻したのも、昔から応援してくれる方に忘れられてもいいから、本当に自分がやりたいことに思い切りシフトするためでした。

──活動応援資金を募ったクラウドファンディングでは、驚異の581%を達成されました。

Jin 佐伯仁志 心理カウンセラーを廃業して以降は、ライブのお客さんもどんどん減っていたのでびっくりしました。「期待に応えられなかったのか…」という恐怖もありましたが、同時にいよいよ後に引けなくなったという喜びも感じています。

「こんなの僕の音楽じゃない」最初は拒否していた新スタイルで新境地へ

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Jin佐伯仁志(写真/片山よしお)

──これまでも自主制作アルバム5枚を発表してきましたが、Jin佐伯仁志としてのデビューアルバム『〜風になれ〜魔法のうた』はどんな作品になりましたか?

Jin 佐伯仁志 基本的に僕の歌は、心理カウンセラー時代に開発した「口に出すだけで心が癒される魔法の言葉」にメロディーを付けたものです。これまでのアルバムは、講演に足を運べなくてもCDを聴くだけでカウンセリングになれば、という思いから制作してきました。ただ今回は心理カウンセラーではなく、シンガー・ソングライターとして広く音楽を届けたかったので、これまでとは違うプロデューサーにお願いしたんですね。

──楽曲はどのように変わりましたか?

Jin 佐伯仁志 びっくりするほどオシャレなアレンジでした。僕はフォークをメインとしてきたのですが、彼は洋楽が好きで、提案されたアレンジを最初は「こんなの僕の音楽じゃない」と拒否しました。ただ洋服もそうだけど、第三者が勧めてくれたものの方が、得てしてその人に似合っていたりするんですよね。でも自分では、「こんなオシャレな服を着てたら冷やかされてしまう…」といった恥ずかしさから、なかなか新しいスタイルに飛び込んでいけないことがありますよね。

──ご自身の殻を破ったレコーディングになったんですね。

Jin 佐伯仁志 彼の意見を取り入れつつ、一方で譲らなかったり。いい作品って、そういうせめぎ合いのなかでできていくものだと思います。このアルバムも心理カウンセラーとしての僕がリーチできなかった、全く新しいリスナーにアプローチできたらうれしいです。

──「ゼロからの紅白」という目標は、いつまでに実現を目指していますか?

Jin 佐伯仁志 最短で今年ですね(笑)。そう考えたら、よっぽどのことがない限り無理だと思うのが常識じゃないですか。でもヒットを飛ばしてきたアーティストの話を聞くと、皆さんどこかのタイミングで奇跡みたいなことが起こっているんですよ。だからあり得ないことじゃない。ダメだとしても当たり前、実現したらものすごくラッキーくらいの気持ちでいます。もし今年実現できなくても「最高齢の紅白初出場」という記録が打ち立てられるので、それも面白いかなと思っています(笑)。

無謀な挑戦を見届けてほしい… 失敗しても50代でバイト生活でも「10割幸せ」

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Jin佐伯仁志(写真/片山よしお)

──56歳にしてすべてのキャリアを捨てて新しい世界へ。改めて、なぜそんな無謀とも思える挑戦に踏み切れたのでしょうか?

Jin 佐伯仁志 心理カウンセラー時代にSNSで誹謗中傷にさらされたことがありました。おそらく叩いていたなかの一部には、僕が心理カウンセラーとして上手くいっていることに苛立ちを感じた人もいたんじゃないかと思うんですね。それはすごくわかるんです。僕自身、かつては音楽で活躍をしている人に嫉妬していましたから。

──自分が本当にやりたいことができないことへの苛立ちだったのでしょうか?

Jin 佐伯仁志 そうですね。そんな人を羨んでばかりの自分が嫌だったから、もう自分に嘘をつくのはやめました。でも僕が音楽に専念したら、アンチだった人がいなくなったんです。これから没落していくであろう人間を叩いても意味がないと思ったんでしょうか(苦笑)。

──いえいえ、ぜひ成功させてシニアの希望になってください。

Jin 佐伯仁志 とにかくこの無謀な挑戦がどんな結末を迎えるか、見届けてほしいですね。そして、上手くいったら希望を持ってくれればいいし、玉砕したら「やっぱりダメだったんだな」と思ってくれればいい。ただどっちに転んでも、確実なのは僕が「10割の幸せ」を感じているということ。貯金も使い切って、アルバイトで生計を立てることになっても、音楽さえやっていれば、僕は心から笑っていられます。

(文/児玉澄子 写真/片山よしお)

「風になれ」ミュージックビデオ

Jin 佐伯仁志 プロフィール

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Jin佐伯仁志(写真/片山よしお)

新卒で佐川急便に勤務後、心理カウンセラーに転身。2007年より「心屋仁之助」としてセミナーやカウンセリングスクールの運営、著書の発行や全国での講演活動を行う。
2015年よりカウンセラー業に並行して音楽活動を開始。自主製作で5枚のアルバムを発売。Zeppツアーを敢行し、2017年には東京・日本武道館にて「独演会」を開催。2021年よりJin佐伯仁志として音楽活動に専念する。

◆Jin佐伯仁志オフィシャルサイトはこちら⇒(外部サイト)
◆Jin佐伯仁志オフィシャルTwitterはこちら⇒(外部サイト)
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