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音楽業界に変革を起こす“才能”との出会いは「宝箱を開ける気持ち」 ミュージックレインオーディション開催
アニメ作品や声優のパワーを実感「エンターテインメントの未来はここにある」
篠原廣人最初のきっかけは、『機動戦士ガンダムSEED』でした。このアニメ作品の主題歌にT.M.Revolutionの「INVOKE-インヴォーク-」をマッチングしたことで、J-POPのアーテイストがアニメーションの楽曲を担当する潮流が生まれました。さらに衝撃を受けたのが、『機動戦士ガンダムSEED』に出演していた声優のみなさんの人気ぶり。イベントでメインキャストの声優さんがすごい声援を受けていて、アニメーション作品や声優のみなさんのパワーを実感しました。「エンターテインメントの未来はここにある」と確信し、ソニーミュージックとしても積極的に取り組むことに。アニメと音楽をつなぐ未来の才能と出会うために立ち上げたのが、「スーパー声優オーディション」です。
第1回の合格者は、寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生。レッスンを通して、まずは声優としてやっていける実力をつけ、さらに歌うこと、パフォーマンスにも力を入れました。その後、スフィアとして活動しますが、彼女たちとの出会いと成長によって、「スーパー声優」の定義が明確になったと言えるでしょう。第2回は2011年に開催しました。合格者は雨宮天、麻倉もも、夏川椎菜の3人。それぞれが声優として最前線で活躍をしながら、ソロでの音楽活動や、ユニット「TrySail」としても積極的な活動を行っています。
篠原廣人声優を目指す方々は、どこか就職活動に近いところもあるんです。もともとアニメ業界は、表舞台に立つのはキャラクターで、声優は裏方という文化ですから。応募される方々も、とてもマジメな方が多い。そのうえで我々としては、その方が持っているもの、「将来、こういう活動ができたらおもしろいだろうな」と幅広くイメージしながら審査に当たっています。“マジシャン”を加えたのは、私の勘みたいなものですね(笑)。魅力のある声で世界レベルのマジックができる声優さんがいたら、すごいじゃないですか。
――確かに(笑)。“マジシャン”という言葉が入っていることで、「私はマジックはできないけど、これなら自信あります」という方も応募しやくすなりますね。
篠原廣人そう思ってもらえたら嬉しいですね。今後は、いろいろな才能を持った声優が登場すると思っています。今回のオーディションでも、より個性が強く、より実力のある方を含め、どんな才能と出会えるのだろう?と期待しています。
アニソン・ボカロは今や日本音楽業界の柱、「拡大と変革の時期を迎えている」
篠原廣人「ウタカツ!」は、クリエイターユニットのHoneyWorksとのつながりが起点になっています。HoneyWorksは固定のボーカリストを持たないクリエイターユニットで、豊崎、戸松などを起用していただいた縁もあって。一緒に仕事を続けるなかで、「HoneyWorksとともに活動できる女性ボーカリストと出会えるといいね」という裏テーマを持って立ち上げたのが、「ウタカツ!」でした。第1回目のオーディションでCHiCOがグランプリを獲得し、2014年からCHiCO with HoneyWorksとしての活動がはじまりました。「ウタカツ!」の特徴は、アニソン、ボカロ曲での応募に特化していること。「好きなアニメの楽曲を歌いたい」「好きなボカロPに曲を作ってもらいたい」という目標を持った方々と交わりたいというのが、大きな目的ですね。
――今やアニソンは日本の音楽業界の柱。ボカロP出身のクリエイターも次々とヒット曲を生み出していることを考えると、「ウタカツ!」の役割はさらに大きくなりそうですね。
篠原廣人Adoさんの影響も大きいでしょうね。インターネット・ミュージックのなかで“歌ってみた”の投稿から活動をはじめた彼女が、才能あるボカロPに見い出され、オリジナル曲を歌った。その曲がヒットし、メジャーデビューに至ったことは、音楽業界にいる人間としても大きな衝撃でした。今回の「ウタカツ!3」はアニソン、ボカロのシーンがさらに大きくなり、変革の時期を迎えていることを踏まえて、歌の才能を持った方々と出会えることは、宝箱を開けるような気持ちです。
“クリエイターオープンコール”募集の背景「こちらから壁を取っ払いたかった」
篠原廣人ネットのシーンでは、既にしっかりとコミュニケーションの場が成立しています。たとえばボカロPの場合、ボーカロイドで楽曲を作った方が、SNSなどを介して歌い手や絵師の方と出会い、作品を作り上げて発表するという流れがある。そういう場所で活動している方々がオーディションに参加してくれるのだろうか?という部分もありますが、我々としては「一緒にクリエイトしていきませんか?」という思いが強いんです。「ミュージックレインと仕事したいけど、どうしたらいいんだろう?」と考えているクリエイターもいるかもしれないし、だったらこちらから壁を取っ払いたいと思いました。「クリエイターオープンコール」は、参加者のみなさんをこちらが評価するというより、一緒に仕事をしていただけるクリエイターとの出会いを期待しています。
――YOASOBIの成功によって、ネットを中心に活動しているクリエイター、歌手のみなさんも、メジャーな展開を目標に掲げている方も増えているでしょうし。
篠原廣人例えば「クリエイターオープンコール」を通じて出会ったクリエイターの楽曲を、このオーディションで出会った方が歌い、さらに声優もできるような新しいクリエイティブが生まれたらとても夢がありますね。
――応募期間は7月31日17時まで。新しい才能が見い出されることは、エンタメに携わる身としても大きな喜びです。
篠原廣人コロナ禍や緊急事態宣言によって、オーディションに参加したいというモチベーションが削られなければいいなと思っています。今は大変な時期ですが、2年後、3年後の未来のために立ち上がろうよ!と呼びかけたいですね。
(取材・文:森朋之)
「ミュージックレインオーディションプロジェクト」
ウタカツ!3
https://www.musicrayn-audition.com/utakatsu3/
スーパー声優オーディションα
https://www.musicrayn-audition.com/ss-alpha/
クリエイターオープンコール
https://www.musicrayn-audition.com/opencall/
PROFILE:篠原廣人
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント/コーポレートマーケティンググループ チーフ・ゼネラルマネージャーおよび株式会社ミュージックレイン執行役員 制作本部本部長。同オーディションのプロデューサーを務める。ロックからアニメソングまで、幅広いジャンルの楽曲プロデューサーを務め、『機動戦士ガンダムSEED』(2002年)、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(2009年)などアニメ作品の音楽プロデュース、白猫プロジェクト ZERO CHRONICLEでは企画にも携わる
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント/コーポレートマーケティンググループ チーフ・ゼネラルマネージャーおよび株式会社ミュージックレイン執行役員 制作本部本部長。同オーディションのプロデューサーを務める。ロックからアニメソングまで、幅広いジャンルの楽曲プロデューサーを務め、『機動戦士ガンダムSEED』(2002年)、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(2009年)などアニメ作品の音楽プロデュース、白猫プロジェクト ZERO CHRONICLEでは企画にも携わる