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フジ王道コント番組復活の裏側、『ピカル』の無念晴らす演出Pが“視聴率とれない”コントに懸ける思い
『やるやら』『ごっつ』に憧れてフジ入社、念願の『ピカル』立ち上げも3年で終焉に…
かつては『欽ドン!』(72年-79年)に始まり、『オレたちひょうきん族』(81-89年)、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば』(90-93年)、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(91-97年)、『笑う犬』シリーズ(98年-03年)など、数々のコント番組で社会現象を巻き起こしてきたフジテレビだが、近年はめっきり鳴りを潜めていた印象がある。
木月氏は、『やるやら』や『ごっつ』に影響を受けて「フジテレビでコント番組を作りたい」と入社。念願叶って『ピカルの定理』(10-13年)で初めてディレクターとしてコント番組の立ち上げから携わった。
ところが、近年はお笑い番組の企画が通らない状況が続いたという。その理由は視聴率に他ならない。「一般にコント番組を好むのは若い世代。かつての伝説的番組を支えていたのも、当時の若者たちだったはずです。しかし現代にコント番組を作ろうとすると、若い世代の人口比率の少なさが影響し世帯視聴率の指標においては絶対に苦戦してしまうんです。」
視聴率に苦戦するコントは企画が通らなかった… 昨年からの“追い風”にすかさず掴んだ好機
コントの形をドラマ風に変え、俳優を起用し、スカッとする結末に向かうカタルシスを設けることで世帯視聴率とも両立できる人気番組を作り上げた。
しかし全世代がお茶の間に揃う光景を前提とした世帯視聴率の測定は、もはや現実を表すものではなくなった。昨年3月に視聴率の指標が「世帯」から「個人」に移行するとともに、地上波キー各局ではそれぞれメインターゲットを明確化させた。フジテレビでは、昨年10月の改編より、「キー特性」と名付けた13〜49歳に重点を置いた番組編成を本格化させている。
図らずもコロナ禍による在宅率の高さから、若者のテレビの接触回数が増えた時期でもあった。昨年2度にわたって不定期放送された大型コント番組『ただ今、コント中。』(フジテレビ系)で、サンドウィッチマンやバイきんぐといった手練の芸人たちが織り成すスタジオコントに魅了された若者も多かっただろう。こうした追い風のもと、『新しいカギ』はいきなり金曜8時という激戦区に切り込んだ。
「『ピカルの定理』をはじめ、過去の多くのお笑い番組がそうだったように、当初は深夜番組で、演者の3組とスタッフのチーム感を固めてからゴールデンに臨むイメージでいました。ですがフジテレビは今こそ"フジテレビのコント番組"を世に問う絶好のタイミングと捉えて勝負をかけたいようです」