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佐藤優樹の「モー娘。楽曲・深読み講座」 心酔するつんく♂曲を“まーちゃん節”全開で解説

この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。
⇒この記事をオリジナルページで読む(12月11日掲載)

12歳でモーニング娘。10期メンバーとして加入し、その天真爛漫さとステージパフォーマンスの爆発力で見る人を惹きつける佐藤優樹(さとう・まさき)さん。“まーちゃん”の愛称でファンから愛される佐藤さんは、歌唱力だけでなく、自分で曲を作ったり楽器を演奏したりと、その音楽的才能にも注目が集まっています。今回語ってもらったのは、音楽的に「すごい!」「大好き」と思うモーニング娘。の楽曲や、今後挑戦したいことにについて。インストゥルメンタルを聴きながら、タブレットアプリの鍵盤を弾きながら、つんく♂さんが手がけた楽曲への強い思いをたっぷり語ってくれました。ぜひ一緒に曲を聴いたり、歌詞を見ながら、“まーちゃん節”全開の解説をお楽しみください!

撮影:田中達晃/Pash 取材・文:東海林その子

つんく♂さんの曲は、歌詞よりも音で感情が伝わってくる

――今回は、佐藤さんが音楽的に「すごい!」「大好き!」と思うモーニング娘。の楽曲を教えていただきたいです!
佐藤優樹はい! 『Fantasyが始まる』(2010年)、『KOKORO&KARADA』(2020年)、『What is LOVE?』(2014年)、『Help me!!』(2013年)です。

『Fantasyが始まる』:つんく♂さんの脳みそをさまよっている感じ
――1曲ずつお話を伺いたいのですが、まずは『Fantasyが始まる』の「すごい!」と思うところから詳しく教えていただけますか?
この曲は、この世の中にない音を感じます。まねしようと思っても、まねできない音だと思います。つんく♂さんの和音なんですかね。音が細かい。私はこの曲がずっと好きだし、つんく♂さんっぽい。つんく♂さんの脳みそをさまよっている感じがするんです。
『Fantasyが始まる』/モーニング娘。
11thアルバム『Fantasy!拾壱』(2010年12月発売)収録曲
作詞・作曲:つんく 編曲:大久保薫

『Fantasyが始まる』ライブ映像(21分14秒〜)

――曲を聴きながら具体的に伺いたいのですが、どの部分でそう思うのでしょうか?
佐藤優樹(【♪一番目立った格好で歩く】と【♪一番ビビッドな道を】の間の音)ここ、めっちゃつんく♂さんの脳みそをさまよっている感じ! つんく♂さん感がやばい! この子(曲)の考え方がつんく♂さんの脳みそに、ちょびっとだけ近いんだと思います。あと、ベースの音を聴いてほしいんですけど……私が歌いますね。(と、サビを聴きながらベースラインを歌い始める)この音、聴き取れます?

――教えていただくと聴こえてきますね。
佐藤優樹この入り込んでいってやっと聴こえてくる音が、つんく♂さんの隠れた本性みたいな感じがするんです、私の中で。歌詞では【♪体が勝手に動き始めるの SEXYでごめんね】って言っているんですけど、本当は言えていないことがたくさんある気がします。言葉にできないことを音で一生懸命表している感じがするんです。

勝手なイメージですけど、つんく♂さんの曲は、歌詞よりも音で感情が伝わってきます。つんく♂さんは私たち用に歌詞の主人公を女の子にしちゃっているから、本性が見えないんですよ。だからインスト(インストゥルメンタルの略。ボーカルのない、演奏だけの楽曲)を聴いて、“つんく♂さんはこれを伝えたいのかな”って理解しようとします。

歌詞はセクシーっぽいけど、もし私が間奏明けのパートを歌うんだったら、セクシーっぽくはしない。普通だったらカメラに向かって歌うところを、下を向いてカメラも一切見ずに1人動かず、周りのメンバーが動くようにします。けど、私がメインとしては歌いたくない。私みたいに、つんく♂さんの感情を深く探ろうとする人じゃないほうがいいと思う。

――それはなぜでしょう?
佐藤優樹歌詞どおりに表現できるから。たいていはインストを聴きこまないと思うから。

――佐藤さんはいつもインスト込みで表現を考えるんですか?
佐藤優樹「多分、本心はこうだろうな、でも歌詞はこう言っているからこうしよう」って考えています。

――インストと歌詞はいつもギャップがあるものですか?
佐藤優樹……難しい質問してきますね!(笑)

――すみません(笑)。
佐藤優樹ギャップに見えるんですけど、ギャップじゃないんです。それが難しいところだなって思います。でもインストを聴くと、歌詞には書かれていないつんく♂さんの伝えたいことがわかる気がする。こうやって曲についてつんく♂さんと話したことはないですし、話してみたら全然違っているかもしれないですけど、私の中ではそんな感じがしています。この曲は世の中にインストが出ていなくて、私が音源としていただいているから聴き取れているのかもしれないです。
――ギャップではなく、どちらもその人が持っている部分、ということでしょうか。
佐藤優樹そうです。つんく♂さんは、歌詞(の印象)と曲とで使われている音が違うなって思うことが多いんです。それに、このメロディーならこのコードだよねっていうのもあんまりない気がします。

例えば、(シャ乱Q『ズルい女』のイントロを歌いながら)この曲もメロディーそのままのベースじゃないから、すごくクセがあるように聴こえる。だからつんく♂さんの曲は何回か聴かないと、理解できない人が多いと思います。歌詞の内容と音が一致しないから。

――“つんく♂さんらしさ”というものを言葉にするとしたら?
佐藤優樹うわ〜ムズい!(笑)。でも、難しいから音で表しているんだと思います。

『Help me!!』:小田さくらちゃんの性格に似ている
――伝えたいことは歌詞で言っていることだけじゃないはず、と佐藤さんは考えているんですね。それでは、次の曲をお願いします。
佐藤優樹『Help me!!』にしましょう。私、この曲はずっと歌わせていただきたいと思うんです。いくらどん底にいても「やってみよう、頑張ろう」って考えている、すごいポジティブな子(曲)なんですよ。すごく人間味がある曲。
『Help me!!』/モーニング娘。
52ndシングル『Help me!!』(2013年1月発売)表題曲
作詞・作曲:つんく 編曲:大久保薫

モーニング娘。『Help me!!』MV

佐藤優樹インストを聴いて感じたイメージを話しますね。『Help me!!』っていう子もちょっと心配や不安もあるんです。だからサビはバイオリンの音がちょっと切なく感じる。だけどポジティブに言えばいいほうに進むかもしれないっていう、ただ前向きな子。わかりやすく例えると、小田さくらちゃんの性格に似ている。

――小田さんが11期メンバーとして加入して最初の曲ですもんね。
佐藤優樹あ、そっか! そうですね! お団子(小田さん)、めちゃくちゃポジティブなんですよ!

(左から)佐藤さん、小田さくらさん、加賀楓さん

佐藤優樹つんく♂さんの曲はインストを聴けば聴くほど、私は泣きそうになるんです。歌詞がなくても言葉が伝わってきません? それがつんく♂さんの曲のすごいところ。この曲はつんく♂さんが歌うと、私たちが歌うのとは全然違うように聴こえるんですよ。つんく♂さんのほうが説得力があるし、この曲はずっと、つんく♂さんの味方だと思う。

――味方、というのは?
佐藤優樹この子(曲)はつんく♂さんとモーニング娘。が大好きで、力をあげたいって思っている子。だからつんく♂さんが歌うと喜ぶんです。そもそも、コンサート会場につんく♂さんがいるかいないか、私は音を聴けばすぐわかるんですよ。音楽のハネ具合が違うから。つんく♂さんがいるときは、音楽“ひとりひとり”がみんな喜ぶんです、「パパ〜!」みたいな感じで。こんなに音楽に愛されてる人いないと思う。

『Help me!!』を筆頭に、『わがまま 気のまま 愛のジョーク』『What is LOVE?』『君の代わりは居やしない』『君さえ居れば何も要らない』『愛の軍団』は、つんく♂さんのことがめっちゃ大好き。『What is LOVE?』はちょっとわがままなんですけど。

『What is LOVE?』:嫌な位置だと「ふん!」ってなる
――曲によって性格が違うんですね。
佐藤優樹全然違います。『What is LOVE?』は「みんな楽しもうぜ〜!」っていう感じ。けど、けど、けど! セットリストで嫌な位置だと「私、この場所イヤ!」「ふん!」ってなる。
『What is LOVE?』/モーニング娘。’14
55thシングル『笑顔の君は太陽さ/君の代わりは居やしない/What is LOVE?』(2014年1月発売)表題曲
作詞・作曲:つんく 編曲:大久保薫

モーニング娘。'14『What is LOVE?』MV

――自分の見せ場を大事にしているんですね。
佐藤優樹結構大事にしているかもしれない(笑)。

――『What is LOVE?』は、本編の終盤に歌うことが多いですよね。
佐藤優樹最初にされたら、『What is LOVE?』がすごく嫌がると思います。コンサートの1発目になったときあるんですけど……(同じ部屋で別の取材を受けている小田さんに向かって)お団子〜、1曲目に『What is LOVE?』をやったツアーってなんだっけ?

小田さくらえっ? 急に?(少し考えたあとに)『BEST WISHES!』

佐藤優樹ありがとう、お団子! そう、『BEST WISHES!』(2019年春ツアー)のときは、『What is LOVE?』が1発目で「私、ここ嫌だ」って曲が言っている気がしていました。

北川莉央さんと『What is LOVE?』

――わがままさはどこで感じるんですか?
佐藤優樹もう、出だしからです。イントロのダダッタダダッタダダッタの時点で聴こえ方が違うと感じました。私が曲の気持ちに沿わずに日本武道館であおったとき、マイクが勝手にオフになっちゃったことがあるんです。曲に受け入れられていないと、音楽に逆らうと、本当にそういう事故があるんですよ。私はそう思っています。

それこそ、プラチナ期(アルバム『プラチナ9DISC』にちなんで、高橋愛リーダー期をこう呼ぶ)やOGさんの曲を私たちが歌うと、音楽がちょっと拒否るときもあります。「歌わないでくれない? あなたたちのために作られた曲じゃないの」っていう感じの子(曲)がいるんです。だから私たちが歌って近寄っても離れていく。

――あまり受け入れてくれない曲というのは?
佐藤優樹『ザ☆ピ〜ス!』はあんまり受け入れてくれないです(笑)。

モーニング娘。『ザ☆ピース!』MV

――『ザ☆ピ〜ス!』はオリジナルとupdated、2つのバージョンがありますよね。
佐藤優樹どっちもです、私のイメージですけど。『LOVEマシーン』はめっちゃ穏やかな子なんですよ。ずっと、微笑んでいるタイプ。「誰でもいいよ〜」「歌ってくれてうれしい〜」って感じだから、誰が歌っても喜ばれる。この曲をやると「また?」って思う方もいるかもしれないけど、『LOVEマシーン』自身は「まただよ〜」って言っている(笑)。でも、つんく♂さんが来ると、恥ずかしがっているイメージです。あと私、どの曲を挙げましたっけ?

『KOKORO&KARADA』:つんく♂さんの間奏は、すごく意味がある
――『KOKORO&KARADA』ですね。この曲の佐藤さんの解釈を教えてください。
『KOKORO&KARADA』/モーニング娘。’20
68thシングル『KOKORO&KARADA/LOVEペディア/人間関係No way way』(2020年1月発売)表題曲
作詞・作曲:つんく 編曲:大久保薫

モーニング娘。'20『KOKORO&KARADA』

佐藤優樹男性とお付き合いすると性格が変わる女の人っていませんか? 「なんでこんなに疑っちゃうんだろう」「なんでこんなに心配になるの?」みたいな。そうすると、どんどん考え込んじゃう。まさにそれなんです!(笑)。「心を失くしたとき、あなたは好きか嫌いかどっちに倒れますか」っていう歌。

――難しいですね……(笑)。
佐藤優樹伝われ〜!(笑)。(歌詞を見て、曲を聴きながら)最初は全部自分ばっかり。自己中なのをわかっていて、自分っぽくないなと思っているところ。Bメロはかぶせ(メロディーが追いかけるように重なっていくこと)が入るんですけど、普通の自分と情緒不安定な自分がごっちゃになるんですよ。

――1番で言うと、【♪それなのにね(感情任せ) ジェラシーの域超えて(不安な分だけ)】から始まるところですね。歌詞のカッコ書きの部分が情緒不安定な自分、ということですか?
佐藤優樹それもごっちゃなんです。感情が交差しているのは自分が二重人格すぎてどうしよう、でも【♪愛しちゃうんだ】のところは両方の人格の気持ちだから、あの人が大好きって気持ちは一向に変わっていない。

けど、傷つけたくないし傷つくし、疑っちゃうし疑われたくないっていうゴタゴタした気持ち。(サビ前の)このピアノは「もう限界。どうしよう、誰か助けて」っていう感情。音がなくなってピアノが鳴るところは1人でポロンって泣いてるところかな。

サビの【♪もうKOKORO止められない 未来へ向かう 雲に飛び乗って】【♪だから君も More愛して】のところは、「私、あなたのためにこの性格直すから、君も私以上に愛してね」ということで、「私のことを知りましたよね? この私を受け入れるパワーはありますか?」って手を差し伸べる。その手を取るか取らないかは男の子次第。壊れそうになりかけている自分をわかっていて、そこから立ち直ろうとポジティブになっていくから、サビのピアノの音がすごく穏やかというか。

(間奏を聴きながら)つんく♂さんの間奏は、すごく意味があるように聴こえるんです。ここは決意のところ。「もう心を止められないから頑張ります。あなたが必要」って女の子が言っている。だって、その人のせいで心が壊れたけど、その感情を知れたから。その人で直すことでしか収拾がつかない。そういう曲なんです、私の中では。

モーニング娘。'18『Are you Happy?』

佐藤優樹『Are you Happy?』もそういう曲なんですけど、こっちは好きだけど離れなきゃいけない決意をする子。決心も強いし、愛も強い。(インストを聴きながら)Aメロのアタック音は自分に言い聞かせている部分。「もう遅い!」って。男の子のことを好きなんですけど、お互いが向上し合えない相手って気づいているんですよ。気づいたときには関係が壊れている。

どうしてもうまくいかない相手っているじゃないですか。価値観が合わなかったり、いくら一緒にいてもどんどん下がっていったり。この子はそれをわかっているから「さよなら」って言うけど、本当は寂しい。大好きだし一緒にいたいけど、離れなきゃいけない理由がたくさんある。

この子は頑張り屋さんで愛も強いけど、その彼氏とは理解し合えない。でも歌詞にはあんまりそういう感じが出てないんです。【♪もう遅いよ】ってわかりやすいところもあるけど、【♪あいつはいいな あいつばかりね】とか、全然わからないじゃないですか。「何を伝えているの〜?」って思う。

佐藤優樹【♪ここから出して】は、この関係から出たいっていうことだと思うんです。熱いものってちょっと離れたらあったかいけど、近づきすぎたら熱くてやけどする。その状態です。やけどしたままずっと一緒にいたら、自分がボロボロになるから離れようって。

サビの歌詞はずっと変わらないんですけど、前半は過去の話で、女の子が自分のことしか見えていないから男の子が壊れていく。女の子はそこに気づくのが遅かったし、男の子は言わなかったから。だけど、ここ(間奏明けの【♪Are you happy?】)で理解するんです。「さよなら」って決心する。だからここだけ、時計の音がするんですよ。今までなんで気づかなかったんだろう、なんでこんなにひどくなるまで気づかなかったんだろうって。

正直、この曲のことは最近やっと気づいたんです。歌詞を見てインストを聴いて、全くわからなかったけど、やっとわかった。気がする。こういうことやっていると頭が痛くなるんですけど、それをやってのめり込まないと、つんく♂さんの歌詞って難しい。なんでこの言葉になったんだろうって。

モーニング娘。‘15『私のなんにもわかっちゃいない』ライブ映像(36分1秒〜)

佐藤優樹『私のなんにもわかっちゃいない』っていう曲もそう。【♪物事の道理が 分からないなんてさ ただ友達と過ごすのも 難しくなる 難しくなる】【♪降り注ぐ夕陽が 眩しすぎるのは この瞬間も生きてるって 感じられる 感じられるから】って歌詞から、【♪ああ 女なら感覚で分かるだろう】につながるのが、「なんでこの歌詞になった?」って思いません? 私はいまだにわかっていない。

【♪分かってない 分かっちゃいない】って歌詞がありますけど、「はい、私、わかっていません!」って思う(笑)。私歌っていますけど、わかってない、ごめんなさいってなる曲。だから最初に、「つんく♂さんの曲は歌詞と音にギャップがあるんですか?」って聞かれましたけど、そうじゃないんです。言葉にできていない自分が悪いんですけど、こういう伝え方しかできなくて……こんなの文字にできないですよね(笑)。

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