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バーチャルなのに泥くさい、「リアルに負けない」VRアイドル“えのぐ”の軌跡と挑戦

えのぐ

 インターネットの仮想空間の中で、タレント活動を行うバーチャルタレント。キズナアイ、月ノ美兎、輝夜月などに代表されるバーチャルタレントは、いまは日本を代表するエンタメの一つになっている。そんなバーチャルタレントのシーンで注目度を上げているのが、VRアイドル“えのぐ”。鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハルによる4人組アイドルグループだ。彼女たちの特徴は、約2年半に渡る活動が物語るドラマ性、そして、ファンとの精神的な距離感の近さにある。バーチャルでありながら、泥くさく、熱い人間性がリアルに感じられる活動によって、じわじわと幅広い支持を集めている。

スタートはコミケ、賛否両論の中で課されたハードル

  • (左から)鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハル

    (左から)鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハル

  • コミケから活動開始した“あんたま”

    コミケから活動開始した“あんたま”

 えのぐの歴史は、鈴木あんず、白藤環の二人による通称“あんたま”の活動から始まった。“あんたま”の最初の活動は、2017年8月に東京ビッグサイトで開催されたコミックマ―ケット。「バーチャルアイドル研究生とリアルタイムで会話できる」という内容で出演し、「3日間でTwitterのフォロワー数が1万人を超えたらアイドルとしてデビュー」という目標を掲げていたが、結果はわずか約400人。その後、全国各地でバーチャル握手会(当時は全国行脚と呼ばれていた)を開催し、1ヵ月間をかけてようやく目標の1万人に達した。

あんず「最初の頃はとても緊張して、ファンの方とも上手くお話できなくて。スタッフさんや環ちゃんをすごく心配させてました(笑)」

「全国行脚中も、人が集まらないときは3時間くらい二人だけで生放送を配信したり。大変だったけど、絶対にデビューしたいと思っていたので、心が折れることはなかったです」

 デビュー決定後、メンバー3人(夏目ハル、日向奈央、栗原桜子)の加入を発表。当時“あんたま”を応援していたファンからは様々な声が上がったが、最終的に5人組アイドルグループ“えのぐ”としての活動が発表された。その後、新メンバーの3人は、自分たちの楽曲「僕たちの青春ロード」のMV再生数が合計10万回を超えたら正式メンバーになれる」というハードルを自らに課した。

奈央「『あんたまの二人がよかった』という声も少なからずありましたから。環とあんずが1万フォロワーを達成したこともあって、私たちも何かを超えないと一緒のスタートラインに立てないと思って」

ハル「そこで立てた目標が、“3人の楽曲で10万回再生”。泥臭いですよね(笑)」

「私たち体育会系だからね(笑)」

持ち曲たった3曲で開催された1stライブ、でも「ライブってこんなに楽しい!」

1stフルアルバムを発売するえのぐ

1stフルアルバムを発売するえのぐ

  • えのぐ1stライブの模様

    えのぐ1stライブの模様

 このような思いで発表された曲「僕たちの青春ロード」は、約1ヵ月で合計10万回再生を突破し、3人は「えのぐ」の正式メンバーに。グループ初のオリジナル曲「えのぐ」を2018年5月にYouTubeでお披露目し、同年8月には初めてアイドル衣装を着て1stライブを行った。

「全国行脚中から応援してくださるみなさんと『着るならどんな衣装がいい?』という話をしていて。1stライブは、本当の意味でアイドルになった姿をみなさんに見てもらいたいという気持ちが強かったですね」

あんず「当時は『えのぐ』『ショートカットでよろしく!』『絵空事』の3曲しかなかったんですけど、お客さんの歓声を直接いただけることがとにかくうれしくて」

奈央「私はライブが好きで現場にもよく行っていて。ステージに立ったときは、『今まではペンライトを振る側だったのに、いまはみんなが私の色を振ってくれてる!』って鳥肌が立ちました」

ハル「ライブは、私たちとお客さんが一緒に作るものだと思っています。だからあらためてライブってこんなに楽しんだ!と実感しました」

軌道に乗るかに思えた矢先、メンバー2人が活動休止「“えのぐ”という場所を守らなきゃ」

  • メジャーデビューシングル「ハートのペンキ」

    メジャーデビューシングル「ハートのペンキ」

 2018年11月には、「ハートのペンキ」でメジャーデビュー。活動は軌道に乗るかと思いきや、翌年の春、1周年ライブのタイミングで夏目ハル、栗原桜子が活動休止。えのぐは、環、あんず、奈央の3人体制での活動を余儀なくされた。

「まずハルちゃんが休業することになって、4人でリハをやってたら、ライブ本番の1週間前に桜子が休止することになったんです。3人でライブすることに対しては、ファンの方からもいろんな意見があったんですが、『3人でも100%、いや、120%のライブを観せるんだ!』と、気合いを入れました。とにかく、私たちが“えのぐ”という場所を守らなきゃ、という思いでした」

奈央「朝7時に集まって、ひたすら自主練やリハーサルをやって。燃えましたね」

ハル「じつは私は、そのライブを観客として観ていたんです。本当にすごいパフォーマンスで、めちゃくちゃ楽しくて。がんばって早く戻りたいと思ったし、3人が“えのぐ”という場所を守ってくれたおかげで、今、私はここにいられるんだなと。言葉にするのは恥ずかしいんですけど、めちゃくちゃ感謝してます」

 そして2020年1月に栗原桜子のアイドル活動引退が発表された。その半月後に行われたえのぐ結成2周年記念ライブ『enogu 2nd Anniversary Live -Colors-』のアンコールで歌われた「Colors」は、メンバーにとっても思い出深い曲だという。

奈央「2周年ライブで歌ったときはボロボロ泣いちゃいました。涙で歌えなくなると困るから、振り付けの動きの中で、サッと涙を拭いて(笑)」

「『Colors』は、本当は1周年記念ライブで披露するはずだった曲なんです。だから5人揃って歌いたかったんですけど…。“えのぐ”として前に進む覚悟を決めて、4人で歌いました。私自身、歌っていて歌詞がすごく刺さりました」

紆余曲折を経て完成したアルバムは、“えのぐ”の軌跡そのもの

8月のワンマンライブの様子。多くのファンがアルバム発売を喜んだ。

8月のワンマンライブの様子。多くのファンがアルバム発売を喜んだ。

 4人体制の活動をスタートし、メンバー同士の絆、ファンとの絆をより意識するようになったというえのぐ。「e☆Jump!→Dream!!」(キノシタ feat. えのぐ)からはポップな楽曲が増え、アイドルとしての魅力や存在感も増している。そして満を持して、9月27日に1stフルアルバム『真っ白な夢の世界』をリリース。これまでの約2年半の活動で発表された全20曲を収めた本作は、彼女たちの軌跡そのものだと言っていい。

あんず「“あんたま”として活動を始めた3年前のことを考えると、ついに私たちのアルバムが出るんだ!って…本当に感動します。いろんな思い出と一緒に、大事な曲もこんなに増えたんだなって」

ハル「アルバムを聴いていただけたら、これまでの“えのぐ”のすべてがわかると言っても過言ではないと思います」

「今年の8月にやったワンマンライブで発表したとき、ファンのみんなの反応がすごくて。その表情を見て、泣きそうになりました。というか泣きました(笑)。ずっと応援してくれた方には、私たちと一緒に歩んで来た歴史を感じてほしいし、まだえのぐをあまり知らない方にも、楽曲がすごくいいし、絶対に好きな曲があると思うから、ぜひ聴いてください!と言いたいです」

奈央「CDっていう形のあるものでアルバムが手元に残るのも嬉しいです。歌詞カードなんかも、ぜひ細かいところまで見てほしいですね」

目標は世界一のVRアイドル、リアルアイドルに負けない熱量届けたい

 バーチャルとリアルを行き来しながら、その時々で等身大の悩みや葛藤、そして喜びがあらわれた活動によって、ファンとの生きた繋がりを作り続けてきた“えのぐ”。アルバムリリース以降、彼女たちのがむしゃらで人間味にあふれる活動は、さらに多くの共感を集めることになりそうだ。

「こういう時だからしばらくはオンライン中心になるかもしれないけど、私たちとしてはぜひ会場でライブパフォーマンスを見てほしくて」

奈央「ダンスや歌をさらに磨いて、次にお会いしたときに『成長したじゃん!』と思ってもらえるように、もっともっとレベルアップしたいですね」

ハル「VRアイドルですけど、リアルで皆さんと会いたい気持ちが強いし、距離感が近いのが魅力の一つ。ライブの熱量もリアルのアイドルさんに負けないので、ぜひたくさんの方に観てほしいし、“えのぐみさん”(ファンの総称)の輪がもっともっと広がってほしいですね」

あんず「目標は“世界一のVRアイドル”。メンバーと、応援してくださる皆さんと、一緒にがんばっていきたいです」

(文:森朋之)
1stアルバム『真っ白な夢の世界』

9月27日発売
詳しくはコチラ》(外部サイト)


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