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ももいろクローバーZ、アイドル好き“以外”をも振り向かせた要因とは?
サブカル層や女性ファンをも取り込み、アイドル市場で独自のポジションを確立
そんななか、2011年4月にメンバーだった早見あかりが女優を志し脱退。グループ名に“Z”を付けて活動をリスタートさせ、次々にアイドルの枠を越える展開が続いた。「試練の七番勝負」と題した有野晋哉(よゐこ)、デーブ・スペクター、武藤敬司らとの異種トークイベント、『LOUD PARK』や『SUMMER SONIC』といったロックフェスに出演、全日本プロレスとのコラボ、大槻ケンヂや布袋寅泰、ROLLYといったロック畑のアーティストが楽曲提供……。「一度観たらハマる」と評判が広がり、“モノノフ”と呼ばれるファンはいつの間にかアイドル好きよりサブカル層が多くなっていた。また、女性限定ライブに1万人を集め、女性ファンも確実に取り込んでいったことも、彼女たちが“その他大勢”の女性アイドルグループとは一線を画す存在となったことを立証しているといえるだろう。
実験性の高いアルバム『5TH DIMENSION』で初の1、2フィニッシュ達成
一定のイメージにとらわれない戦略は、ともすればせっかく付いたファンが離れかねないリスクがある。しかし、ももクロはブレイク後も守りに入らず、さらに大胆な挑戦へ打って出る姿勢を見せた。結果、アイドルグループの飽和状態をよそに、ももクロはアイドル市場でのパイの奪い合いから抜けて独自のポジションを確立。攻めが功を奏したと言える。
「やれんのか?」の問いに常に応えてきた彼女たち…その結果、女性初の記録を達成
2015年にはアメリカの伝説的ハードロックバンド・KISSとのコラボシングルを発売し、今年の『桃神祭』では高木ブーが“雷様”として登場するなど、多種多様なプロフェッショナルとの共演を行ってきた。AKB48が今も握手会を続けて王道路線でアイドルファンの裾野を広げてきたのに対し、ももクロは固定観念に捉われない独自の展開でサブカル層から一般へ支持を増やしていった。常にハードルが高くなっていく状況のなかでも、「やれんのか?」と問われれば、躊躇なくそれに挑み続けてきたのが彼女たちなのだ。
昨年からはメンバーのソロコンサートが行われ、5人の主演映画『幕が上がる』も公開。10月からは百田夏菜子がNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』に出演と、今後さらに音楽以外の展開や、各メンバーの個性を生かしたソロ活動も増えそうだ。グループがホームとしてありつつ、メンバー全員がソロ活動や女優業を並行させて、集まったときに更なるパワーとなるのは、むしろ男性アイドルグループに多い流れ。大規模なコンサートで一気にファンを集めて盛り上がりを見せるなど、通例の女性アイドルとは異なっている。
これまでアイドルの常識を打ち破ってファンを広げてきたももクロ。プロデューサーの川上アキラ氏は著書やイベントで、将来的にメンバーが結婚しても、ももクロとして活動を続ける構想をほのめかしている。男性アイドルに比べて年齢的な限界が早いとされる女性アイドルだが、ももクロは将来的にその常識をも越え、さらに息の長い活躍が期待できるかもしれない。『女性アイドル』という概念を常に壊してきたグループだけに、今後どのようなサプライズを我々に見せてくれるのだろうか? 彼女たちからの興味は、まだまだ尽きない。
(文:斉藤貴志)