ORICON NEWS
クリープハイプの尾崎世界観、自身の歌声や楽曲制作での苦悩について語る
音楽漬けの生活になったら、昔のような曲を作りたいと思ってしまう……
尾崎世界観 今まで何度かあったんですけど、あそこまで近い距離感でというのは初めてでした。前から僕らを知ってくれていたドキュメンタリー監督の村川さんが、撮りたいといってくれて、やったら面白いんじゃないかと思ったんです。でも撮っていくうちに、いろいろなことが起こって、方向性が若干変わったりもしたんですけど、結果として楽しかったです。僕らとは違う、撮ってくれている人の視点が入ることで、自分たちのことがよりわかりやすくなりましたし。
――それを初回限定盤の特典に付けたのは、ファンの人にも自分たちのことや内面をもっと見て欲しかったから?
尾崎 もともとは、チケットが取れずツアーを見に来られなかった人に見て欲しいと思って撮り始めたんです。単純にツアードキュメントというか、どういう雰囲気でツアーを回っていたか見てほしいと思って。それが、たまたまそのツアーではいろんなことが起きて、少し重い内容になってしまっただけで。
――映像の中では、「昔のような曲が書けなくなった」と話しているシーンもありましたが。
尾崎 そう感じるようになったのは、ここ2〜3年です。今でこそみんな聴きに来てくれるけど、昔はお客さんもいなかったし、当時は僕らもアルバイトをしながらの活動で、実際はほとんどの時間をアルバイトに費やしていた。そういう状況の中で曲を作るのと、今のように24時間音楽のことを考えられる幸せな状況で曲を作るのとでは、歌えることも作る曲も違ってくるんですよね。でも、変われることはいいことだと思うんです。当時は、バイトを辞めて音楽に集中できる生活をしたいと思っていたから。それが今、昔の曲を聴き直してみると、バイトをやっていたからできた曲もあったなとか、音楽をやりたいのにバイトばかりやってるという怒りを、音楽にぶつけることができていたなって。
――昔の怒りをぶつけていたような曲を、また作りたいと?
尾崎 そうなのかもしれないですね。昔はゆっくり音楽のことだけを考えて作りたいと思っていたけど、いざそうなったらなったで、昔のような曲を作りたいと思ってしまう……。きっと、自分の性格なんだと思います。
レーベル移籍後は、結果に対する責任が明確になった
尾崎 曲を作って歌詞を書いたときは本当の気持ちですけど、演奏してレコーディングして商品にしていくうちに、どんどん違うものになってるんじゃないかと思ったんです。それに、ワンマンライブで20数曲やっても、全部がそのときの気持ちと一緒というわけでもないですし。そのツアーのときは、考えすぎて入り込んで、そんなことを考えていましたね。それで、そういう発言をしたんだと思います。今はそういうことは、思わないですけどね。
――最初はごつごつとした岩が、川を流れていくうちに表面が削られて、つるつるした丸い石になっていくみたいな。
尾崎 はい。そうしないと商品にならないこともわかっているので、そこでのジレンマというか。このときはツアー中で、ライブハウスという、よりごつごつとした岩に近い状態で、曲を好きなように届けられる状態にあったので、そんなことを考えたんだと思います。
――『吹き零れる程のI、哀、愛』(2013年7月発売)が、世に出ているピークだったという発言も。またその場所に到達したいと?
尾崎 やっていくうちに、どういうバンドなのかは、いい意味で知れ渡っていくし。どんどん曲も作ってるし、新しいCDも出しているんだけど……自分たちが、今やりたいことをやれてると思っているときに、世間とズレてしまうのは悔しい。それでもしっかりやっていれば、戻ってこれるかなと……。今回の「破花」という曲は、そういう気持ちもあって作りました。何としてでも、ちょっとでも手をひっかけて登っていきたいと思っていて。続けるということは、そういうことだと思っています。手の内がどんなに知られてしまっていても、それでも曲を出さないといけない。宝くじは買わないと当たらないのと一緒です。
――レコード会社を移籍して2年ほど経ちましたが、今の会社との関係性は?
尾崎 いいと思います。今は、やりたいことをやらせてもらっています。そのぶん、責任を持ってやらないといけない。迷っていると、時間だけ経ってしまうので。以前はわりと、こうしなさいと言われることが多くて、メジャーのやり方みたいなものがわからず、そのまま受け入れていたんですけど、今思い返すと、意外と自分たちで決めてなかったんだなって気づきました。自分たちで決めなきゃいけなかったときに、それができていなかった。責任が明確というか、今はすごくわかりやすいです。ダメだったときは、自分たちのせいだとはっきりしているから。