ORICON NEWS

八代亜紀、若い才能が集結したブルースアルバム「今は哀しみを知らない人が多い」

 演歌歌手・八代亜紀が、10月28日に寺岡呼人をプロデューサーに迎えたブルースアルバム『哀歌-aiuta-』を発売した。近年はジャズアルバムの発売やニューヨークの老舗ジャズクラブ・Birdlandでのライブ、さらにはメタルフェス出演や学園祭出演など、ジャンルや世代を越えて幅広い活動を行っている八代。本作にもTHE BAWDIESや横山 剣(クレイジーケンバンド)、中村 中ら若い才能が集結。現代の人々の心に響くブルースアルバムに仕上がっている。

⇒八代亜紀 動画インタビューはコチラ

ジャズもロックンロールも、源流はブルース

――最新アルバム『哀歌 -aiuta-』は、和洋の楽曲を集めたブルース作品になりました。
八代亜紀 2012年にジャズアルバム(『夜のアルバム』)をリリースしたことで、もっと根底的な音楽をやってみたい気持ちになったんですね。そもそも私は以前からずっと、浪曲は日本のブルースだということを言い続けてきました。日本のつらくて過酷な環境のなかから生まれてきた哀しい歌。それがだんだんたくさんの人に向けられるようになって、流行歌になっていくんですけど、ブルースもこの流れと一緒だなと。今回、7月にアメリカのメンフィスに行って本場のブルースを勉強してきたのね。そしたらやっぱり、ジャズもロックンロールも、源流はブルースだってことを改めて教えられて。

――ブルースの本場、メンフィスでのライブはいかがでしたか?
八代 2013年の『夜のアルバム』のときにニューヨークのバードランド(ジャズクラブ)でライブがあって、そこを満員にできたのをいいことに自信をつけてメンフィスには行ったんです。ただやっぱり本場でしょう? 無理なんじゃないかなという不安もあったのね。

――名門ブルースクラブであるB.B.キングで、日本の歌謡を披露することにプレッシャーがあったのでしょうか?
八代 そうね。でもね、あちらのミュージシャンもすごく緊張されていました。B.B.キングのハウスバンドのみなさんが、私の「もう一度逢いたい」とかをものすごく練習されていて、リハーサルのときも私がOKと言っても、彼らがNOと言って何度もやるの。すごく敬ってくれているなと感じて、うれしかったですね。で、本番は完全にブルースのステージができました。バンドも超カッコよかったわ(笑)。

今は哀しみを知らない人が多い

――今作『哀歌 -aiuta-』の制作にあたって、寺岡呼人さんをプロデューサーに招いたのはなぜなのでしょうか?
八代 スタッフのみんなと誰にプロデュースをお願いしようか話し合いまして、寺岡さんの名前が上がったんです。それで私が「いいですね!」となって、初めてお会いしたのが最初ですね。ブルースというと、どこか年老いた印象があるじゃない。そこに寺岡さんのようなそこまで若くもない、けど老いているわけでもない方の感覚が入ると、楽しい作品になるんじゃないかと思ったの。彼はロックの人ですけど、もちろんブルースにも並々ならぬ情熱をお持ちということで、喜んで引き受けてくださいました。

――選曲はどのように?
八代 日本の曲は私が選びました。それを寺岡さんにブルースにしていただいて。あとはアメリカの名曲もみなさんと話し合って決めました。

――今回のアルバムは、和洋の様々な楽曲を、八代さんの解釈でブルースにしたものだと。
八代 そうですね。そこからさらに3組のミュージシャンにオリジナルを作ってもらいました。寺岡さんにご紹介いただいて、私からは「とことん暗くて哀しい歌」とお願いして。ブルースは元々、極限のつらさのなかで「頑張ろう」と歌ったものですから。

――ここで言う「哀しみ」とは、どんなことなのでしょう?
八代 私が思うに、今は哀しみを知らない人が多いのね。私たちの時代は貧しくて、親が遊んでくれた経験とかがないような時代でした。だからブルースで歌われるような、夕げを囲んだときのうれしさとか幸せとかがわかるんです。でも今はその幸せを知らないし、それをつらいとも思わない。なぜなら知らないから。だからあえて哀しい歌を歌いたいと思ったんです。哀しみを知らない人たちがこのつらい歌を聴いて、世の中にこんな人生があるの? なら自分はどうなんだろう? と考えてくれればうれしいですね。

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索