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(更新: ORICON NEWS

サイクル早く消費される子役たち

 最近、バラエティ番組などでも活躍の寺田心(てらだこころ・7歳)。数年前に芦田愛菜とともにブレイクした鈴木福と同系統の“癒し系”子役で、『TOTOネオレスト』のCMにバイキン親子の子どもリトルベン役で登場。素朴かつしみじみとしゃべるところが“かわいらしい”と評判になり、ブレイクした。だが、寺田心の活躍に接しながらも、「子役のサイクルは早いな…」と感じた視聴者の方も多いのではないだろうか。今や通常の芸能人よりも競争が激しいといわれる子役界の現状と歴史、未来について、改めて検証してみたい。

坂上忍や濱田岳ら逸材も多いが、目まぐるしいポジション争奪戦の子役業界

 寺田心は、素朴なルックスと“バカ丁寧”な先輩芸能人への受け答え、バラエティ番組での子どもらしいリアクションなどで人気を博す一方、「子どものクセに狙ってる」「あざとい」などとして、ネットの一部では早くもバッシングの対象にされているようだ。そして比較対照されるのが、子役界の先輩・鈴木福。鈴木福は、芦田愛菜と歌った「マル・マル・モリ・モリ!」で大ブレイクするが、それまでの子役の専売特許である「すごくカワイイ」「すごく演技が上手い」に、“素朴で癒される”といった要素を加えた新しい子役スターだともいえる。寺田心もまさにこの“素朴癒し系”に乗り込んできた子役であり、今では鈴木福の“お株”をすっかり奪ってしまった感がある。

 その鈴木福にしても、その前に大ブレイクして一大子役ブームを巻き起こした“こども店長”加藤清史郎のポジションを奪い取ったとも言え、子役業界では常にこうしたポジション争奪戦が行なわれている。ちなみに、加藤と同時期に人気を博した子役・濱田龍臣も加藤同様、最近では「超イケメンになった」と話題になることが多いが、競争を勝ち抜いた子役が成長して、そのまま芸能界で成功する例もある。現在活躍中の若手俳優・神木隆之介や、個性派俳優として再ブレイクした柳楽優弥、濱田岳も子役出身。今やバラエティ番組では欠かすことのできない坂上忍などは、かつては(40年前)は子役の代名詞と言ってもいい存在であり、現在は子役養成所も運営している。

有名無名を問わなければ、芸能界にはかなりの数の“元・子役”がいる

 俳優以外にも、『あっぱれさんま大先生』(フジテレビ系)出身の内山信二はおデブタレント、おませな玲治は人気ロックバンド・OKAMOTO‘Sのドラム・オカモトレイジとして、小橋賢児も俳優のほか、映画監督や日本最大級のダンスミュージックフェス『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターを務めるなど、多方面で活動している。

 芦田愛菜大ブレイク後の女性でも、本田望結、谷花音といった子役たちが芦田以上に活躍中。芦田愛菜以前では、代表的な存在として安達祐実がいたし、『教師びんびん物語』(フジテレビ系)に出演していた観月ありさも超美少女の子役であり、現在でも女優として活躍しているのは周知の通り。今や“大河”女優の井上真央にしても、『キッズウォー』(TBS系)では「ざけんなよ!」と気勢を上げていたわけで、有名無名を問わなければ、芸能界にはかなりの数の“元・子役”がいるのである。

 ただ、子役時代の知名度が高ければ高いほど、本人の肩には重い十字架がのしかかる。子役自体がそもそも“期間限定商品”であり、歳を取れば“ただの人”になって、一瞬にして“あの人は今”の状態になる可能性も高いのだ。坂上忍も活動歴は非常に長いが干された時期もあり、安達祐実も子役イメージからの脱却に試行錯誤し、妙に不釣り合いなセクシーグラビアに挑戦した時代もある。『崖の上のポニョ』でブレイクした大橋のぞみも、芸能界を引退して学業に専念した。

賞味期限も短い子役業界で、大成するのはひと握り

 さらには、人気絶頂から一気に転落人生を送る子役たちもいる。「ちゃ〜ん!」でおなじみ『子連れ狼』の大五郎役・西川和孝は、芸能活動後は知名度を生かし市議会議員になったが、今では殺人犯として服役中。外国に目を向けても、マコーレー・カルキン(薬物中毒)やリバー・フェニックス(薬物中毒の末心不全で死亡)の例もあり、プレッシャーに押しつぶされて辛い末路を迎える子役も少なくない。むしろ、成功している元子役のスターは極めて稀なケースなのであり、子役で人気を博した後に大成するということが、いかに難しいことであるかを物語っていると言えるだろう。

 入れ替わりが激しく、賞味期限も短い子役業界。子どもだけに成長も早く、そのぶん需要と寿命が短いのは仕方がないのかもしれないが、それにしても消費サイクルが早すぎるような気もする。しかし芸能界で生き残っていくためにも、子役時代に高い知名度を獲得したいのはうなずけるし、結果として厳しい競争になるのも無理はない。それでも先述してきたように、人気のあった子役が大成する例は、ほんのひと握りにしかすぎないのも事実なのだ。

 今後は制作側にも、人気の出た子役を“使い回し”たり“使い捨て”にしたりせず、成長に見合ったポジションや作品に起用するなど、子役を育てていく視点や体制も求められてくるかもしれない。現在の子役はどこまで生き残れるのかは、芦田愛菜や鈴木福、寺田心らの活躍にかかっている。

(文:五目舎)
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