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ORICON NEWS
おニャン子クラブとAKB48、ファンの“熱量”の違い
メディア力で一気に全国区となったおニャン子に対し、地道な活動が実を結んだAKB48
まず、わかりやすいのは作品の売れ行き比較だ。“全国区”でスタートしたおニャン子クラブは、デビュー曲「セーラー服を脱がさないで」で最高位5位を記録。アイドルイベントのメッカとされる東京・池袋サンシャイン噴水広場でのデビューイベントに観客が集まり“すぎて”、周辺のテンポが軒並みシャッターを下ろす非常事態を招き、イベントが中止に追い込まれた。その勢いは“レジェンド”級だったと言える。一方、“インディーズ”で発売したAKB48の「桜の花びらたち」は、10位という結果。メジャーデビュー作「会いたかった」は12位止まりといきなりブレイクとはいかなかったが、その後のセールスの伸びは大きく異なる。
観客の集客数やシーンへの影響力は、一概にどちらが長けているかは判断できない
では、コンサート会場の規模で比較してみる。AKB48はデビュー時の目標に掲げていた東京ドームを制覇したほか、数万人収容規模の会場での公演をいくつも開催。これに対して、おニャン子クラブも国立代々木第一体育館や横浜スタジアム、札幌真駒内屋外競技場といった当時では最大級の収容人員を誇った会場での公演をこなしており、一概にどちらが集客に長けているかは判断できない。
アイドルシーンへの影響力という点ではどうだろうか。「アイドル復権」とまで言われた近年のアイドルグループの台頭や各地におけるアイドルユニットの濫立を促進したのは間違いなくAKB48だが、一方のおニャン子クラブには追随する存在がなかった。しかし、当時のソロアイドル歌手全盛期に、絶対的なアイドルグループという新たな選択肢を打ち立てたという点で大きな足跡だと言える。そして、おニャン子をロールモデルとして、平成初頭には乙女塾(永作博美などを輩出)、桜っ子クラブさくら組(菅野美穂、中谷美紀らを輩出)を生み出す礎となった感は強い。
ファンの応援スタイルが“横の団結力”から“個の集合パワー”に変化
それぞれのグループのファンは、「自分たちのほうが熱量が上」という自負はあるだろう。ただ、30年前のあの時、僕たちは、「テレビがアイドルを作れる」ということを知り、そのアイドルをファンの熱が時代の寵児へと変えてしまうことを知った。その点では間違いなく前代未聞の出来事で、それらの流れを秋元康という“職人”が増幅させ、AKB48という類まれな国民的グループへと進化させたのも事実だ。
だが、30年経った今でもCD126枚セットというとんでもない代物を流通させてしまうおニャン子クラブのファンの冷めることない“熱”にはただただ驚くばかり。それが好評を博しているという事実に脱帽する。AKB48が30周年を迎えるのは2036年。その時、彼女たちの作品を網羅した空前の作品が世に出てくるのだろうか? そして今のファンの人たちは変わらぬ熱量でその作品に手を伸ばすのだろうか? その時に本当の“熱量”の違いがわかるような気がする。
(文:田井裕規)