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松嶋菜々子 SPECIAL INTERVIEW 私にとっても作品にとっても意味のあるものに
私にとってリアリティのある役
【松嶋】 これまでと違う役という意識はしていないですね。今は、20代の頃のように「この作品いいな、この役いいな」と思った仕事をすべてお受けすることはできないので、いろいろな事情を加味しながら、その中で自分ができる作品を決めています。この期間ならできる……という、自分と作品のスケジュールがマッチしたものを運命の作品だと思ってお受けしたこともありますね。
──今回の映画は、そんな運命の作品のひとつとなったわけですね。
【松嶋】 そうですね。監督、題材、自分にとって新鮮であること、いろいろな条件が合った作品です。その中でも、私にとってはリアリティのある役柄(母親の設定)だということ、三池崇史監督であること、SPという初挑戦の役だったことが決め手となりました。映画もドラマも演じることは一緒ですが、私の中で、映画はより味の濃いものという意識があるんですね。三池監督の世界観は、その中でもさらに濃いので、この作品に参加できたことは収穫でした。
──リアリティのある役という点で、もう少し詳しく聞かせてください。
【松嶋】 (凶悪犯に)懸賞金10億円というのは、現実離れしているようにみえるのですが、子を持つ親としては、そこまでしたくなる気持ちは理解できる。そういう意味でリアリティがあると思いましたね。最初の台本で白岩は独身でしたが、途中、三池監督が直されてシングルマザーの設定になったんです。演じる私にとっても共感できる意味のあるものになりましたし、観客の方々にも私が演じた白岩の気持ちは理解しやすいような気がします。もし、自分に(こういう事件に)関わってしまうきっかけが生まれてしまったら……どうするんだろう?と考えさせられる内容だと思います。
アドレナリンが出続けていた
【松嶋】撮影までに約半年間の準備期間があったので、個人的に体力作りを兼ねてトレーニングをしていましたが、動きや拳銃の構え方などのSP指導は撮影の2ヶ月前からですね。アクションはこれまで経験したことがないので、身体で覚えられるよう特訓していただきました。
──実際のアクションシーンで大変だったことはどんなことですか?
【松嶋】 機敏に見せること(笑)。カットを重ねることがスピード感につながるのと、1シーンを撮るのに身体を使ってテストを繰り返すので体調管理も大切でした。格闘技ではないので相手と呼吸を合わせることも必要で、今のはシャープに見えているかな、蹴りのタイミングは合っていたかなと、現場で気になっていましたが、三池監督に、とてもシャープに映していただきました。「投げ飛ばしたりすることは気持ち良いいですか?」と質問で聞かれることがありますが、それはないです(笑)。
──その三池監督について、一緒に仕事をした感想をきかせてください。
【松嶋】 初めてお会いしたとき、三池監督はこの作品のイメージを2時間かけて説明してくださったんですね。監督ご自身はそれほど長く話された感覚がなかったようで、最後に「女優さんと話すのは苦手なんですよね……」とおっしゃっていて、本当に少年みたいな方(笑)。その最初のお話のおかげで、自分の中で具体的な組み立てもできましたし、どういう映画になるのかというイメージもわきました。
──そうやって、素晴らしい映画が完成するんですね。また、三池監督の現場は“眠らない現場”だとよく聞きますが、今回はどうでしたか?
【松嶋】 確かに、眠らない現場でしたね(笑)。けど、撮影が朝方まで続いても「眠くて……」とはならないんです。アドレナリンがいい感じでずっと出続けている感じでした。三池監督がすごいのは、自分のほしい画を妥協することなく時間内に収めて撮られるところ。とくに台湾ロケでの新幹線のシーンは、限られた時間や制約があるのに、すべて綿密に計算しつくされていました。しかも、衣裳のベルトの位置や太さについてまでしっかり気にかけられていて、すべてにおいて対応されているバランス能力が素晴らしかったです。
(文:新谷里映/撮り下ろし写真:逢坂 聡)
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