• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
ORICON NEWS

マネージャーが語るU2の真実

ロック史に残る名物マネージャーが語るU2の真実
「すべてのキャリアが今につながっている」


 その他の国ではスタジアムで使用したという巨大ステージをそのまま屋内のさいたまスーパーアリーナに持ち込み、特別サイズ仕様でライブを行ったU2。8年ぶりの待望の来日、ライブアルバム発売直後だったこともあり、会場のさいたまスーパーアリーナ3公演はすべてソールドアウト、そして全オーディエンスを感動させる、一級のロックパフォーマスを見せてくれた。その来日の際に急遽、マネージャーのポール・マクギネス氏のインタビューが実現。5人目のU2、ロック史に残る大立者が語るU2の真実をお届けする。

U2のセットリストは半分が最近の新しい曲でライブが成功している

マクギネス:今日はもう、どんなことでも私に訊いてください。

―― 現代最高のロック・バンドのヒストリーを語る際に必ずお名前が出てくるポールさんにお会いできて、大変光栄に思っています。

マクギネス:今度のU2の本(『U2 by U2』)は見てもらえましたか。今度、日本語版も出たんですけど、これはU2のヒストリー・ブックで、メンバーと私を中心としたスタッフの発言集になっているんですよ。これが私だよ(と言って、メンバーと一緒に写っている若い頃の自分の写真を指す)。この本は先日のベストアルバム『ザ・ベスト・オブU2 18シングルズ』やDVDと同じビジュアルで統一して、キャンペーンを張っているんです。

―― それはポールさんの発案なんですか。

マクギネス:いや、私は批評家という立場ですね。U2は最初期である80年の1stシングルのスリーブの頃から、ずっと同じデザイナーと仕事をしているんです。ダブリンのスティーヴ・エイヴリルという男で、彼の力強いデザインやビジュアルはバンドの根本的なところとつながっています。最近はレコード会社に任せたあげくに文句を言う人が多いけれど、そこのところに関してU2は徹底しているからね。アントン・コービン(著名なロック・カメラマン)に撮ってもらうのも、彼がそうしたところに見合った人だからですよ。

 

ポール・マクギネス氏(U2マネージャー)
Paul McGuinness

 1951年、ドイツの軍病院にて生まれる(父親がイギリス空軍RAFの基地に在籍していたため)。のちにアイルランドに移住。テレビや映画のプロデュースを手がけながら、地元であるダブリンのバンド界の総本締め的存在として君臨。1978年にU2に出会い、マネジメントを引き受ける。そのパートナーシップは現在も続いており、<5人目のメンバー>として認められている。この間では業務面でプリテンダーズやPJハーヴェイといったアーティストと関わったり、また90年代半ばにはアイリッシュ・ダンス公演の『リバーダンス』もサポートしている。2000年にアイルランド・ダブリンの名誉市民権を、2005年にはアムネスティ・インターナショナルの<良心の大使>賞を、いずれもバンドとともに授与された。マネジメント会社であるPrinciple Managementを運営。



『ザ・ベスト・オブU2 18シングルズ』
CD+DVD限定盤:UICI-9015 3500円(税込)
通常盤:UICI-1051 2500円(税込)
11月28日発売
<曲目> ?アイ・ウィル・フォロー ?ビューティフル・デイ ?アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー(終りなき旅) ?プライド ?ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー ?ヴァーティゴ ?ニュー・イヤーズ・デイ ?ミステリアス・ウェイズ ?スタック・イン・ア・モーメント ?ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム(約束の地)?スウィーテスト・シング ?サンデイ・ブラッディ・サンデイ ?ワン ?ディザイアー ?ウォーク・オン ?エレヴェイション ?サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン ?セインツ・アー・カミング(U2 & グリーン・デイ) ?ウィンドウ・イン・ザ・スカイズ
y UMK社:03(6406)3030


―― さて、今回の来日は、元は4月に予定されていたコンサートが延期された振り替え公演なのですが、内容自体は昨年から続いている<ヴァーティゴ・ツアー>の延長線上にあると思っていいのでしょうか。

マクギネス:そう、これは<ヴァーティゴ・ツアー>の最後ですね。このツアー自体は最終地のハワイまで全世界で121公演を行い、全部で450万人を動員しています。

―― ただ、この秋にベストアルバムが予定されていたことを思うと、当初の予定からはズレてしまったわけですよね。

マクギネス:そうだね。だけど横浜の野外スタジアムで予定していたショーがさいたまのインドア公演に変更になったのは、私としては良かったかなと思っているよ(笑)。PAを上から吊るすか下に置くかという技術面での違いはあるけれど、おかげで今回のライブはアリーナ公演とは思えない内容になっているからね。スタジアム級のセットをアリーナに持ち込んだのは日本だけで、すごく特別なものになっているんだ。

―― U2はライブを大切にしているバンドだと思うのですが、アルバムを出してツアーをするサイクルの中で留意しているのはどんなことですか。

マクギネス:そう、U2はどちらの……つまりレコーディング・アーティストとしてもライブ・パフォーマーとしても偉大なキャリアをもっていて、そのどちらも重要なことです。初期はライブ・アクトとしての割合のほうが大きかったけれどね。あるアーティストはツアーをすることに対して反発するけど、ライブはいいものですよ。私たちはツアーをするのが好きなんです。それはセールスのためにもね。私たちは世界中のどの国でも成功したい。そのためにはライブでもレコード・セールスでも成功すること、このどちらとも大事なんです。
 そしてはっきりしているのは、バンドのヒストリーにおいて、キャリアのすべてがつながっているということです。そのなかでは大掛かりに見せるプロダクションが大事なんですよ。U2のライブは<ZOO TVツアー>(92〜93年)から大規模になっていったけど、これは不可欠なことだと思う。あのときは日本でもたくさんのテクノロジーを使って、ショーをやったけれどね。それはとても面白いものですよ。いわば、観客との駆け引きみたいなものでね。チケット代も高くなってるんだけど、ショーは毎回、どの国でも、観客の記憶に残るものをやろうと思っている。次にライブをやったときもみんなにまた来てもらえるような、すごく大きなショーをね。

―― そのチケット代の話ですが、現在、世界的に高騰する傾向にあります。このことについてはどうお考えですか。

マクギネス:確かにそれは世界的に当たり前になってきていますね。ただそれは、今やレコードや音楽の値段は下がりつつあるのに、その一方で、いいライブを見たいという欲求は高まっているということだ思う。これはとてもいい流れだと思います。U2は、いい音楽を作って、それをビジネスとして成り立たせることを信じています。私たちは商業的に成功することに誇りを持っているんです。そうでなければクリエイティヴィティにとって悲しいことですからね。

―― ところでポールさんはU2のマネージメントを28年間もずっとやっていらっしゃるんですよね。

マクギネス:たぶん30年ってところだけど(笑)……。78年に始めたから、そう、28年だね。

―― その間に音楽業界も大きく変わったと思いますが、当時と今とではどんなところがいちばん違うと思いますか。

マクギネス:そうだね、まさに今はワールドワイドで売り上げをあげようとする時代になっているけれども、いちばん大きく違うのは、人々が音楽を聴くのにあたり、過去になかったほど我々の財産ともいうべき音楽が勝手に扱われていることだね。私は日本の状況まではよく知らないけれども、ある調査によると、アメリカのMP3プレーヤーの使用においては、50%が違法ダウンロードしたもので、85%がCDからリップされたものだということがわかっている。そこでは誰にお金が行くべきかをクリアにしていくべきだと思う。インターネットのプロバイダーが儲かる世の中になっているんだ。将来的には彼らがちゃんとシェアするようにしてもらわないとね。
 ダウンロードの問題は音楽にも映画にも関わるものだよね。私は、将来を悲観しているわけじゃない。ただ、ちゃんとシェアすることを考えないと損する人々がたくさん出てくるということなんです。もし調べようと思えば、例えばみんなのiPodにどこまで違法のものが入っているのかわかる。情報は分かち合うべきだよ。

―― ところでU2は社会的な行動への意識の高さが特徴的なバンドですが、その面と音楽ビジネスとのバランスで苦慮されることは多いんじゃないですか。

マクギネス:それを可能にしているのはボノのものすごいエネルギーによるところが大きいね。彼は人が1週間かかるようなことを1日でやってのけるんだ(笑)。だから彼は活動家として君臨しているんですよ。そのおかげで2つのキャリアが成立できているんだからね。彼は言ったよ、「こちらにはスポットライトが当たっている。でも僕たちはそれを当てる方向を指示できるんだ」とね。彼はU2がセレブリティであるということを、貧しい人たちを助けるために有効利用しているんだ。

―― ただ、うがった見方をすれば、そのエネルギーをもっと音楽に向ければ、ビジネスでもさらに成功したんじゃないかという気もしますが。

マクギネス:それは彼にはムリだと思うよ(笑)。それに彼は、自分の活動はU2のメンバーのサポートがあるからやっていられるとよく認識しているからね。まあ時間に遅れるとか、そういう小さな問題は生じるんだけれども(笑)、みんな、いつも最後には忘れているよ。そしてボノはそうした活動からインスピレーションを受けて、ちゃんと曲作りにつなげているんだよね。

―― ボノはあるインタビューでこう発言しています。「マネージャーのポールに『アーティストの務めは世界の問題を描いて、それをオーディエンスに提示することだ。それを解決することじゃない』と言われたよ」って。

マクギネス:ああ、それは僕がずっと言いつづけていることだよ。ボノに対しては、もう何年も前からね(笑)。でも彼は全然聞く耳を持たないんだ。すぐに解決に走っている(笑)。ただ、私はアドバイスをするけれども、彼がそれを受ける必要はないからね。

―― ということは、マネージャーとしてやりづらい相手ではないのですか。

マクギネス:ノーノー(笑)、そんなことはないよ。常にやり合いはするけどね。うれしいことに、ボノは言ってくれたよ。「バンドは4人だけど、話し合いの場には5人いる」ってね。

メジャーレーベルと何かを築くことに喜びがある

―― U2はこのところオリジナルアルバムとベストアルバムを2年に1枚のペースで出していますが、それもポールさんなりの戦略なのでしょうか。

マクギネス:いや、それはあくまでクリエイティヴなところから出てきたものだと思いますね。彼らはこの仕事を楽しんでいる。以前よりいい音楽を作っていると思うし、よく働く。そしてその行為を愛しているんです。彼らの野心はずっと変わらないと思う。もしここにメンバーがいたら、君にこう言うだろうな。「自分たちのオーディエンスに対する使命は、クソみたいな音楽を作らないことだ」ってね(笑)。

―― U2のメンバーもこれから50代に近づいていきますが、今後バンドはどんなふうに変わっていくと思いますか。

マクギネス:そうだね、私もほかにやりたいことがないから、明日からも音楽を作りつづけていくのはわかっているんだけど。そうするとローリング・ストーンズのようになっていくのかな。でも彼らとの大きな違いは、私たちはヒット・レコードをまだまだ出しつづけていることです。例えばストーンズのショーでは新曲が1曲ぐらいしかないけれども、今夜のU2のショーでは21〜22曲のうちの半分が最近の新しい曲で、それでライブが成功している。それはとても大事なことだと思うよ。でも私はストーンズの大ファンなんだけどね。まあ彼らは我々よりも20歳以上も年上なわけだし(笑)。

―― U2の次のアルバムは、先だってのグリーン・デイとのコラボレーションの延長で、リック・ルービンのプロデュースになるのですか。

マクギネス:うん、そうなると思うよ。

―― その制作作業は今、どのぐらい進んでいるのでしょうか。

マクギネス:いや、その現状については私は本当に知らないんだ。彼らは常に音楽を作っているから、新しいマテリアルがどの程度になっているのかはね。グレイトなものになるとは思うけれども。

―― このペースでいくと、2008年の秋ぐらいに次のアルバムが出ると思っていていいのですか。

マクギネス:そうだね、やっぱり今ぐらいの季節にリリースするのがいちばんいいから、そうなるんじゃないかな。

―― 最後に、日本の音楽産業に携わる人たちにロック界で最も有名なマネージャーであるポールさんからアドバイス及びメッセージをいただきたいのですが。

マクギネス:マネージャーとしては「いいクライアントを選べ」ってことだね(笑)。そして私はメジャーのレコード会社と仕事をすることが好きだということ。今やインディーも元気だし、それにインターネットもあるから、音楽ビジネスのやり方はいろいろあるけど、個人的にはメジャーのやり方が性にあっているね。何よりメジャーの会社だと国際的な展開ができるということ。時代遅れだと言われるかもしれないけど、私はそのことが好きなんだ。なぜなら大きな会社には専門家がたくさんいる。私たちはそういうスタッフと何かを築くことに、大きな喜びを感じるんだよ。

―― わかりました。メジャー会社のみなさんにとって、大きな励みになる言葉だと思います。

マクギネス:そうですか。ただ、コントロールは私にさせてほしいね。そこは譲らないよ(笑)。

(インタビュー・文/青木 優)




タグ

    オリコントピックス

    あなたにおすすめの記事

     を検索