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平原綾香、23年の歌手人生をオーケストラとともに 初のフルオーケストラ作品『my Orchestra!』【インタビュー】

 2003年にホルストの組曲『惑星』の「木星」に日本語詞をつけた「Jupiter」で鮮烈なデビューを飾った平原綾香。デビュー以来、歌手としてはもちろん、ミュージカル俳優、声優など多方面で活躍し、国内外のオーケストラとも数多く共演してきた彼女が、初のフルオーケストラ・アルバム『my Orchestra!』を9月9日にリリースした。23年間、大切に歌い育ててきた楽曲の数々を、フルオーケストラとともに新たな形でよみがえらせた。

初のフルオーケストラ・アルバム『my Orchestra!』をリリースした平原綾香

初のフルオーケストラ・アルバム『my Orchestra!』をリリースした平原綾香

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■23年ぶりに向き合った「Jupiter」 歌手人生のすべてを込めて

 平原綾香の初めてのフルオーケストラ・アルバム『my Orchestra!』。レコーディングは、母校・洗足学園音楽大学の前田ホールで行われた。

 「学生時代には定期演奏会や試験、卒業式などでそのステージに立っていました。デビュー後も『Jupiter』のミュージックビデオを撮影するなど、節目ごとに訪れていた思い出深い場所です」(平原綾香、以下同)

 フルオーケストラ・アルバムは、2年前に行った東京フィルハーモニー交響楽団とのコラボレーションコンサートがきっかけとなった。

 「昔からオーケストラの音が大好きで、いつかオーケストラと一緒にレコーディングできたらいいなという夢がずっとありました。レコーディングは2日間で11曲という、とてもハードなスケジュール。東フィルをはじめ、総指揮の渡辺俊幸さん、ドラムの則竹裕之さん、ピアノの大貫祐一郎さんと、すご腕のミュージシャンたちが集まってくださったおかげで、厳しい日程にもかかわらず宝物のような作品ができあがりました」

 1曲目は、デビュー曲を23年ぶりに再レコーディングした「Jupiter 2026」だ。

 「長年コンサートなどで歌い続けてきた曲だけに、レコーディングするときには最も怖さを感じました。成長した現在の自分を表現できるかもしれないけれど、一方で、2003年から「Jupiter」を聴いてくださっている方は、当時の「Jupiter」を求めているんじゃないかなという懸念があったんです。私も好きなアーティストの曲は『CDと同じように歌ってほしい』と思うことがありますから」

 そこで改めて聴き返したのが、19歳のときに自身が歌った「Jupiter」だった。

 「歌手としてデビューしたころは歌い方すらわからず、苦悩の日々を過ごしていました。そんなとき、私が相談したのは、音楽の師である父(サックス奏者の平原まことさん/2021年逝去)です。『どうやって歌えばいいのかわからない』と父に問うたら、『サックスだったらこうやって吹くかな』と答えて吹いてくれて、そのとおりにやったら歌えるようになったんです。こうして私は、ボイストレーニングに頼らず、父の音、そして父に習ってずっと吹いてきたサックスの奏法を手がかりにしながら、憧れの歌手たちの歌声も研究して、自分なりの歌唱法を探し続けてきました。私にとってはサックスが歌の先生なんですよね」

 そうして自ら模索し、身につけてきたものは、強みになるはずだと語る。

 「デビューしてからの23年間を振り返ると、試練ばかりでした。壁を一つ越えても、また次の壁がやってきて。サックスを吹いてきた私にとっては、歌うこと自体初めてでしたから。でも、 『不安だな』と思うことほど、本当は自分がやりたいことなんですよね。だから、不安だと思ったものほど引き受けるようにしたんです。ミュージカルやドラマもそう。そのどんな瞬間にも『Jupiter』がそばにいたように思います。」

 その思いは、「Jupiter 2026」というタイトルにも表れている。

 「23年間の思い、そしてまた『Jupiter』は私の作品の中でも特に多くの皆さんに聴かれ続けてきた曲なので、『Jupiter』だけ “2026”とつけました。ほかの曲も全部レコーディングしなおしたので、11曲すべてに“2026”とつけてもいいのですが、『Jupiter』は少し特別なものにしたくて」

■歌い続けてきた曲、新たに命を吹き込んだ曲 それぞれに刻まれた記憶

平原綾香『my Orchestra!』ジャケット

平原綾香『my Orchestra!』ジャケット

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 15年ぶりにレコーディングした「おひさま〜大切なあなたへ」にも、忘れられない記憶が刻まれている。オリジナルを録音したのは、東日本大震災からわずか5日後。電力事情にも配慮しながら、「生きていること、歌えることの喜び」をかみしめて歌った。その後は被災地にも足を運び、歌を届けてきたという。

 「絶望の中で音楽を聴いてくださっていた方たちの顔が、今も忘れられません。復興していく場所がある一方で、なかなか復興に時間がかかる場所もあって、それを見届けるのがつらいこともありました。そんなときに歌った思い出の曲です。『Jupiter』と同じように毎年歌ってきましたが、今回フルオーケストラでレコーディングするのは初めて。作曲をしてくださった渡辺俊幸さんのセルフアレンジが本当に素晴らしくて、以前共演したオーケストラのコンサートマスターが、演奏しながら涙を流していたこともありました。音楽の力を改めて感じさせてくれる曲ですね」

 また、久石譲との共演をきっかけにレコーディングした「いのちの名前」と、久石の武道館公演で披露して以来、国内外から音源化を望む声が寄せられていた「ふたたび」も、フルオーケストラによる新たなアレンジでよみがえった。とりわけ「ふたたび」は、平原にとって思い入れの深い一曲だ。

 「『いのちの名前』は高校生のころから大好きな曲で、久石さんと共演する番組で『何をカバーしたい?』と聞かれ、真っ先にリクエストした曲です。その後、久石さんの武道館コンサートで『いのちの名前』と一緒に歌わせていただいたのが『ふたたび』。当時はまだ歌詞がなくて、私のためにスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーの娘さんの麻実子さんが詞を書いてくださり、久石さんの娘さんの麻衣さんが仮歌を録ってくださったんです。そのときの武道館コンサートは何百人という、それこそ“フルフルフルフルフルオケ”くらいの(笑)大編成で歌いました。オーケストラで『ふたたび』を歌ったのはその武道館公演だけだったので、今回音源にできたことがとてもうれしいです」

■亡き父のサックスで追い求めた“父の音” 「虹の向こうへ」に込めた思い

 そして、平原の音楽の原点であるサックスと、父とのつながりを色濃く感じさせるのが「虹の向こうへ」だ。今回、歌だけでなくサックスも自ら演奏。その楽器は、亡き父・平原まことさんが愛用していたものだ。

 「父が生きていたら、父に演奏を頼んでいたと思います。でも、もう頼れる人がいない。とても勇気が必要だったけれど、父の音を追い求めながらサックスを吹きました。小さいころは『サックスの音が父の声』だと思っていたんです。楽器の音色と人の声に隔たりを感じずに育ったせいなのか、歌ったあとにサックスを吹いて、吹いたあとにすぐ歌うことにも、あまり違和感がなくて。レコーディングするときは『これは父の音じゃない』『あ、これはちょっと似てる』って、毎回父の音を追い求めましたね」

 さらにボーナストラック「夢のあとに」では、一人で何声ものパートを重ね、“声のオーケストラ”にも挑んだ。松任谷由実がフォーレの名曲に日本語の意訳詞をつけ、松任谷正隆がアレンジを担当している。

 「いただいた走り書きの譜面とデモ音源が食い違っていて、耳コピしなければいけなかったのは想定外でしたが、いい思い出です(笑)。正隆さんが『ほかの歌手だったら泣いて帰っちゃうかもね』とおっしゃってました(笑)。私は細かい作業が好きなので逆にワクワクしました。しかも、一音、二音と重ねているときは、音がぶつかって不安になるようなハーモニーなんですが、三音、四音と入っていくと、『なんて美しいハーモニーなの!』となり、正隆さんはやっぱり天才だなって度肝を抜かされました」

 ほかにも、意味を持たない即興の言葉を連ねた“アーヤ語”で歌い、ボイスパーカッションも披露するなど楽器奏者としての彼女の感覚が際立つ「アランフェス協奏曲〜Spain」や、今年プロ転向から20 年の節目となるプロフィギュアスケーター・荒川静香さんのために書き下ろした新曲「Friends on Ice」など、ボーナストラックを含めて全12曲が収録されている。

 本作を携えて、10月からは各地のオーケストラとともにコンサートツアーを開催する。「オーケストラの音を聴くと、細胞が元気になるような感覚があって、とにかく幸せになるんです」と語る彼女。今度は各地を巡りながら、その日、その場所だけの音楽を紡いでいく。23年間歌い育ててきた楽曲たちが、オーケストラとの出会いによってどんな新たな表情を見せるのか、楽しみだ。

取材・文:森中要子

<作品情報>
■平原綾香『my Orchestra!』(マイオーケストラ!)
発売日:2026年9月9日

【通常盤】CD
品番:VICL-66160/価格:3,850円(税込)

【VICTOR ONLINE STORE 限定セット】CD+PHOTO BOOK
品番:VOSF-16237/価格:7,150円(税込)
PHOTO BOOK:The Making of「my Orchestra!」 Special PHOTOBOOK(全40P)

収録内容(共通)
01. Jupiter 2026
02. 明日
03. おひさま〜大切なあなたへ
04. いのちの名前
05. ふたたび
06. アランフェス協奏曲〜Spain
07. 虹の向こうへ
08. キミヘ
09. からっぽのハート
10. Friends on Ice
11. 虹の予感
Bonus Track 夢のあとに

■『【LIVE】平原綾香 Concert Tour 2026 〜 my Orchestra! 〜』
10月3日(土) 埼玉・所沢市民文化センター ミューズ アークホール/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
10月11日(日)・12日(月/祝) 東京・Bunkamura オーチャードホール/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
10月24日(土) 愛知・愛知県芸術劇場 コンサートホール/演奏:セントラル愛知交響楽団
11月8日(日) 東京・東京エレクトロンホール宮城/演奏:仙台フィルハーモニー管弦楽団
11月14日(土) 兵庫・神戸国際会館 こくさいホール/演奏:大阪交響楽団
11月15日(日) 大阪・フェスティバルホール/演奏:大阪交響楽団
11月23日(月・祝) 東京・洗足学園 前田ホール/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ※追加公演

指揮:渡辺俊幸
ドラム:則竹裕之
ピアノ:大貫祐一郎
ギター&チェロ:伊藤ハルトシ

詳細はオフィシャルHP(https://www.camp-a-ya.com/contents/1054220)を参照
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