2024年、第67回グラミー賞で主要全4部門を含む6部門にノミネートされ、「最優秀ポップ・パフォーマンス」と「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム」の2部門を受賞したことで一躍トップ・アーティストの仲間入りを果たしたサブリナ・カーペンター。新時代のポップ・アイコンとして、今、世界中で熱視線を集めている彼女だが、実はそのキャリアは長く、現在26歳にして、今年でデビュー・アルバムのリリースから10周年を迎える。
さらにさかのぼれば、2011年、11歳の時に子役としてテレビドラマに出演し、2014年にはディズニー・チャンネルのドラマ『ガール・ミーツ・ワールド』で注目の的に。それを受けて“待望のアーティスト・デビュー”を果たしつつ、その後も音楽活動のみならず、NetflixやDisney+の映画作品、ブロードウェイのミュージカルに加え、ブランドのアンバサダーに就任するなどさまざまな活動を展開する、エンターテイメント界の“若き熟練アーティスト”なのだ。“令和のお騒がせクイーン”とも称されるサブリナ・カーペンターの魅力について、ユニバーサル ミュージックで彼女を担当しているレーベルヘッドの川崎たみ子氏と、マーケティング部の阿佐美悠一氏に話を聞いた。
■ウィットに富んだ表現こそ、サブリナの唯一無二な魅力
「子役時代から高い支持を得ており、アーティスト・デビューしてからも熱量の高いコア・ファンがたくさんいることで知られています。ただ、最初の6〜7年はヒット曲に恵まれませんでした。それが2021年、ハリウッド・レコードからアイランド・レコードにレーベル移籍し、2023年にアメリカで『Nonsense』が大ヒットすると、そこからは新曲を出せば必ずヒットすると言うアーティストに生まれ変わったと言えるような状況で、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いそののままに最新作『Man’s Best Friend』を発表しました(国内では10月31日にCDリリース)。ちなみに、デビュー以降5回ほど来日しており、日本が大好きなアーティストで、前回、2023年の来日時も、何気ない買い物動画がSNSでバズったりもしました」(ユニバーサルインターナショナル レーベルヘッド 川崎たみ子氏)
「『Nonsense』がデジタル中心のヒットだったこともあり、当初はZ世代、10代の女性がファン層の中心でした。それが、シングル『Espresso』がSpotifyグローバルで2024年に2番目にたくさん聴かれた楽曲になるという特大ヒットとなり、さらに同曲収録のアルバム『Short n’ Sweet』がグラミー賞を受賞し、音楽業界の玄人からも認められたことで、今や日本を含め、世界中で幅広い世代に聴かれるようになりました。とにかく360度、すべてに渡って彼女は自分の魅力を最大限に理解し、やりたいことを100%体現できる素養を持っています。自分が信じたものをするという姿勢も音楽性も、ヒットする前から変わっていません。だからこそ、爆発的なヒットにも自分自身が飲み込まれることなく、さらにファンを増やし続けられているのだと思います」(ユニバーサルインターナショナル マーケティング部 阿佐美悠一氏)
この1〜2年で急速に名前が知れ渡ったことから、彼女に対して「新進気鋭の新人」という印象を持つ人が多いかもしれない。しかし実際は、先述したように長いキャリアを持ち、パフォーマー、ソングライターとしてある意味で下積み的な時期も経験し、そこでしっかりとした土台を確立させたことで、“ネクスト・テイラー・スウィフト”“ネクスト・アリアナ・グランデ”“ネクスト・レディー・ガガ”と呼ばれるまでに才能を一気に花開かせたアーティストなのだ。
ところが、これほどまでの“金の卵”を手がけるユニバーサル ミュージックは、そんな彼女を「売りたいのに、思うような宣伝ができない」という悩みを抱えている。なぜなのか。それは、サブリナ・カーペンターのクリエイティブ/表現があまりに過激だからだ。
とにかく話題に事欠かないサブリナ・カーペンター。これまでも、センシュアルな歌詞やライブ・パフォーマンスが話題となり、SNSでも幾度となく賛否の議論が沸騰。最新作『Man’s Best Friend』に関しても、ジャケット写真が公開されるとすぐさま、アメリカでは「女性蔑視」だとして物議を醸した。阿佐美氏によれば、日本においても、ジャケット写真をクリエイティブに使用した交通広告の掲載が叶わなかったことをはじめ、シングル楽曲のミュージックビデオを地上波テレビで紹介してもらうのもそう簡単ではなかった印象だったという。アーティストの表現をできるだけそのまま日本のリスナーに伝えたいと思いつつも、サブリナの楽曲には、一企業として公式には発信しづらい表現が多々あるというジレンマ。
何ともお騒がせな“令和のクイーン”だが、「そうした歌詞やパフォーマンスに込めた皮肉、ウィットに富んだ表現こそ、サブリナの唯一無二な魅力」だと、阿佐美氏と川崎氏は声を揃える。
「過激な言動がフォーカスされがちですが、サブリナ自身、意図的にヒール役を演じたり、炎上させようとしているのではなく、「綺麗ごとじゃなく現実はこうなんだよ」というメッセージを、あくまでもジョークとして発信しているんです。だからこそ、核心を突いている。その姿勢はヒットする前から一貫していて、そこが世界中で受けている理由だと思いますし、今、それができるアーティストは彼女以外にはいないと思います」(阿佐美氏)
「彼女のファッション、ステージでのウィットに富んだ皮肉の言葉、かわいい曲に見せかけて実は過激にセクシーな歌詞で、ファンからすると『次はどういうことを言うんだろう』という目が離せない存在となっています。“小悪魔セクシー”的に、バービー人形のようなかわいいルックスと、爆弾発言をしたり毒を吐いたりするギャップが若い世代に受けている。恋愛のことを赤裸々に書いている歌詞も、海外アーティストにとっては当たり前のことで、そのリアルさが若者の共感を呼んでいるのだと思います」(川崎氏)
■重要なのは、ウィットな表現を「日本語でどう伝えるか」
では、サブリナ・カーペンターが発信するジョーク、風刺、皮肉とは一体どういったものなのか。たとえば、最新作のタイトル『Man’s Best Friend』。文字通りに解釈すれば「男性の親友」となるが、英語では「人類の親友」、すなわち「犬」という意味があり、それゆえジャケット写真は、サブリナがペットのようなポーズをとっている描写となっている(しかも裏ジャケットには、ちゃんと犬の写真が使われている)。
また、前作『Short n’ Sweet』というタイトルも、直訳すると「小さくてかわいい」となり、小柄なサブリナが自分自身のことを言っているかのようにも受け取れるが、肝心の楽曲を聴いてみると、「小さくてかわいいだけじゃないからね」といったような真逆の内容だということがわかる。
つまり、自身が世の中からそう見られているということを完全に自覚したうえで、それを逆手に取ったカウンターとしての表現でありつつ、それがシリアスなものとなりすぎないように、あくまでもポップな文脈としてエンタテインメントに昇華させている点が、往年のマリリン・モンローやマドンナと似て非なるところと言えるだろう。ただ、これらのジョークや皮肉は、英語と日本語という言語の壁に加えて、日本ではオブラートに包みがちな物事をあまりにストレートに表現しすぎるといった文化的な違いもあり、日本人には直感的にはなかなか理解しづらいことも、また事実だ。
そこで重要となるのが、サブリナのウィットな表現を「日本語でどう伝えるか」という点。『Man’s Best Friend』の国内盤CDでは、帯に「私ってあなたの親友?」というキャッチコピーを付け、「親友」の部分に「ペット」というルビを振るという細かい工夫を加えることで、これがサブリナ流の皮肉であることを伝えている。
「あとはぜひ、歌詞の日本語対訳を読んでいただけたらと思っています。単に過激で赤裸々なだけでなく、ちょっと面白い、クスッと笑えるような、一歩踏み込んだところまで伝えることができたらいいなと常々考えています。ヒットした『Espresso』も、実は刺激的な歌詞が歌われています。でも、そこまでは伝えきれていないようにも感じています。現状は、世界的にヒットしたことで、彼女の名前や曲を聴いたことがあるという方は増えたと思いますが、プロモーションの次のフェーズとしては、表面的な部分だけでなく、そうした深い部分を伝えることで、より本人の魅力を広げていきたいと考えています」(阿佐美氏)
■エンタテインメントを知り尽くし、クレバーさを兼ね備えたサブリナならではの作品
ここまで音楽面以外の要素ばかりを取り上げてしまったが、最新作『Man’s Best Friend』は音楽的にもとても素晴らしく、ポップ・シンガーとしての魅力は当然のことながら、特にアルバムの中盤においてはポップな側面とはまたひと味もふた味も違う、彼女の音楽性の幅広さに魅了される。こうした楽曲の良さをベースとしながら、SNSへの投稿や、ミュージックビデオの描写、歌詞の対訳を読んでいくと、どんどん彼女のことを知りたくなるし、なぜサブリナがこのような歌詞を書くようになったのかといった疑問も湧き、掘れば掘るほど魅力があふれてくる。深みを知れば、より深く突き刺さるクリエイティブ。一度好きになったら、すぐさま“沼落ち”してしまう、そんなタイプのアーティストだと言えるだろう。
「しかも、忘れられがちですけど、ものすごく歌が上手くて、ステージングも素晴らしい。ニューヨークで開催された『MTV Video Music Awards』でのサブリナのパフォーマンスを実際に観ましたが、他のアーティストが普通に歌う中で、彼女だけミュージカル風のステージを繰り広げて、誰よりも大きな歓声を集めていました。おそらく彼女自身の意志がかなり取り入れられたステージだったと思いますが、それもショービズの世界で育ってきた彼女のキャリアゆえのものだったと思いますし、彼女の強みとプロフェッショナリズムを改めて痛感しました。もちろん、楽曲自体も世界随一のクオリティで、どこを切り取ってもトップレベルのスター。日本でもさらに知名度を上げてスーパースターになってもらいたいというのが一番の目標です」(川崎氏)
「直近の目標は、やっぱり来日公演の実現です。ライブを観ていただいて、歌やパフォーマンス、そしてサブリナの人となりをわかっていただきたいというのが、今、一番注力しているところです。そして、普段はあまり洋楽を聴かないという邦楽リスナー、K-POPリスナーにも接点を広げていきたい。彼女の言動が批判されることもありますが、でもあえてそれをメッセージとして提言し、ある意味、社会の先頭に立って現在進行形で革命を起こしているアーティストの1人ですから、そんな彼女を本当に国民的なスターにしていきたいです」(阿佐美氏)
人はきらびやかな光の当たる部分だけに目が奪われがちだが、一見すると派手に見えるサブリナ・カーペンターのパフォーマンスの裏側には、トランスジェンダーの人たちへのメッセージが込められていたり、影響を受けたミュージシャンたちへのオマージュが込められていたりと、実に綿密に、多層な表現が内包されている。エンタテインメントを知り尽くし、クレバーさを兼ね備えた彼女だからこその楽曲、そしてライブは、今、世界中を魅了している。
最近、国内メディアでサブリナ・カーペンターのゴシップ記事が話題を集めたが、日本のメディアが日本語で記事を発信したのは初めてのことであり(それまでは海外での記事を翻訳して紹介されていた)、それはすなわち、日本でも彼女のことが知られつつある証拠でもある。そんなサブリナ・カーペンターがスーパースターとして6度目の来日公演を実現する日は、きっとそう遠いことではないだろう。
※川崎たみ子氏の「崎」は「たつさき」が正式表記
取材・文:布施雄一郎
<作品情報>
サブリナ・カーペンター 『マンズ・ベスト・フレンド | Man’s Best Friend』
国内盤CDリリース日:2025年10月31日
品番:UICL-1155/価格:3300円(税込)
歌詞・対訳付き
さらにさかのぼれば、2011年、11歳の時に子役としてテレビドラマに出演し、2014年にはディズニー・チャンネルのドラマ『ガール・ミーツ・ワールド』で注目の的に。それを受けて“待望のアーティスト・デビュー”を果たしつつ、その後も音楽活動のみならず、NetflixやDisney+の映画作品、ブロードウェイのミュージカルに加え、ブランドのアンバサダーに就任するなどさまざまな活動を展開する、エンターテイメント界の“若き熟練アーティスト”なのだ。“令和のお騒がせクイーン”とも称されるサブリナ・カーペンターの魅力について、ユニバーサル ミュージックで彼女を担当しているレーベルヘッドの川崎たみ子氏と、マーケティング部の阿佐美悠一氏に話を聞いた。
■ウィットに富んだ表現こそ、サブリナの唯一無二な魅力
「子役時代から高い支持を得ており、アーティスト・デビューしてからも熱量の高いコア・ファンがたくさんいることで知られています。ただ、最初の6〜7年はヒット曲に恵まれませんでした。それが2021年、ハリウッド・レコードからアイランド・レコードにレーベル移籍し、2023年にアメリカで『Nonsense』が大ヒットすると、そこからは新曲を出せば必ずヒットすると言うアーティストに生まれ変わったと言えるような状況で、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いそののままに最新作『Man’s Best Friend』を発表しました(国内では10月31日にCDリリース)。ちなみに、デビュー以降5回ほど来日しており、日本が大好きなアーティストで、前回、2023年の来日時も、何気ない買い物動画がSNSでバズったりもしました」(ユニバーサルインターナショナル レーベルヘッド 川崎たみ子氏)
この1〜2年で急速に名前が知れ渡ったことから、彼女に対して「新進気鋭の新人」という印象を持つ人が多いかもしれない。しかし実際は、先述したように長いキャリアを持ち、パフォーマー、ソングライターとしてある意味で下積み的な時期も経験し、そこでしっかりとした土台を確立させたことで、“ネクスト・テイラー・スウィフト”“ネクスト・アリアナ・グランデ”“ネクスト・レディー・ガガ”と呼ばれるまでに才能を一気に花開かせたアーティストなのだ。
ところが、これほどまでの“金の卵”を手がけるユニバーサル ミュージックは、そんな彼女を「売りたいのに、思うような宣伝ができない」という悩みを抱えている。なぜなのか。それは、サブリナ・カーペンターのクリエイティブ/表現があまりに過激だからだ。
とにかく話題に事欠かないサブリナ・カーペンター。これまでも、センシュアルな歌詞やライブ・パフォーマンスが話題となり、SNSでも幾度となく賛否の議論が沸騰。最新作『Man’s Best Friend』に関しても、ジャケット写真が公開されるとすぐさま、アメリカでは「女性蔑視」だとして物議を醸した。阿佐美氏によれば、日本においても、ジャケット写真をクリエイティブに使用した交通広告の掲載が叶わなかったことをはじめ、シングル楽曲のミュージックビデオを地上波テレビで紹介してもらうのもそう簡単ではなかった印象だったという。アーティストの表現をできるだけそのまま日本のリスナーに伝えたいと思いつつも、サブリナの楽曲には、一企業として公式には発信しづらい表現が多々あるというジレンマ。
何ともお騒がせな“令和のクイーン”だが、「そうした歌詞やパフォーマンスに込めた皮肉、ウィットに富んだ表現こそ、サブリナの唯一無二な魅力」だと、阿佐美氏と川崎氏は声を揃える。
「過激な言動がフォーカスされがちですが、サブリナ自身、意図的にヒール役を演じたり、炎上させようとしているのではなく、「綺麗ごとじゃなく現実はこうなんだよ」というメッセージを、あくまでもジョークとして発信しているんです。だからこそ、核心を突いている。その姿勢はヒットする前から一貫していて、そこが世界中で受けている理由だと思いますし、今、それができるアーティストは彼女以外にはいないと思います」(阿佐美氏)
「彼女のファッション、ステージでのウィットに富んだ皮肉の言葉、かわいい曲に見せかけて実は過激にセクシーな歌詞で、ファンからすると『次はどういうことを言うんだろう』という目が離せない存在となっています。“小悪魔セクシー”的に、バービー人形のようなかわいいルックスと、爆弾発言をしたり毒を吐いたりするギャップが若い世代に受けている。恋愛のことを赤裸々に書いている歌詞も、海外アーティストにとっては当たり前のことで、そのリアルさが若者の共感を呼んでいるのだと思います」(川崎氏)
■重要なのは、ウィットな表現を「日本語でどう伝えるか」
では、サブリナ・カーペンターが発信するジョーク、風刺、皮肉とは一体どういったものなのか。たとえば、最新作のタイトル『Man’s Best Friend』。文字通りに解釈すれば「男性の親友」となるが、英語では「人類の親友」、すなわち「犬」という意味があり、それゆえジャケット写真は、サブリナがペットのようなポーズをとっている描写となっている(しかも裏ジャケットには、ちゃんと犬の写真が使われている)。
また、前作『Short n’ Sweet』というタイトルも、直訳すると「小さくてかわいい」となり、小柄なサブリナが自分自身のことを言っているかのようにも受け取れるが、肝心の楽曲を聴いてみると、「小さくてかわいいだけじゃないからね」といったような真逆の内容だということがわかる。
つまり、自身が世の中からそう見られているということを完全に自覚したうえで、それを逆手に取ったカウンターとしての表現でありつつ、それがシリアスなものとなりすぎないように、あくまでもポップな文脈としてエンタテインメントに昇華させている点が、往年のマリリン・モンローやマドンナと似て非なるところと言えるだろう。ただ、これらのジョークや皮肉は、英語と日本語という言語の壁に加えて、日本ではオブラートに包みがちな物事をあまりにストレートに表現しすぎるといった文化的な違いもあり、日本人には直感的にはなかなか理解しづらいことも、また事実だ。
そこで重要となるのが、サブリナのウィットな表現を「日本語でどう伝えるか」という点。『Man’s Best Friend』の国内盤CDでは、帯に「私ってあなたの親友?」というキャッチコピーを付け、「親友」の部分に「ペット」というルビを振るという細かい工夫を加えることで、これがサブリナ流の皮肉であることを伝えている。
「あとはぜひ、歌詞の日本語対訳を読んでいただけたらと思っています。単に過激で赤裸々なだけでなく、ちょっと面白い、クスッと笑えるような、一歩踏み込んだところまで伝えることができたらいいなと常々考えています。ヒットした『Espresso』も、実は刺激的な歌詞が歌われています。でも、そこまでは伝えきれていないようにも感じています。現状は、世界的にヒットしたことで、彼女の名前や曲を聴いたことがあるという方は増えたと思いますが、プロモーションの次のフェーズとしては、表面的な部分だけでなく、そうした深い部分を伝えることで、より本人の魅力を広げていきたいと考えています」(阿佐美氏)
■エンタテインメントを知り尽くし、クレバーさを兼ね備えたサブリナならではの作品
ここまで音楽面以外の要素ばかりを取り上げてしまったが、最新作『Man’s Best Friend』は音楽的にもとても素晴らしく、ポップ・シンガーとしての魅力は当然のことながら、特にアルバムの中盤においてはポップな側面とはまたひと味もふた味も違う、彼女の音楽性の幅広さに魅了される。こうした楽曲の良さをベースとしながら、SNSへの投稿や、ミュージックビデオの描写、歌詞の対訳を読んでいくと、どんどん彼女のことを知りたくなるし、なぜサブリナがこのような歌詞を書くようになったのかといった疑問も湧き、掘れば掘るほど魅力があふれてくる。深みを知れば、より深く突き刺さるクリエイティブ。一度好きになったら、すぐさま“沼落ち”してしまう、そんなタイプのアーティストだと言えるだろう。
「しかも、忘れられがちですけど、ものすごく歌が上手くて、ステージングも素晴らしい。ニューヨークで開催された『MTV Video Music Awards』でのサブリナのパフォーマンスを実際に観ましたが、他のアーティストが普通に歌う中で、彼女だけミュージカル風のステージを繰り広げて、誰よりも大きな歓声を集めていました。おそらく彼女自身の意志がかなり取り入れられたステージだったと思いますが、それもショービズの世界で育ってきた彼女のキャリアゆえのものだったと思いますし、彼女の強みとプロフェッショナリズムを改めて痛感しました。もちろん、楽曲自体も世界随一のクオリティで、どこを切り取ってもトップレベルのスター。日本でもさらに知名度を上げてスーパースターになってもらいたいというのが一番の目標です」(川崎氏)
「直近の目標は、やっぱり来日公演の実現です。ライブを観ていただいて、歌やパフォーマンス、そしてサブリナの人となりをわかっていただきたいというのが、今、一番注力しているところです。そして、普段はあまり洋楽を聴かないという邦楽リスナー、K-POPリスナーにも接点を広げていきたい。彼女の言動が批判されることもありますが、でもあえてそれをメッセージとして提言し、ある意味、社会の先頭に立って現在進行形で革命を起こしているアーティストの1人ですから、そんな彼女を本当に国民的なスターにしていきたいです」(阿佐美氏)
人はきらびやかな光の当たる部分だけに目が奪われがちだが、一見すると派手に見えるサブリナ・カーペンターのパフォーマンスの裏側には、トランスジェンダーの人たちへのメッセージが込められていたり、影響を受けたミュージシャンたちへのオマージュが込められていたりと、実に綿密に、多層な表現が内包されている。エンタテインメントを知り尽くし、クレバーさを兼ね備えた彼女だからこその楽曲、そしてライブは、今、世界中を魅了している。
最近、国内メディアでサブリナ・カーペンターのゴシップ記事が話題を集めたが、日本のメディアが日本語で記事を発信したのは初めてのことであり(それまでは海外での記事を翻訳して紹介されていた)、それはすなわち、日本でも彼女のことが知られつつある証拠でもある。そんなサブリナ・カーペンターがスーパースターとして6度目の来日公演を実現する日は、きっとそう遠いことではないだろう。
※川崎たみ子氏の「崎」は「たつさき」が正式表記
取材・文:布施雄一郎
<作品情報>
サブリナ・カーペンター 『マンズ・ベスト・フレンド | Man’s Best Friend』
国内盤CDリリース日:2025年10月31日
品番:UICL-1155/価格:3300円(税込)
歌詞・対訳付き
2025/10/29



