再始動から6年目に入り、WANDS歴代最長の活動期間となった第5期。ボーカルとしても上原大史の活動期間は最長となり、4月からはWANDS史上最大となる全国ホールツアーも開催される。着実に注目度が上がっているなか、通算8枚目となるアルバム『TIME STEW』が3月26日に発売された。自分たちならではの音楽を追及する柴崎浩(G)と上原大史(Vo)に、新曲と第5期ver.が見事に溶け合った『TIME STEW』の制作エピソードと、間近に控えたツアーへの抱負を聞いた。
――まず、WANDS第5期にとって縁の深いTVアニメ『名探偵コナン』のエンディングテーマ曲として先行リリースされた「Shooting star」は、どのように作っていったのか教えてください。
【柴崎】自分のストック曲を聴き直していく中で、今やったらいい曲になりそうだなと感じて制作に取りかかりました。救いというか、上手くいかなくても希望が持てるようなイメージの曲で、上原の歌唱にもすごく合いそうに感じて。シャッフルなリズムも、WANDSの曲にはあまりないから、それもいいなと思って。
【上原】シンプルにいい曲だなって思いましたし、シャッフルも、気持ちよく、グルーヴがあるノリのよい曲という感覚で歌えました。ただみなさんがカラオケで歌う時には、サビのシンコペーション的な2拍3連符のリズム、これは難易度が高いと思いますよ。多分、ほとんどの人は違うタイミングで歌っちゃうんじゃないかな。あくまでも僕の予想ですけど(笑)。
【柴崎】そういうリズム感もそうだし、歌の節回しとか、今の上原が歌うと魅力的になりそうだなって想像が膨らんで。デモ自体はWANDS第5期の最初の頃からあったんですけど、当時は自分も周りもピンとこなくて。でも今、このタイミングで聴いて「これはやったほうがいい」と思ったんです。
――当時と今とで、どういう変化があったんでしょうか?
【柴崎】第5期としてのライブや制作の積み重ねもあるし、WANDSそのものに対する視点が昔と今とで変わったのかなって。今になって思えば、第5期をスタートさせた頃はもうちょっと保守的だったのかもしれません。でもある時期からはもう、今の第5期ならではの魅力を出していかないとつまんないよねって思うようになって。
【上原】歌に関しても、「WANDSだからどうこう」とか、WANDSの看板を背負う意識すら、もうないのかもしれません。ボーカリスト上原大史が、この曲をどうカッコよく、より良いものとして歌うのか。そういうフラットな向き合い方でしたね。
――歌詞に関しては、2人でイメージをすり合わせながら書いていったのですか?
【柴崎】いや、それはないですね。ただ、後半にボーカルフェイクを入れたいということだけを伝えて。「WE ALL NEED LOVE」もそうですね。「Shooting star」は、デモの段階でフェイクの基本となるメロディをシンセで入れておいて。“Shooting star”っていう言葉がハマるようなメロディにはしていたんですけど、それは伝えずに。そしたらちゃんと、そういう歌詞になっていて「よかった」って(笑)。
【上原】知らなかった。たまたまですけど、よかったです(笑)。
【柴崎】しかもリフレインを2回繰り返す時に、ちゃんと2回目は変化があって、さらにボーカルフェイクがついていたりして、めちゃくちゃいいなと思って。いつも、イメージを言ったほうがいいのか悩むんですけど、でも僕が「ここはこの言葉」って伝えてしまうと、上原がもっといい歌詞を書いてくれるかもしれない可能性をなくしてしまう怖さもあって。それで言わないんですけど、必ずいい歌詞が返ってくるので。
――以心伝心の作詞作業なんですね。そうやって生まれた2コーラス目のAメロの歌詞は、とても心に響きました。
【上原】ここはいろんな含みがあるんですよ。シンプルに応援ソングでもあるし、自分の背中を押す曲というか、自分に言い聞かせるようなニュアンスもあったり。あと“WANDS”って英単語には「魔法の杖」っていう意味があって、WANDS第5期をやるうえで自分が感じてきたことも随所に散りばめられていて。だから本当に今だからこそ書けた歌詞だし、第5期を始めた最初の1、2年目の頃には100%出てこなかった言葉だと思います。この5年間で、それまでに経験したことがないような感情も味わったし、でもそれって多分みなさんも人生の中で味わうことだったりすると思うんです。そうしたものとの向き合い方の答えが、自分の中で何となく見えてきて。その心境を今、みんなに向けて歌う応援歌でもありつつ、世の中に対する虚しさみたいなものも、ちょっと入っていたりして。
――その「虚しさ」とは?
【上原】どうしようもないことって絶対にあって、それを嘆きつつも、でも嘆いたところで何も解決しなくて、それでも幸せに生きていきたいっていう気持ちがあって。人の一生って、長いようで本当に短い。地球規模の話をすれば、本当に一瞬の儚いもの。だからこそ、その一瞬をどう生きるのかっていう感情を散りばめて。だから、これまでの自分の人生と、WANDS第5期での5年間の経験がこの歌詞を書かせてくれたと感じています。
【柴崎】そういう上原の言葉が乗ったことで曲の方向性が固まって、本当にいい曲になったなって思っていて。最後のフレーズのあたりとか泣きそうになったし。
【上原】ああ、それはうれしいです。
【柴崎】泣かないんだけどね(笑)、でも聴いていて、上原の声と言葉と、メロディとサウンドが合わさった時に、言葉にできない感情というか、グッとくるものがあって。
【上原】自分で歌詞を書いていながら、自分でそういう感情になったんで。
【柴崎】ああ、やっぱり。
【上原】この曲は本当、自分で響いちゃう曲なんですよね。後から歌詞を見ながら聴くと、自分に励まされちゃうっていう。
――そういう感情は、レコーディングの際に前面に出そうとするのですか?
【上原】そこは難しいですね。感情が無さすぎてもつまらない歌になるし、じゃあ感情を込めればいいのかっていうと、逆に全然響かなかったりするし。そこのいい塩梅を探るために、レコーディングでは基本的にライブを想定して歌っています。その曲がライブのセットリストの中に組み込まれたときに、自分ならどう歌うのか。家の中で「こうかな、ああかな」って考えるより、それが正解だったりするんですよ。昔、そこで悩んだことがあったんですが、ある方から「ライブで歌うように歌えばいいんだよ」ってアドバイスをいただいたことが、自分の中で革命的で。「ライブで歌う」と考えると、気持ちがこもるし、自分の歌いやすい、気持ちのいい歌い方もできて。歌に無理がなくて、いい塩梅で感情も乗せられて、音楽を楽しめて。そうすると、すごくいいテイクが録れるんです。
――「ライブで歌うように歌う」という意味だと、「WE ALL NEED LOVE」はぜひライブで聴きたいと感じました。
【柴崎】曲の核となるリズムの雰囲気が最初にアイデアとして浮かんで。みんなで歌うようなイメージもありましたね。
【上原】歌詞のテーマは「LOVE & PEACE」です。今の世の中、ギスギスしていて愛がないじゃないですか。人付き合いもそうだし、すべてが損得勘定で、本当にどんよりする世界。「じゃあ何が必要なんだ?」って聞かれたら、「愛じゃない?」って、そこに行きつくなと思ったんです。ただ、悲観的なしんどい感情からでも、みんなで歌ってそこに愛情や心があれば、気持ちとしては晴れやかになるんじゃないかなって。パッと聴くと、きれいごとを歌ってるって思われるかもしれないけど、もう本当に一周回って開き直って、「それでもやっぱり、愛じゃない?」って言いたかったんです。
――上原さんの歌詞と歌というヒューマンな要素がありつつ、サウンド的には前半は打ち込みで始まって、次第に生演奏感が増していくというドラマチックな展開になっていて。
【柴崎】落ちサビでは人数感が増えて熱量が高まっていく感じにしたくて、そこの歌は僕もユニゾンで一緒に歌いました。アウトロのギターと歌のかけあいもいい感じになったと思います。
――もう1曲の新曲「リフレイン」は、ピアノがフィーチャーされたバラードで。
【柴崎】バラードを作ろうとゼロから書き始めて、最終的にロックっぽいバラードに行き着いたんですけど、ロングトーンが多いメロディなので、上原の声の表情がより魅力的に聴かせられるといいなと思いながら作りました。
【上原】気持ちで歌う曲だなと感じたので、そこで見えてきたのがこういう絶望的な恋愛の歌詞だったんです。普段はあまり書かないシンプルな失恋ソングを、ハードロック的に歌って。
【柴崎】シャウトするような発声があるといいなと思って。間奏のギターソロと歌がかぶるところは、上原のロングトーンが1オクターブ上がるんですけど、そこは「シャウトでお願いします」ってリクエストをして。
【上原】最初のレコーディングでは、ガチでスティーヴン・タイラーみたいにシャウトしたテイクがあるんですけど、さすがにやりすぎたと思って(笑)、そこもいい塩梅を探っていって。
【柴崎】上原のシャウトがすごすぎて、ギターソロも同調して熱く弾き始めたほうがいいかと一瞬思ったんだけど、歌が熱くシャウトしているからこそ、ギターソロは淡々と弾いたほうが、両方がちゃんと聴こえてくるかなと思い直して。
【上原】だから、よりエモいんですよね。
――それら3曲にシングル曲「大胆」と、さらに第5期バージョンとして「天使になんてなれなかった」と「FLOWER」のセルフカバーが収録されたアルバム『TIME STEW』を、今、客観的にどのように感じていますか?
【柴崎】力んだり気負ったりせずに、第5期オリジナルの新曲とセルフカバー曲が同居できている感じが、まさにアルバム・タイトルのように『TIME STEW』なのかなって感じています。
【上原】そうですね。「第5期らしさ」みたいな気負った感じは、前作『Version 5.0』で上手く出せて、そこからの地に足が着いた感じで作れました。だから、「やってやるぜ!」みたいなものは、いい意味で、もうないかな。もっと普通に「WANDS第5期としての曲はこんな感じです」という作品になったと思っています。
【柴崎】4月から始まる全国ホールツアー『WANDS Live Tour 2025』も、今回は初めてライブをする場所も何ヶ所かあるから、昔のWANDSを知って来てくれる方もいらっしゃるでしょうし、第5期から新しくファンになってくれた方もいると思うので、お客さん同士も「新しい曲もいいね」「昔の曲も好きだな」って、アルバム・タイトル通りに溶け合ってくれるツアーになったらいいかなって思っています。
【上原】まったく同意で、それを超える言葉はありません(笑)。僕自身としては、もう「WANDSだから」っていう気負いはないんですけど、ただWANDSのライブとして、このバンドらしさっていう部分ではまだまだ開発途中で、伸びしろがあると感じているので、次のツアーでそこをまたひとつブラッシュアップしていければいいなと思っています。
文・布施雄一郎
<作品情報>
WANDS 8th ALBUM『TIME STEW』
【初回限定盤A】CD+LIVE Blu-ray
品番:GZCD-5017/価格:6930円(税込)
■特典LIVE Blu-ray収録内容
LIVE at『Japan Anison & Rock Festival 2024』
01. 錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう [WANDS第5期ver.]
02. We Will Never Give Up
03. 明日もし君が壊れても [WANDS第5期ver.]
04. 時の扉 [WANDS第5期ver.]
05. Secret Night 〜 It's My Treat 〜[WANDS第5期ver.]
06. 愛を語るより口づけをかわそう [WANDS第5期ver.]
07. RAISE INSIGHT
08. 愛を叫びたい
09. 真っ赤なLip
10. 大胆
11. 世界が終るまでは… [WANDS第5期ver.]
【初回限定盤B】CD+LIVE CD
品番:GZCD-5018/価格:4950円(税込)
■特典LIVE CD収録内容
LIVE at『WANDER-LAND NEO「FANDS」MEETING 2023』
01. 恋せよ乙女
02. Just a Lonely Boy [WANDS第5期ver.]
03. 星のない空の下で
04. アイリメンバー U
05. DON'T TRY SO HARD
06. 明日もし君が壊れても [WANDS第5期ver.]
07. 空へ向かう木のように
08. 抱き寄せ 高まる 君の体温と共に
09. 世界中の誰よりきっと [WANDS第5期ver.]
10. WONDER STORY
【通常盤】CD
品番:GZCD-5019/価格:2530円(税込)
■CD収録曲(共通)
01. 大胆
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』テーマソング
02. 天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]
作詞:上杉昇 作/編曲:柴崎浩
03. Shooting star
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
読売テレビ・日本テレビ系全国ネット『名探偵コナン』エンディングテーマ
04. WE ALL NEED LOVE
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
05. FLOWER [WANDS第5期ver.]
作詞:上杉昇 作/編曲:柴崎浩
06. リフレイン
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
※ブックレットには、3形態それぞれ異なる写真を収録
<ライブ情報>
『WANDS Live Tour 2025 〜TIME STEW〜』
4月18日 宮城県・仙台サンプラザホール
4月22日 北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
4月25日 新潟県・新潟県民会館 大ホール
4月30日 香川県・レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール
5月 2日 福岡県・福岡サンパレス
5月16日 愛知県・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール【SOLD OUT】
5月19日 大阪府・大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール【SOLD OUT】
5月21日 広島県・広島上野学園ホール
5月30日 東京都・東京ガーデンシアター
――まず、WANDS第5期にとって縁の深いTVアニメ『名探偵コナン』のエンディングテーマ曲として先行リリースされた「Shooting star」は、どのように作っていったのか教えてください。
【柴崎】自分のストック曲を聴き直していく中で、今やったらいい曲になりそうだなと感じて制作に取りかかりました。救いというか、上手くいかなくても希望が持てるようなイメージの曲で、上原の歌唱にもすごく合いそうに感じて。シャッフルなリズムも、WANDSの曲にはあまりないから、それもいいなと思って。
【上原】シンプルにいい曲だなって思いましたし、シャッフルも、気持ちよく、グルーヴがあるノリのよい曲という感覚で歌えました。ただみなさんがカラオケで歌う時には、サビのシンコペーション的な2拍3連符のリズム、これは難易度が高いと思いますよ。多分、ほとんどの人は違うタイミングで歌っちゃうんじゃないかな。あくまでも僕の予想ですけど(笑)。
【柴崎】そういうリズム感もそうだし、歌の節回しとか、今の上原が歌うと魅力的になりそうだなって想像が膨らんで。デモ自体はWANDS第5期の最初の頃からあったんですけど、当時は自分も周りもピンとこなくて。でも今、このタイミングで聴いて「これはやったほうがいい」と思ったんです。
――当時と今とで、どういう変化があったんでしょうか?
【柴崎】第5期としてのライブや制作の積み重ねもあるし、WANDSそのものに対する視点が昔と今とで変わったのかなって。今になって思えば、第5期をスタートさせた頃はもうちょっと保守的だったのかもしれません。でもある時期からはもう、今の第5期ならではの魅力を出していかないとつまんないよねって思うようになって。
【上原】歌に関しても、「WANDSだからどうこう」とか、WANDSの看板を背負う意識すら、もうないのかもしれません。ボーカリスト上原大史が、この曲をどうカッコよく、より良いものとして歌うのか。そういうフラットな向き合い方でしたね。
――歌詞に関しては、2人でイメージをすり合わせながら書いていったのですか?
【柴崎】いや、それはないですね。ただ、後半にボーカルフェイクを入れたいということだけを伝えて。「WE ALL NEED LOVE」もそうですね。「Shooting star」は、デモの段階でフェイクの基本となるメロディをシンセで入れておいて。“Shooting star”っていう言葉がハマるようなメロディにはしていたんですけど、それは伝えずに。そしたらちゃんと、そういう歌詞になっていて「よかった」って(笑)。
【上原】知らなかった。たまたまですけど、よかったです(笑)。
【柴崎】しかもリフレインを2回繰り返す時に、ちゃんと2回目は変化があって、さらにボーカルフェイクがついていたりして、めちゃくちゃいいなと思って。いつも、イメージを言ったほうがいいのか悩むんですけど、でも僕が「ここはこの言葉」って伝えてしまうと、上原がもっといい歌詞を書いてくれるかもしれない可能性をなくしてしまう怖さもあって。それで言わないんですけど、必ずいい歌詞が返ってくるので。
――以心伝心の作詞作業なんですね。そうやって生まれた2コーラス目のAメロの歌詞は、とても心に響きました。
【上原】ここはいろんな含みがあるんですよ。シンプルに応援ソングでもあるし、自分の背中を押す曲というか、自分に言い聞かせるようなニュアンスもあったり。あと“WANDS”って英単語には「魔法の杖」っていう意味があって、WANDS第5期をやるうえで自分が感じてきたことも随所に散りばめられていて。だから本当に今だからこそ書けた歌詞だし、第5期を始めた最初の1、2年目の頃には100%出てこなかった言葉だと思います。この5年間で、それまでに経験したことがないような感情も味わったし、でもそれって多分みなさんも人生の中で味わうことだったりすると思うんです。そうしたものとの向き合い方の答えが、自分の中で何となく見えてきて。その心境を今、みんなに向けて歌う応援歌でもありつつ、世の中に対する虚しさみたいなものも、ちょっと入っていたりして。
――その「虚しさ」とは?
【上原】どうしようもないことって絶対にあって、それを嘆きつつも、でも嘆いたところで何も解決しなくて、それでも幸せに生きていきたいっていう気持ちがあって。人の一生って、長いようで本当に短い。地球規模の話をすれば、本当に一瞬の儚いもの。だからこそ、その一瞬をどう生きるのかっていう感情を散りばめて。だから、これまでの自分の人生と、WANDS第5期での5年間の経験がこの歌詞を書かせてくれたと感じています。
【柴崎】そういう上原の言葉が乗ったことで曲の方向性が固まって、本当にいい曲になったなって思っていて。最後のフレーズのあたりとか泣きそうになったし。
【上原】ああ、それはうれしいです。
【柴崎】泣かないんだけどね(笑)、でも聴いていて、上原の声と言葉と、メロディとサウンドが合わさった時に、言葉にできない感情というか、グッとくるものがあって。
【上原】自分で歌詞を書いていながら、自分でそういう感情になったんで。
【柴崎】ああ、やっぱり。
【上原】この曲は本当、自分で響いちゃう曲なんですよね。後から歌詞を見ながら聴くと、自分に励まされちゃうっていう。
――そういう感情は、レコーディングの際に前面に出そうとするのですか?
【上原】そこは難しいですね。感情が無さすぎてもつまらない歌になるし、じゃあ感情を込めればいいのかっていうと、逆に全然響かなかったりするし。そこのいい塩梅を探るために、レコーディングでは基本的にライブを想定して歌っています。その曲がライブのセットリストの中に組み込まれたときに、自分ならどう歌うのか。家の中で「こうかな、ああかな」って考えるより、それが正解だったりするんですよ。昔、そこで悩んだことがあったんですが、ある方から「ライブで歌うように歌えばいいんだよ」ってアドバイスをいただいたことが、自分の中で革命的で。「ライブで歌う」と考えると、気持ちがこもるし、自分の歌いやすい、気持ちのいい歌い方もできて。歌に無理がなくて、いい塩梅で感情も乗せられて、音楽を楽しめて。そうすると、すごくいいテイクが録れるんです。
――「ライブで歌うように歌う」という意味だと、「WE ALL NEED LOVE」はぜひライブで聴きたいと感じました。
【柴崎】曲の核となるリズムの雰囲気が最初にアイデアとして浮かんで。みんなで歌うようなイメージもありましたね。
【上原】歌詞のテーマは「LOVE & PEACE」です。今の世の中、ギスギスしていて愛がないじゃないですか。人付き合いもそうだし、すべてが損得勘定で、本当にどんよりする世界。「じゃあ何が必要なんだ?」って聞かれたら、「愛じゃない?」って、そこに行きつくなと思ったんです。ただ、悲観的なしんどい感情からでも、みんなで歌ってそこに愛情や心があれば、気持ちとしては晴れやかになるんじゃないかなって。パッと聴くと、きれいごとを歌ってるって思われるかもしれないけど、もう本当に一周回って開き直って、「それでもやっぱり、愛じゃない?」って言いたかったんです。
――上原さんの歌詞と歌というヒューマンな要素がありつつ、サウンド的には前半は打ち込みで始まって、次第に生演奏感が増していくというドラマチックな展開になっていて。
【柴崎】落ちサビでは人数感が増えて熱量が高まっていく感じにしたくて、そこの歌は僕もユニゾンで一緒に歌いました。アウトロのギターと歌のかけあいもいい感じになったと思います。
――もう1曲の新曲「リフレイン」は、ピアノがフィーチャーされたバラードで。
【柴崎】バラードを作ろうとゼロから書き始めて、最終的にロックっぽいバラードに行き着いたんですけど、ロングトーンが多いメロディなので、上原の声の表情がより魅力的に聴かせられるといいなと思いながら作りました。
【上原】気持ちで歌う曲だなと感じたので、そこで見えてきたのがこういう絶望的な恋愛の歌詞だったんです。普段はあまり書かないシンプルな失恋ソングを、ハードロック的に歌って。
【柴崎】シャウトするような発声があるといいなと思って。間奏のギターソロと歌がかぶるところは、上原のロングトーンが1オクターブ上がるんですけど、そこは「シャウトでお願いします」ってリクエストをして。
【上原】最初のレコーディングでは、ガチでスティーヴン・タイラーみたいにシャウトしたテイクがあるんですけど、さすがにやりすぎたと思って(笑)、そこもいい塩梅を探っていって。
【柴崎】上原のシャウトがすごすぎて、ギターソロも同調して熱く弾き始めたほうがいいかと一瞬思ったんだけど、歌が熱くシャウトしているからこそ、ギターソロは淡々と弾いたほうが、両方がちゃんと聴こえてくるかなと思い直して。
【上原】だから、よりエモいんですよね。
――それら3曲にシングル曲「大胆」と、さらに第5期バージョンとして「天使になんてなれなかった」と「FLOWER」のセルフカバーが収録されたアルバム『TIME STEW』を、今、客観的にどのように感じていますか?
【柴崎】力んだり気負ったりせずに、第5期オリジナルの新曲とセルフカバー曲が同居できている感じが、まさにアルバム・タイトルのように『TIME STEW』なのかなって感じています。
【上原】そうですね。「第5期らしさ」みたいな気負った感じは、前作『Version 5.0』で上手く出せて、そこからの地に足が着いた感じで作れました。だから、「やってやるぜ!」みたいなものは、いい意味で、もうないかな。もっと普通に「WANDS第5期としての曲はこんな感じです」という作品になったと思っています。
【柴崎】4月から始まる全国ホールツアー『WANDS Live Tour 2025』も、今回は初めてライブをする場所も何ヶ所かあるから、昔のWANDSを知って来てくれる方もいらっしゃるでしょうし、第5期から新しくファンになってくれた方もいると思うので、お客さん同士も「新しい曲もいいね」「昔の曲も好きだな」って、アルバム・タイトル通りに溶け合ってくれるツアーになったらいいかなって思っています。
【上原】まったく同意で、それを超える言葉はありません(笑)。僕自身としては、もう「WANDSだから」っていう気負いはないんですけど、ただWANDSのライブとして、このバンドらしさっていう部分ではまだまだ開発途中で、伸びしろがあると感じているので、次のツアーでそこをまたひとつブラッシュアップしていければいいなと思っています。
文・布施雄一郎
<作品情報>
WANDS 8th ALBUM『TIME STEW』
【初回限定盤A】CD+LIVE Blu-ray
品番:GZCD-5017/価格:6930円(税込)
■特典LIVE Blu-ray収録内容
LIVE at『Japan Anison & Rock Festival 2024』
01. 錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう [WANDS第5期ver.]
02. We Will Never Give Up
03. 明日もし君が壊れても [WANDS第5期ver.]
04. 時の扉 [WANDS第5期ver.]
05. Secret Night 〜 It's My Treat 〜[WANDS第5期ver.]
06. 愛を語るより口づけをかわそう [WANDS第5期ver.]
07. RAISE INSIGHT
08. 愛を叫びたい
09. 真っ赤なLip
10. 大胆
11. 世界が終るまでは… [WANDS第5期ver.]
【初回限定盤B】CD+LIVE CD
品番:GZCD-5018/価格:4950円(税込)
■特典LIVE CD収録内容
LIVE at『WANDER-LAND NEO「FANDS」MEETING 2023』
01. 恋せよ乙女
02. Just a Lonely Boy [WANDS第5期ver.]
03. 星のない空の下で
04. アイリメンバー U
05. DON'T TRY SO HARD
06. 明日もし君が壊れても [WANDS第5期ver.]
07. 空へ向かう木のように
08. 抱き寄せ 高まる 君の体温と共に
09. 世界中の誰よりきっと [WANDS第5期ver.]
10. WONDER STORY
【通常盤】CD
品番:GZCD-5019/価格:2530円(税込)
■CD収録曲(共通)
01. 大胆
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』テーマソング
02. 天使になんてなれなかった [WANDS第5期ver.]
作詞:上杉昇 作/編曲:柴崎浩
03. Shooting star
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
読売テレビ・日本テレビ系全国ネット『名探偵コナン』エンディングテーマ
04. WE ALL NEED LOVE
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
05. FLOWER [WANDS第5期ver.]
作詞:上杉昇 作/編曲:柴崎浩
06. リフレイン
作詞:上原大史 作/編曲:柴崎浩
※ブックレットには、3形態それぞれ異なる写真を収録
<ライブ情報>
『WANDS Live Tour 2025 〜TIME STEW〜』
4月18日 宮城県・仙台サンプラザホール
4月22日 北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
4月25日 新潟県・新潟県民会館 大ホール
4月30日 香川県・レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール
5月 2日 福岡県・福岡サンパレス
5月16日 愛知県・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール【SOLD OUT】
5月19日 大阪府・大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール【SOLD OUT】
5月21日 広島県・広島上野学園ホール
5月30日 東京都・東京ガーデンシアター

2025/03/26