4人組ロックバンド・a flood of circle(以下フラッド)が、8月12日に東京・日比谷野外大音楽堂でデビュー15周年を記念したワンマンライブを行う。同バンドにとってロックの聖地・野音での単独公演は、2014年4月のツアーファイナル以来、実に10年ぶりとなる。
フラッドはこのアニバーサリーライブに向け、今年3月に5曲入りEP『CANDLE SONGS』を発表。4月からは全国ツアー『CANDLE SONGS -日比谷野外大音楽堂への道-』をスタートさせ、取材時点(6月末)までに12公演の単独ライブを駆け抜けてきた。
今回のインタビューでは、10年前の前回と同様にバンドにとって大きなマイルストーンの1つとなるだろう野音公演を主軸に、過去からの変化、現在メンバーの4人が抱いている葛藤、そして歌詞中で公言している“日本武道館公演”も含めた今後への思いを語ってもらった。
■“完成形”ではなく“その日の最高値”を目指すツアーの日々
――全国ツアーのワンマンシリーズを終えた今、どんな手応えを感じていますか?
【佐々木】『CANDLE SONGS』では、ライブで演奏することを考えて曲自体をどんどんシンプルにしていったんで、それがどんな風に受け取られるのか確かめながらツアーを回っていた感じですね。
――昨年9月に発表されたシングル「ゴールド・ディガーズ」でも、シンプルさがテーマの1つになっていましたね。
【佐々木亮介(Vo&Gt)】『CANDLE SONGS』でも引き続き、「色気を出そう」とか「実験的に」みたいな余計なものは全部ナシにしようと。例えば「冬の終わり、マウンテンデュー、一瞬について」っていう曲は3つくらいのコードだけで完結するんですけど、そうやってなるべく曲を簡単にしておいて、エネルギーや言葉をライブの場で爆発させたかった。こういう方が今のフラッドに合っている気がするんです。
【アオキテツ(Gt)】今回のツアーはセットリストの曲を入れ替えたりとかもあんまりせんかったんで、毎回「あれやってみようかな」みたいに個人的なチャレンジをやってたッスね。フレーズも音も全部お試しなんで、「別にこれはやんなくていいや」って思ったらライブの途中でもとに戻す日もあったし。
【渡邊一丘(Dr)】前まではいろんな意味でガチガチに決め込むところもあったんですよ。だけど、今はその日ごとの“今日のおすすめメニュー”が充実しているというか。その日に起きるいろんな偶然を楽しんでいる感じ。
【HISAYO(Ba)】確かに1回ずつ違うライブだなって感じますね。セットリストを変えないっていうのもあるんですけど、ある程度固まってきたなと思った途端に、佐々木をはじめ誰かが急に昨日までと全然違うことをやり始めたりして(笑)。“完成形”を決めて目指していくんじゃなくて、その場でみんながやっていることの“最高”を目指す…みたいな。
【佐々木】俺、曲を作る時もライブでも「自分の人生ってこんなに面白くないのに、面白いものを作ろうなんて無理じゃね?」みたいな考え方になっていくんですよ。で、そう考え始めたらなるべくフザけるようにしていて。それがベストな答えじゃないかもしれないけど、俺がお客さんの目線に立ったときに「つまらない」って思うものをやるよりはマシかなって。
■脳裏によぎった“独立” 結成メンバーが語り合った「意思統一」とは
――「つまらないものをやらない」という考え方が起因になっているのか、今年行われた『A FLOOD OF CIRCUS』や『KINZOKU Bat NIGHT』などのイベントでは、ヒリヒリとした緊張感や鬼気迫るものも感じました。
【佐々木】「緊張感が欲しい」っていう意識も少しはあったと思うけど、ちょうど『KINZOKU Bat NIGHT』をやった3月あたりに「マネージャーとかレーベルから1回離れようか」と考えた時期があったんで、その影響も出たのかな。実際に「周りのみんながいなくなっても、まずこの4人だよね」みたいな話もしたし、4月から契約の形を変えてやっていくことにしたんで、そこでちょっと意識が変わったのかも。
――昨年9月の佐々木さんのソロインタビューでは、渡邊さんと15年ぶりに2人で飲んだ際に「40歳までこのままだとバンドを続けられない」と言われた…という話もありました。
【佐々木】だいぶ大げさに言っちゃったやつです、それ(笑)。
【渡邊】弱パンチのつもりで言ったのに強パンチになっていたっていう。いろんなところでそれを話すもんだから、「武道館をやったら解散するらしい」って勘違いしているファンの人もいたくらいで(笑)。
【佐々木】それは違うぞって書いておいてください(笑)。
【渡邊】俺としては意思統一みたいなものでしかなかったんです。さっき言ってくれた緊張感に通じるのかもしれないけど、みんなが思っているよりメンバー同士って話しづらいんですよ(笑)。世間話は普通にするし、気になるところがあれば全員で意見も出す。もっと言えば、HISAYO姐さんとは2人でラジオを録っているし、テツともラフに話すんだけど、この人(佐々木)とは対面式で全然話していなくて(笑)。
――気持ちはわからなくもないですが、15年はさすがに…(笑)。
【渡邊】(笑)。で、重い腰を上げて「バンドを続けていくために」っていう本質的な話をしたんですよ。人はいつか死ぬじゃないですか。特にこのバンドは誰かが死んだら終わりだし、そういうことを考え出したらキリがないんだけど、「だったら頑張れるうちに頑張りたい」っていうポジティブな気持ちで言ったんですよね。
【佐々木】単純にみんな歳を取ってきたってことなのかな。
【渡邊】それもあると思う。終わることから目を背けられる理由がもうないっていうか、今まで直視しているつもりであんまりできていなかったなって。
■15周年のバンドの中心にある「飽き」
――シンプルさを追求するようになったことも、バンドの本質に向き合った結果ですか?
【佐々木】単純にこのバンドに向いていると思ったのと、逆張りの両方かな。もうこの4人でいることが通常営業になった中で、フラッドにふさわしくて、かつなるべくみんながやっていないところに行きたいと思った結果、どんどん要素を減らしていく意識になったんです。
――それが先ほどの発言にあった「面白いもの」につながる?
【佐々木】「ここにはもうフラッドしかいない」ってところまで行けたら、まだ面白さがギリギリ芽生えるんじゃないかっていう期待ですね。やっぱり自分ってつくづく普通だなって思うし、「ロックバンドって面白いのか?」って考える瞬間もあって。で、そういうときにだけ「じゃあどうしようか」って考えられるんですよ。まぁ、そんなことはメンバーにわざわざ言葉で伝えないですけど(笑)。
【HISAYO】でも、一緒にステージに立っているから体感でわかる。ウチらってライブのリハがすごく少ないんですけど、そうなると必然的に緊張感が生まれるし、「何が起きるかわからない」っていう面白さも自然と感じられるし、これまでの成功体験のおかげで「何が起きても何とかなる」って楽しめるんです。ただ、佐々木は“何ともならない日”が来るのを待っているのかな…とも思う(笑)。
【佐々木】いやいや、もっと保守的な気持ちもあります(笑)。
【渡邊】俺は、例えばプライベートで完全に油断しているときに自分たちのライブ音源を聞くと「このバンド固ぇな、マジメだな」って思うんです。それが悪ってことじゃないんだけど、シンプルに飽きた。で、今は「飽きたから、次はどうしよう?」って探しているのが心地いい。
――テツさんも頷いていましたが、同じように感じていますか?
【アオキ】「飽きた」っていうのは確かにそうやなと。ずーっとやってたら、やっぱり自分自身に飽きてくるんですよ。だから、さっき言ったみたいな“プチチャレンジ”をやったりもする。別に「めっちゃ変わりたい」って思っているわけじゃないんですけどね。
【HISAYO】私はちょっと方向性が違うんですけど、飽きを超えたらどうなるのかなって考えるようになりました。例えば、同じ曲をずっと求められ続けている大御所の歌手の方もいるじゃないですか。そういう人を見たとき、「自分をそれぐらいまで追い込んでみたらどうなるんやろ」って。
――演奏面でも新たな発見がありそうですよね。
【HISAYO】自分で曲を作っているわけじゃないから、佐々木の意図を理解しきれずに演奏している部分もやっぱり多いと思うんですよ。でも、自分が変われば曲の解釈も変わるし、技術が育てば弾き方も変わるじゃないですか。それを突き詰めていったらどうなるんやろうっていう楽しみ方になってきているんです。
――向き合い方は違えど、みなさんの中心に「飽き」があるんですね。
【佐々木】うん、それはやっぱりありますね。リアルな話、ライブスケジュールを立てるのってお金がほしいからなんですよ。少なくとも日程を作っている時点で「明日死んでもいい」って気持ちではやっていないじゃないですか。だからこそ、その中で自分たちも飽きず、面白いと思えるライブにしたい。
■“野音=ゴール”だった10年前 “野音=過程”にするための現在
――『少年ジャンプ+』で連載中の「ふつうの軽音部」で、フラッドの「理由なき反抗(The Rebel Age)」が登場して話題となりました。
【佐々木】そうそう。そのおかげで野音のチケットも結構売れて、改めてバンドだけでやるのって難しいなと思いましたよ(笑)。あれはマンガの面白さのおかげだから、当日見に来てくれる人にとってマンガくらい面白いバンドになれるかどうか。
――長く応援しているファンだけでなく、新たに聞き始めた人や久しぶりにフラッドに触れた人も野音に足を運ぶということですよ。みなさんの意気込みは?
【HISAYO】前回は全県ツアーのファイナルだったからその後のことをあまり考えていなくて、野音=ゴールだったんですよね。だけど今回は、それこそ「武道館を取ろう」っていう話をした上での野音だから、ゴールと思わずにできるのがいいなって思いますね。
【渡邊】野音は確かにバンドにとってターニングポイントだったと思うんだけど、俺にとっては“呪い”みたいなものなんです。個人的に「いい思い出」と一言では言えないというか。その反面、俺は記憶力がいい方じゃないから、ぼんやりと標高が一番高かったあの日を思い出すんですよね。まぁ…その呪いが解けたとしてもマイナスがゼロに戻るだけなんだけど、最近はその呪いが少しずつ解けていっている気がするから、ゼロからプラスに持っていくくらいの気持ちで臨みたいです。
【アオキ】この間ね、前の野音のライブ映像を見る機会があったんですよ。で、すげえヘタクソやなって思ったから、あのライブよりはいろいろできたらいいんじゃないッスかね。あと、天気が良ければいいなぁって。
【佐々木】最近野音への意気込みをいろいろなところで話すんだけど、言えば言うほど「何でやるんだっけ?」って考えが強くなってきて面白い。ぶっちゃけて言えば、「みんなが野音でやっているから」っていうのに流されているだけで、武道館もそうなんです。特別な理由があるわけじゃない。
■「バンドを長く健康的に続ける」ために削る命
――佐々木さんの「やりたいこと」とは?
【佐々木】バンドをなるべく長く続けることだけ。デビューしてからバイトをしていた時期もあるけど、音楽以外の仕事をしている時間が本当に苦痛だったし、今みたいにバンドだけに集中できる状態が一番好きなんです。だから、「どうやったらこの状態で最後までできるのか」ってことだけを考えていて、その中でちょっと欲張って「少しでもいい曲を書きたい」とか、「こういうライブがやりたい」っていう気持ちが出てくる。それも、そっちの方が面白いからってことなんですけど。
――なるほど。
【佐々木】ただ、ナベちゃんの「40歳になったら…」って話とか「ツアーで金を稼ぐ」って話にもつながるんだけど、バンドを続けるにはどうしても上昇志向が必要で。つくづく資本主義社会の奴隷だなって思うけど、「成長」っていうコンセプトと折り合いを付けなきゃいけない。そうなると、どうしてもその過程に野音と武道館が出てくるんですよね。
――野音も武道館もバンドを続けるために必要な過程?
【佐々木】別に俺の人生をみんなに押し付けるつもりはないんだけど、俺は「このメンバーでやりたい」ってだけで、要するに全部が後付けなんですよ。今回「15周年記念公演」って付けたのも初期のお客さんにとっての目印なだけで、コンセプトじゃない。まだちょっと先だけど次のアルバムも見据えているし、武道館に向けた気持ちもそのさらに先にある。だからこそ、ここで1回出し切る必要があるんです。
――そうなると、野音はこれまでとまた違った雰囲気のライブになりそうですね。
【佐々木】わりと緊張感のあるライブになると思います。ツアーで成長した姿を見せる気はまったくないから、セトリもガラッと変えるつもり。それも「チャレンジ」じゃなくて、自分の人生を考えたときに一番必要だと思えるから。15周年で和気あいあいってのもいいんだろうけど、それは俺も、きっとメンバーのみんなも、お客さんもドキドキしない。
――最後にあえて聞きますが、先ほどの「成長」という言葉が指す具体的なビジョンを教えていただけますか?
【佐々木】あえて答えるなら(笑)、みんながなるべく健康で、それぞれの人生がもちろんありつつも、フラッドを中心に考えたときに経済面でもいい感じに回っていること。で、それをもう無理だってところまで続けることかな。それがすげえ難しいことだってのは、周りを見て知ってるから。だからこそ「音楽が人生に欠かせない」みたいな美しい考えじゃなくて、さっき言ったみたいに、ほかのすべてのネガティブなことに比べればマシだからそうしたい。そうやって面白くバンドを続けるために、ライブではなるべく酒で意識を保たないようにするし(笑)、歌を作るときだけは命がけでやる。それがすべてです。
■a flood of circleツアー『CANDLE SONGS -日比谷野外大音楽堂への道-』
7月11日(木) 大阪・梅田CLUB QUATTRO(w/the pillows)
7月18日(木) 愛知・名古屋BOTTOM LINE(w/cinema staff)
7月21日(日) 神奈川・横浜BAY HALL(w/9mm Parabellum Bullet)
■デビュー15周年記念公演『LIVE AT 日比谷野外大音楽堂』
8月12日(月・祝) 東京・日比谷公園野外大音楽堂
フラッドはこのアニバーサリーライブに向け、今年3月に5曲入りEP『CANDLE SONGS』を発表。4月からは全国ツアー『CANDLE SONGS -日比谷野外大音楽堂への道-』をスタートさせ、取材時点(6月末)までに12公演の単独ライブを駆け抜けてきた。
今回のインタビューでは、10年前の前回と同様にバンドにとって大きなマイルストーンの1つとなるだろう野音公演を主軸に、過去からの変化、現在メンバーの4人が抱いている葛藤、そして歌詞中で公言している“日本武道館公演”も含めた今後への思いを語ってもらった。
■“完成形”ではなく“その日の最高値”を目指すツアーの日々
【佐々木】『CANDLE SONGS』では、ライブで演奏することを考えて曲自体をどんどんシンプルにしていったんで、それがどんな風に受け取られるのか確かめながらツアーを回っていた感じですね。
――昨年9月に発表されたシングル「ゴールド・ディガーズ」でも、シンプルさがテーマの1つになっていましたね。
【佐々木亮介(Vo&Gt)】『CANDLE SONGS』でも引き続き、「色気を出そう」とか「実験的に」みたいな余計なものは全部ナシにしようと。例えば「冬の終わり、マウンテンデュー、一瞬について」っていう曲は3つくらいのコードだけで完結するんですけど、そうやってなるべく曲を簡単にしておいて、エネルギーや言葉をライブの場で爆発させたかった。こういう方が今のフラッドに合っている気がするんです。
【アオキテツ(Gt)】今回のツアーはセットリストの曲を入れ替えたりとかもあんまりせんかったんで、毎回「あれやってみようかな」みたいに個人的なチャレンジをやってたッスね。フレーズも音も全部お試しなんで、「別にこれはやんなくていいや」って思ったらライブの途中でもとに戻す日もあったし。
【渡邊一丘(Dr)】前まではいろんな意味でガチガチに決め込むところもあったんですよ。だけど、今はその日ごとの“今日のおすすめメニュー”が充実しているというか。その日に起きるいろんな偶然を楽しんでいる感じ。
【HISAYO(Ba)】確かに1回ずつ違うライブだなって感じますね。セットリストを変えないっていうのもあるんですけど、ある程度固まってきたなと思った途端に、佐々木をはじめ誰かが急に昨日までと全然違うことをやり始めたりして(笑)。“完成形”を決めて目指していくんじゃなくて、その場でみんながやっていることの“最高”を目指す…みたいな。
【佐々木】俺、曲を作る時もライブでも「自分の人生ってこんなに面白くないのに、面白いものを作ろうなんて無理じゃね?」みたいな考え方になっていくんですよ。で、そう考え始めたらなるべくフザけるようにしていて。それがベストな答えじゃないかもしれないけど、俺がお客さんの目線に立ったときに「つまらない」って思うものをやるよりはマシかなって。
■脳裏によぎった“独立” 結成メンバーが語り合った「意思統一」とは
――「つまらないものをやらない」という考え方が起因になっているのか、今年行われた『A FLOOD OF CIRCUS』や『KINZOKU Bat NIGHT』などのイベントでは、ヒリヒリとした緊張感や鬼気迫るものも感じました。
【佐々木】「緊張感が欲しい」っていう意識も少しはあったと思うけど、ちょうど『KINZOKU Bat NIGHT』をやった3月あたりに「マネージャーとかレーベルから1回離れようか」と考えた時期があったんで、その影響も出たのかな。実際に「周りのみんながいなくなっても、まずこの4人だよね」みたいな話もしたし、4月から契約の形を変えてやっていくことにしたんで、そこでちょっと意識が変わったのかも。
――昨年9月の佐々木さんのソロインタビューでは、渡邊さんと15年ぶりに2人で飲んだ際に「40歳までこのままだとバンドを続けられない」と言われた…という話もありました。
【佐々木】だいぶ大げさに言っちゃったやつです、それ(笑)。
【渡邊】弱パンチのつもりで言ったのに強パンチになっていたっていう。いろんなところでそれを話すもんだから、「武道館をやったら解散するらしい」って勘違いしているファンの人もいたくらいで(笑)。
【佐々木】それは違うぞって書いておいてください(笑)。
【渡邊】俺としては意思統一みたいなものでしかなかったんです。さっき言ってくれた緊張感に通じるのかもしれないけど、みんなが思っているよりメンバー同士って話しづらいんですよ(笑)。世間話は普通にするし、気になるところがあれば全員で意見も出す。もっと言えば、HISAYO姐さんとは2人でラジオを録っているし、テツともラフに話すんだけど、この人(佐々木)とは対面式で全然話していなくて(笑)。
――気持ちはわからなくもないですが、15年はさすがに…(笑)。
【渡邊】(笑)。で、重い腰を上げて「バンドを続けていくために」っていう本質的な話をしたんですよ。人はいつか死ぬじゃないですか。特にこのバンドは誰かが死んだら終わりだし、そういうことを考え出したらキリがないんだけど、「だったら頑張れるうちに頑張りたい」っていうポジティブな気持ちで言ったんですよね。
【佐々木】単純にみんな歳を取ってきたってことなのかな。
【渡邊】それもあると思う。終わることから目を背けられる理由がもうないっていうか、今まで直視しているつもりであんまりできていなかったなって。
■15周年のバンドの中心にある「飽き」
――シンプルさを追求するようになったことも、バンドの本質に向き合った結果ですか?
【佐々木】単純にこのバンドに向いていると思ったのと、逆張りの両方かな。もうこの4人でいることが通常営業になった中で、フラッドにふさわしくて、かつなるべくみんながやっていないところに行きたいと思った結果、どんどん要素を減らしていく意識になったんです。
――それが先ほどの発言にあった「面白いもの」につながる?
【佐々木】「ここにはもうフラッドしかいない」ってところまで行けたら、まだ面白さがギリギリ芽生えるんじゃないかっていう期待ですね。やっぱり自分ってつくづく普通だなって思うし、「ロックバンドって面白いのか?」って考える瞬間もあって。で、そういうときにだけ「じゃあどうしようか」って考えられるんですよ。まぁ、そんなことはメンバーにわざわざ言葉で伝えないですけど(笑)。
【HISAYO】でも、一緒にステージに立っているから体感でわかる。ウチらってライブのリハがすごく少ないんですけど、そうなると必然的に緊張感が生まれるし、「何が起きるかわからない」っていう面白さも自然と感じられるし、これまでの成功体験のおかげで「何が起きても何とかなる」って楽しめるんです。ただ、佐々木は“何ともならない日”が来るのを待っているのかな…とも思う(笑)。
【佐々木】いやいや、もっと保守的な気持ちもあります(笑)。
【渡邊】俺は、例えばプライベートで完全に油断しているときに自分たちのライブ音源を聞くと「このバンド固ぇな、マジメだな」って思うんです。それが悪ってことじゃないんだけど、シンプルに飽きた。で、今は「飽きたから、次はどうしよう?」って探しているのが心地いい。
――テツさんも頷いていましたが、同じように感じていますか?
【アオキ】「飽きた」っていうのは確かにそうやなと。ずーっとやってたら、やっぱり自分自身に飽きてくるんですよ。だから、さっき言ったみたいな“プチチャレンジ”をやったりもする。別に「めっちゃ変わりたい」って思っているわけじゃないんですけどね。
【HISAYO】私はちょっと方向性が違うんですけど、飽きを超えたらどうなるのかなって考えるようになりました。例えば、同じ曲をずっと求められ続けている大御所の歌手の方もいるじゃないですか。そういう人を見たとき、「自分をそれぐらいまで追い込んでみたらどうなるんやろ」って。
――演奏面でも新たな発見がありそうですよね。
【HISAYO】自分で曲を作っているわけじゃないから、佐々木の意図を理解しきれずに演奏している部分もやっぱり多いと思うんですよ。でも、自分が変われば曲の解釈も変わるし、技術が育てば弾き方も変わるじゃないですか。それを突き詰めていったらどうなるんやろうっていう楽しみ方になってきているんです。
――向き合い方は違えど、みなさんの中心に「飽き」があるんですね。
【佐々木】うん、それはやっぱりありますね。リアルな話、ライブスケジュールを立てるのってお金がほしいからなんですよ。少なくとも日程を作っている時点で「明日死んでもいい」って気持ちではやっていないじゃないですか。だからこそ、その中で自分たちも飽きず、面白いと思えるライブにしたい。
■“野音=ゴール”だった10年前 “野音=過程”にするための現在
――『少年ジャンプ+』で連載中の「ふつうの軽音部」で、フラッドの「理由なき反抗(The Rebel Age)」が登場して話題となりました。
【佐々木】そうそう。そのおかげで野音のチケットも結構売れて、改めてバンドだけでやるのって難しいなと思いましたよ(笑)。あれはマンガの面白さのおかげだから、当日見に来てくれる人にとってマンガくらい面白いバンドになれるかどうか。
――長く応援しているファンだけでなく、新たに聞き始めた人や久しぶりにフラッドに触れた人も野音に足を運ぶということですよ。みなさんの意気込みは?
【HISAYO】前回は全県ツアーのファイナルだったからその後のことをあまり考えていなくて、野音=ゴールだったんですよね。だけど今回は、それこそ「武道館を取ろう」っていう話をした上での野音だから、ゴールと思わずにできるのがいいなって思いますね。
【渡邊】野音は確かにバンドにとってターニングポイントだったと思うんだけど、俺にとっては“呪い”みたいなものなんです。個人的に「いい思い出」と一言では言えないというか。その反面、俺は記憶力がいい方じゃないから、ぼんやりと標高が一番高かったあの日を思い出すんですよね。まぁ…その呪いが解けたとしてもマイナスがゼロに戻るだけなんだけど、最近はその呪いが少しずつ解けていっている気がするから、ゼロからプラスに持っていくくらいの気持ちで臨みたいです。
【アオキ】この間ね、前の野音のライブ映像を見る機会があったんですよ。で、すげえヘタクソやなって思ったから、あのライブよりはいろいろできたらいいんじゃないッスかね。あと、天気が良ければいいなぁって。
【佐々木】最近野音への意気込みをいろいろなところで話すんだけど、言えば言うほど「何でやるんだっけ?」って考えが強くなってきて面白い。ぶっちゃけて言えば、「みんなが野音でやっているから」っていうのに流されているだけで、武道館もそうなんです。特別な理由があるわけじゃない。
■「バンドを長く健康的に続ける」ために削る命
――佐々木さんの「やりたいこと」とは?
【佐々木】バンドをなるべく長く続けることだけ。デビューしてからバイトをしていた時期もあるけど、音楽以外の仕事をしている時間が本当に苦痛だったし、今みたいにバンドだけに集中できる状態が一番好きなんです。だから、「どうやったらこの状態で最後までできるのか」ってことだけを考えていて、その中でちょっと欲張って「少しでもいい曲を書きたい」とか、「こういうライブがやりたい」っていう気持ちが出てくる。それも、そっちの方が面白いからってことなんですけど。
――なるほど。
【佐々木】ただ、ナベちゃんの「40歳になったら…」って話とか「ツアーで金を稼ぐ」って話にもつながるんだけど、バンドを続けるにはどうしても上昇志向が必要で。つくづく資本主義社会の奴隷だなって思うけど、「成長」っていうコンセプトと折り合いを付けなきゃいけない。そうなると、どうしてもその過程に野音と武道館が出てくるんですよね。
――野音も武道館もバンドを続けるために必要な過程?
【佐々木】別に俺の人生をみんなに押し付けるつもりはないんだけど、俺は「このメンバーでやりたい」ってだけで、要するに全部が後付けなんですよ。今回「15周年記念公演」って付けたのも初期のお客さんにとっての目印なだけで、コンセプトじゃない。まだちょっと先だけど次のアルバムも見据えているし、武道館に向けた気持ちもそのさらに先にある。だからこそ、ここで1回出し切る必要があるんです。
――そうなると、野音はこれまでとまた違った雰囲気のライブになりそうですね。
【佐々木】わりと緊張感のあるライブになると思います。ツアーで成長した姿を見せる気はまったくないから、セトリもガラッと変えるつもり。それも「チャレンジ」じゃなくて、自分の人生を考えたときに一番必要だと思えるから。15周年で和気あいあいってのもいいんだろうけど、それは俺も、きっとメンバーのみんなも、お客さんもドキドキしない。
――最後にあえて聞きますが、先ほどの「成長」という言葉が指す具体的なビジョンを教えていただけますか?
【佐々木】あえて答えるなら(笑)、みんながなるべく健康で、それぞれの人生がもちろんありつつも、フラッドを中心に考えたときに経済面でもいい感じに回っていること。で、それをもう無理だってところまで続けることかな。それがすげえ難しいことだってのは、周りを見て知ってるから。だからこそ「音楽が人生に欠かせない」みたいな美しい考えじゃなくて、さっき言ったみたいに、ほかのすべてのネガティブなことに比べればマシだからそうしたい。そうやって面白くバンドを続けるために、ライブではなるべく酒で意識を保たないようにするし(笑)、歌を作るときだけは命がけでやる。それがすべてです。
■a flood of circleツアー『CANDLE SONGS -日比谷野外大音楽堂への道-』
7月11日(木) 大阪・梅田CLUB QUATTRO(w/the pillows)
7月18日(木) 愛知・名古屋BOTTOM LINE(w/cinema staff)
7月21日(日) 神奈川・横浜BAY HALL(w/9mm Parabellum Bullet)
■デビュー15周年記念公演『LIVE AT 日比谷野外大音楽堂』
8月12日(月・祝) 東京・日比谷公園野外大音楽堂
2024/07/10





