日々話題を集めるエンタメニュースも、経済目線で知ればもっと面白くなる。そこで『ORICON NEWS』は、エンタメをこよなく愛する経営コンサルタント・坂口孝則氏に、エンタメにまつわるニュースを経済視点で解説してもらう連載企画『オリコンエンタメビズ』を開始した。今回は、JO1の大型展覧会にみたエンタメビジネスの可能性について解説してもらった。
JO1はいわずと知れたボーイズグループです。
たまたま2021年に耳にした名曲「Born To Be Wild」の衝撃は忘れられません。恐るべき完成度でした。無駄に重ねないコーラスワーク、多連符とロングトーンの使い分け、ファルセットとラップの絶妙な組み合わせ……。どこをぶったぎってもサビといえる新たな曲構成でした。オケも最高でした。シンプルでグルーブなベース、カッティング、ドラミング。リズムダウンとアップによる盛り上げも見事です。「これはすごい」というのが私の感想です。
その後にJO1の過去曲を聴いていると、楽曲「So What」に度肝を抜かれました。ほぼ全体がコードCmのみでの展開、楽曲の常識をぶっ壊し、それでいてかっこいい。なんというグループなのでしょう(なお、新作アルバムもいいですね。私は「Mad In Love」が好きです)。
そんなJO1が大型展覧会『JO1 Exhibition “JO1 in Wonderland!”』を開催しています。東京・六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビュー。なるほど、J=日本、のなかで頂点=01を目指すという由来のJO1にすると、この頂上での開催は必然といえるのでしょうか。行ってみると、もちろん女性客が中心でしたが、想像よりもさまざまな世代が楽しんでいました。
ところで、この展覧会「JO1 in Wonderland!」ですが、ビジネス的にきわめて面白い側面がありましたので説明します。
●リアルとITを組み合わせた新たなエンタメビジネス
まず、この展覧会はロケトーンを使ったARサービスを味わえます。スマートフォンでロケトーンをダウンロードします。このロケトーンは特定のスポットを訪れると自動的に音声と音楽が流れてきます。
展覧会では、スマホ経由でBluetoothのヘッドセットを使い、視覚だけではなく聴覚とともに楽しめる仕組みになっています。展覧会の入場と同時に、耳元でメンバーが囁いてくれる仕組みです。また、ネタバレになるので詳細は省きますが、展覧会ではある行為が求められ、それに応じたユニークな音が楽しめます。
物理的な接触だけではなく、IT技術と組み合わせたイマーシブ(参加型で没入感のあるさま)な体験を提供する点は、これからのエンターテイメントの可能性として示唆的です。スマホのアプリ経由でメンバーのAR画像も入手できる仕組みです。
また、この展覧会では、ここだけでしか観られない映像によるライブ経験を楽しめます。壁いっぱいに広がった動画を観ながら、ライブの最前列にいる気持ちになるものです。これを観られるだけで行く価値があり、ファンもそう感じでしょう。
実際のライブだけではなく、アーティストがその場に不在であっても、臨場感のある経験によって新たな感動を与えるとは、これからのイベントの潮流となるはずです。
●ファンの熱量をアナログで「見える化」する仕組み
そして私が興味深かったのは、IT技術を活用した展覧会であったにもかかわらず、最後のスポットは手書きのふせんを貼るメッセージエリアだった点です。しかし、ファンの手書き、というアナログさにより、ファンの熱量を物理的に感じられるのです。リアルだけではなくITも使ったイマーシブであり、しかしデジタルなメッセージ投稿ではなくペンとふせんというアナログでもある。
なるほど。ここでやっと私はJO1がこの展覧会を開催する必然性を思い至りました。アイドルでもあり本格アーティストでもあり、POPでもありソウルでもある……。多様な世界を行き来するJO1ならではの展覧会は、このような越境の形式でなければならなかったのです。
JO1は楽曲の面白さとともに、展覧会の試みも新しいといえます。そしてJO1の取り組みはこれからのエンタメビジネスの可能性をも示しています。
■プロフィール
JO1はいわずと知れたボーイズグループです。
たまたま2021年に耳にした名曲「Born To Be Wild」の衝撃は忘れられません。恐るべき完成度でした。無駄に重ねないコーラスワーク、多連符とロングトーンの使い分け、ファルセットとラップの絶妙な組み合わせ……。どこをぶったぎってもサビといえる新たな曲構成でした。オケも最高でした。シンプルでグルーブなベース、カッティング、ドラミング。リズムダウンとアップによる盛り上げも見事です。「これはすごい」というのが私の感想です。
その後にJO1の過去曲を聴いていると、楽曲「So What」に度肝を抜かれました。ほぼ全体がコードCmのみでの展開、楽曲の常識をぶっ壊し、それでいてかっこいい。なんというグループなのでしょう(なお、新作アルバムもいいですね。私は「Mad In Love」が好きです)。
そんなJO1が大型展覧会『JO1 Exhibition “JO1 in Wonderland!”』を開催しています。東京・六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビュー。なるほど、J=日本、のなかで頂点=01を目指すという由来のJO1にすると、この頂上での開催は必然といえるのでしょうか。行ってみると、もちろん女性客が中心でしたが、想像よりもさまざまな世代が楽しんでいました。
ところで、この展覧会「JO1 in Wonderland!」ですが、ビジネス的にきわめて面白い側面がありましたので説明します。
●リアルとITを組み合わせた新たなエンタメビジネス
まず、この展覧会はロケトーンを使ったARサービスを味わえます。スマートフォンでロケトーンをダウンロードします。このロケトーンは特定のスポットを訪れると自動的に音声と音楽が流れてきます。
展覧会では、スマホ経由でBluetoothのヘッドセットを使い、視覚だけではなく聴覚とともに楽しめる仕組みになっています。展覧会の入場と同時に、耳元でメンバーが囁いてくれる仕組みです。また、ネタバレになるので詳細は省きますが、展覧会ではある行為が求められ、それに応じたユニークな音が楽しめます。
物理的な接触だけではなく、IT技術と組み合わせたイマーシブ(参加型で没入感のあるさま)な体験を提供する点は、これからのエンターテイメントの可能性として示唆的です。スマホのアプリ経由でメンバーのAR画像も入手できる仕組みです。
また、この展覧会では、ここだけでしか観られない映像によるライブ経験を楽しめます。壁いっぱいに広がった動画を観ながら、ライブの最前列にいる気持ちになるものです。これを観られるだけで行く価値があり、ファンもそう感じでしょう。
実際のライブだけではなく、アーティストがその場に不在であっても、臨場感のある経験によって新たな感動を与えるとは、これからのイベントの潮流となるはずです。
●ファンの熱量をアナログで「見える化」する仕組み
そして私が興味深かったのは、IT技術を活用した展覧会であったにもかかわらず、最後のスポットは手書きのふせんを貼るメッセージエリアだった点です。しかし、ファンの手書き、というアナログさにより、ファンの熱量を物理的に感じられるのです。リアルだけではなくITも使ったイマーシブであり、しかしデジタルなメッセージ投稿ではなくペンとふせんというアナログでもある。
なるほど。ここでやっと私はJO1がこの展覧会を開催する必然性を思い至りました。アイドルでもあり本格アーティストでもあり、POPでもありソウルでもある……。多様な世界を行き来するJO1ならではの展覧会は、このような越境の形式でなければならなかったのです。
JO1は楽曲の面白さとともに、展覧会の試みも新しいといえます。そしてJO1の取り組みはこれからのエンタメビジネスの可能性をも示しています。
■プロフィール
坂口孝則(さかぐち・たかのり)
1978年生まれ。福岡放送『めんたいワイド』(隔週)、TBSラジオ『日本リアライズpresents 篠田麻里子のGOOD LIFE LAB!』など出演。日本テレビ系『スッキリ』木曜コメンテーターも担当していた。趣味はメタルのライブに行くことで、音楽をこよなく愛する調達・購買コンサルタント、講演家。未来調達研究所株式会社所属。大阪大学経済学部卒業後、電気メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買に従業。現在は、製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書は『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『未来の稼ぎ方』『製造業の現場バイヤーが教える 調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買の教科書』など。直近で『買い負ける日本』(幻冬舎刊)を発売した。■エンタメニュースを“経済視点”で解説【オリコンエンタメビズ】
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2024/03/08