ロックバンド・LUNA SEAのギタリスト、INORANが監修するプロユースイヤホン「Clear force INRN」の製品化を目指すクラウドファンディングプロジェクトが、1月27日にスタートした。
同製品は、総合音響機器メーカー・ORBとのコラボで製品化を目指す有線イヤホンとなり、INORANのチューニングによるオリジナルケーブルの採用など、さまざまなこだわりが注ぎ込まれた。その上で、海外製の高純度無酸素銅(OFC)銀メッキ線を使用したスタンダードモデル「INORAN×ORB Clear Force INRN SP」と、国産純銅線と真鍮プラグを使用したグレードアップモデル「INORAN×ORB Clear Force INRN PC」の2種がそろえられている。
プロジェクト始動日の当日には、数多くのイヤホンを手がけてきた凛として時雨のピエール中野をゲストに迎え、生配信のトーク番組で同製品の魅力を伝えたINORAN。本インタビューは、そんな番組の放送直後に行ったインタビューとなる。
■「何かを作りたいと思うときには必ず何らかの理由がある」
――まずはプロジェクト始動のきっかけから教えていただけますか?
【INORAN】すべてのタイミングがよかったという一言に尽きます。僕自身、漠然と何かモノ作りがしたいと思っていて、ちょうどそのときに知り合いの方からピエールさんの記事などを見せてもらい、「同じ業界でこうやってこだわってモノづくりに励んでいる人がいるんだ」とうれしくなったんです。
――結果、漠然としていた創作願望がイヤホンに向いたんですね。
【INORAN】はい。僕は2017年に、米国・ニューヨークのヘッドホン&イヤホンブランド「MASTER&DYNAMIC」で自分モデルのイヤホン(500台限定で製作されたコラボモデル「ME03 INORAN EDITION」)を作ったんですが、その過程でORBの竹内さん(同社代表取締役・竹内啓敏氏)とも知り合ったんです。なのでもとを辿れば、実はもう5年ぐらい前からの流れになるんですよね。そういったいろいろな点と点がつながって、今回のプロジェクトに至ったんです。
――「MASTER&DYNAMIC」のコラボモデルは、同社の密閉型イヤホン「ME03」をベースとしたプレミアムモデルという位置づけでした。
【INORAN】その頃から、自分の名前を冠したイヤホンをイチから作ってみたいという願望はあったんです。リチューニングなどではなく、最初から製作に携わるという形で。でも、僕にはそういった技術やノウハウがないので、実際に動き出すところまではなかなか至らなくて。でも、僕もプロのミュージシャンとして「情熱があればどんなことだってできる」ということを奏でているわけで。
――創作願望の高まりと、これまで音楽に込めてきたメッセージ、そして人とのつながりが、プロジェクト始動への決意に結実したと。
【INORAN】「僕もイヤホンを作ってみたい」と思ったときに、自分の周りには竹内さんやピエールさんのような素晴らしい人がたくさんいて、そういった人たちの力を借りることで完成が目指せるんじゃないかと、道筋が見えたんですよね。
――フェンダーでご自身のシグネチュアモデル・INORAN Jazzmasterを開発されたエピソードを思い出しました。INORANさん自身がJazzmasterを所有していた背景もありつつ、最終的にはマスタービルダーのデニス・ガルスカ氏や同社チームビルドのメンバーの人柄に惚れたと話されていましたね。
【INORAN】確かに近い部分があると思います。何かを作りたいと思うときには必ず何らかの理由があって、影響を与えてくれたり、刺激をくれる人がいるんです。それが結果的にフェンダーでのギター開発につながったように、今回もこうやってイヤホンの世界に入ることができたということですね。
――ピエールさんは、INORANさんからイヤホン製作のお話を聞いた際、率直にどのように感じましたか?
【ピエール中野】単純にうれしかったですよね。ミュージシャンチューニングによるイヤホンが発売されるとなると、まず「あ、◯◯さんがイヤホンを作るんだ」って注目されるじゃないですか。で、みんなが「イヤホンを変えると音が変わるのかな?」といった興味を持ってくれるようになる。ミュージシャンモデルは、大きなキッカケの1つになると思うんです。今回、それをINORANさんという…僕が大好きなバンドのギタリストが担ってくれるということで、とにかくうれしかったです。
――近年では、ピエールさんをはじめ、HEY-SMITHの猪狩秀平さんやアイナ・ジ・エンドさんなど、アーティストからリスニング環境に対するアティチュードが製品として示されることも、1つのムーブメントとなってきているように感じています。
【ピエール中野】今言ったように、イヤホンが注目を浴びる機会になるという点ですばらしい取り組みだと思いますし、ユーザーの楽しみが広がると思うので、個人的にはどんどんやっていってほしいです。
「Clear Force INRN」における“プロユース”の定義=「プロが自信を持って届けるクオリティー」
――今回発表された「Clear Force INRN」は、「プロユースの音の完全再現を目指した、ハンドメイドのイヤホン」と銘打たれています。そもそも“プロユース”の製品とはどういったものなのでしょうか?
【ピエール中野】まず、何をもって“プロユース”とするか…ですよね。例えばライブ演奏で使うイヤーモニターなのか、楽曲制作時のモニターなのか。制作の中でもレコーディング、ミックスの確認、マスタリングチェックでは用途がまったく変わってくるじゃないですか。そこで使われるイヤホンは全部“プロユース”だけど、全部違うんです(笑)。
【INORAN】そこの定義をハッキリさせないと答えづらいよね(笑)。
【ピエール中野】でも「Clear Force INRN」は、素材そのものの音というか、作り上げられた音楽をそのままストレートに届けるクオリティーを持ったイヤホンなので、そういう意味で“プロユース”と定義できるのかなと思いました。要は、作り手が届けたいと思う音をちゃんと出すイヤホンになっているんです。
【INORAN】そうだね。僕はプロじゃないですか…一応(笑)。
【ピエール中野】一応って…(笑)。
【INORAN】(笑)。つまり、今回の「Clear Force INRN」における“プロユース”の定義は、「プロを名乗っている人間が自信を持って届けるクオリティー」ということ。
【ピエール中野】僕が作っているピヤホンとINORANさんのイヤホンは、アプローチこそ違うけど、「作り手が届けたいと思う音を出す」という目的は一緒なんです。
――ピエールさんは、AVIOTとのコラボモデル「TE-Z1PNK」(通称「ピヤホン」)や、Hi-Unitからご自身監修モデル「HSE-A1000PN」(通称「有線ピヤホン」)シリーズをリリースしています。
【ピエール中野】ピヤホンの場合は、いわゆる“味つけ”と言って、音の定位や解像度などについて“もっとカッコよく聴かせるための調整”を基本にしています。要はライブ会場で感動する、グッと来るような音の周波帯が存在するんですけど、そこを過剰にではなく、どうやってほんのりと出すかということを細かく狙っているんですよね。
【INORAN】僕は今回が初めてなので、ORBの竹内さんをはじめとするプロジェクトチームのみんなが「いい音だ」と感じるもの、みんなの意見を集めながら、もちろん僕自身が聴いて「いい音だ」と納得できるものを目指しました。そういう、さまざまな分野の音のプロみんなが提示する「いい音」が、今回のイヤホンになっています。
――INORAN Jazzmasterは、ご自身が所有されている1950年代製Jazzmasterのネックシェイプをもとにして製作されましたが、「Clear Force INRN」に関してリファレンスとなったモデルはなかったんでしょうか?
【INORAN】ないですね。世界の状況は日々変わっていくし、世の中の音楽も当然ながら変わっていくものだし、イヤホンのトレンドもそれに合わせて変化するじゃないですか。だけど今回のプロジェクトでは、そういった中で「“普遍的ないい音”ってなんだろうね」と考えるところから始めたわけです。結果、何かをモディファイするのではなく、それぞれのセクションの人が純粋に“いい音”を目指すことになった。そこがすごく大きいと思います。
【ピエール中野】だからこそ、ピュアな音がちゃんと伝わるようなイヤホンになっているんです。実はそれってすごく重要なことで、意外とこういったタイプのイヤホンってないんですよ。それをちゃんとリスナーへの提案として出せるのは、すばらしいことだなと思っていました。
「ギターを35年弾いていても、“いい音”の答えなんて出ない――求め続けるものだから」
――「Clear Force INRN」がもしシリーズ化する際には、今回のモデルが基準になるわけですね。
【INORAN】なったらいいですよね。今回のプロジェクトが成功しないとならないけど(笑)。
――期待しています!
【INORAN】ギターを35年弾いていても、“いい音”の答えなんて出ないわけですよ。結局それって求め続けるものだから。ピエールくんもそこを探求しているからこそ、ピヤホンを第7弾とかまで作り続けているんだと思う。イヤホンに関して言えば、僕はまだ探求を始めたばかり。だけど、始めたばかりの今しか出せないものもあって、ピエールくんみたいに第7弾までやったところでしか出せないものもあるんです。アルバムで言ったら、1枚目と7枚目は全然違いますよね。そういう旅はやっぱり楽しいものですよ。
【ピエール中野】僕も最初は難しかったです。手探りの状態で、何を提案するべきなのかかなり悩んだし、正直なところ有線イヤホンの第1弾はもっと追い込めたなと思っています。とにかく解像度が高くて、定位が良くて、「イヤホンを変えるとこんなに音が変わるんだ」ということをわかりやすく表現したつもりだったんですが、オーディオ業界の方々からは結構厳しい意見もいただいたので。
【INORAN】やっぱりそうだったんだね。
【ピエール中野】はい。でも結果、第3〜4弾くらいでオーディオ系のライター周りからも評価を得られるようなイヤホンが作れたんですよ。だから、INORANさんが言ったように、作り続けることによって見えてくる世界はあると僕も思います。
――他者からの評価と試行錯誤を繰り返す道のりですね。
【ピエール中野】音の評価って非常に曖昧なんですよ。「好み」とぶった切られてしまったら、それでおしまいなので。そういう中で、自分がイヤホンを出す上で求められていることと、録音する側の手法の変化や、みんながどんな風に音楽を聴いているのかっていうところまで含めたトレンドをちゃんと意識し続けなきゃいけない。楽しいんですけど、こんなに大変なんだなって(笑)。
――楽器以上にサイクルが顕著ですから。
【ピエール中野】そうですね。技術がどんどん進化していくので、そこに合わせてどういう調整をしていくのか、どうやって売り出していくのか…みたいな。例えば新しいイヤホンが出ると、だいたいガジェット系のYouTuberが紹介するので、彼らがどこを評価しているのかも踏まえて開発を進めていくんです。その結果、僕は個人的にノイズキャンセリングが好きじゃないから自分のモデルには載せたくないけど、ガジェット好きの人たちからすると必須の機能だし、メーカーも付けたがっている…というせめぎ合いが起きたりもします(笑)。
――ガジェット情報の発信のされ方にまで目を向けているんですね。
【ピエール中野】「メーカーの人よりもメーカーの人」って言われるくらいの営業マンなので(笑)。イヤホンは日常的に使うものだし、ユーザー数も圧倒的に多いし、誰もが使ったことのあるものだからこそ、サイクルがすごく早いんです。なので、製品としてどんなアプローチをするのかっていうことと同じくらい、見せ方や打ち出し方も重要で。その点、INORANさんの「Clear Force INRN」はすごくわかりやすい。「音楽そのものを純粋な音でしっかりと届ける」という目的が明確なので、本当にいいプロジェクトを始めていただいたなと感じています。
■「果てしない世界はすばらしい。人生もそう、モノづくりもそう」
――ピエールさんなら「Clear Force INRN」をどういう人に勧めますか?
【ピエール中野】まずはLUNA SEAが好きな人ですよ。それはもう間違いない。こういうことはちゃんと言った方がいいと思うんですが、INORANさんが作ったイヤホンでLUNA SEAを聴く喜びっていうのは絶対に存在する。それってすごく重要なことなんです。音そのものももちろん大事だけど、そういう心理的な要因があるのは当たり前のことじゃないですか(笑)。個人的には、そこが上手く伝わっていけばいいなって思いますね。
――ピュアなチューニングが施されている「Clear Force INRN」ならではの楽しみ方も?
【ピエール中野】もちろんです。すごくピュアな音だから、音楽そのものの良し悪しがどちらも出るんですけど、そこを楽しめるのが魅力。新しい発見がすごくたくさんあると思うんですよね。「今までのイヤホンだとこうだったけど、『Clear Force INRN』で聴くとこんな風になるんだ」みたいな。それが音楽そのものへの楽しさとか、好きになる気持ちを高めていく気がしています。で、それはたぶん、INORANさん自身がそういった思いを強く持っている方だからこそだと思うんです。
【INORAN】うん、僕も純粋に音を楽しんでもらいたいということに尽きますね。一緒にこのプロジェクトで動いてくれたチームのみんなは、本当に情熱を持った方ばかりなので、その情熱は確実にイヤホンにも乗っていると思う。そういうものを使って音楽を聴いて、豊かな毎日、時間をすごしてくれればいいなと。今回のイヤホンはその点で、いろいろなジャンル、世代、場所で生きている方に、フィットするようなものが作れたのかなと思います。
――今回のプロジェクトを通じて、ご自身の音楽観にも影響はありましたか?
【INORAN】絶対にあると思いますね。でも、それは現時点で具体的にこうと言えるものではなくて、たぶん次に作るものに自然と表れてくるものなんだと思う。今まで見えづらかったところが見えたことによって、自分の中での景色の解像度はまた限りなく上がっていくし、音の解像度も上がっていくだろうし。
――等身大の自分を音楽として描いてきたINORANさんだからこそ、新たなチャレンジを経た後にどんな音楽を生み出すのかという期待も高まります。
【INORAN】こうやってオーディオの世界に一歩踏み入れたことで、本当に果てしない世界だということが改めてわかったんです。果てしない世界ってすばらしいじゃないですか。人生もそうだし、モノづくりもそう。なんか…ときめくんですよね(笑)。自分の知らない世界を知っている人と話したり、交流したりすると。知らなかったものを採り入れることで、自分自身の人生がさらに豊かになっていくと思う。このイヤホンを手に取ってくれる人も、きっと新しい世界が見えてくると思うので、ぜひ素敵な発見の旅を体験してほしいですね。
■スタンダードモデル「Clear Force INRN SP」基本仕様
・構成:1BA+専用音響チャンバー
・インピーダンス:10.2Ω
・感度:104dB
・再生周波数帯域:20Hz - 18.5KHz
・質量:4g
・製造国:日本
▼付属ケーブル:Cable for the Silver Plating
・長さ:約1.2メートル
・機器側プラグ:3.5ファイ ステレオミニ金メッキプラグ
・イヤホン側プラグ:Custom IEM 2pin端子
■グレードアップモデル「Clear Force INRN PC」基本仕様
・構成:1BA+専用音響チャンバー
・インピーダンス:10.2Ω
・感度:104dB
・再生周波数帯域:20Hz - 18.5KHz
・質量:4g
・製造国:日本
▼付属ケーブル:Cable for the Pure Copper
・長さ:約1.2m
・機器側プラグ:3.5ファイ ステレオミニ金メッキプラグ
・イヤホン側プラグ:Custom IEM 2pin 端子
■共通付属品
・特装豪華パッケージケース
・INORAN直筆サイン入りギャランティカード
・イヤピース(SS、S、MS、M、ML、Lの6サイズ)
・説明書
・保証書
■「Clear Force INRN」先行試聴可能イベント
『冬のヘッドフォン祭 mini 2024』
日時:2月10日(土)11:00〜18:30
会場:ステーションコンファレンス東京(東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー)6F
入場料:入場無料(事前登録不要)
ORBブース:602A/602B/602C/602D(5番ブース)
同製品は、総合音響機器メーカー・ORBとのコラボで製品化を目指す有線イヤホンとなり、INORANのチューニングによるオリジナルケーブルの採用など、さまざまなこだわりが注ぎ込まれた。その上で、海外製の高純度無酸素銅(OFC)銀メッキ線を使用したスタンダードモデル「INORAN×ORB Clear Force INRN SP」と、国産純銅線と真鍮プラグを使用したグレードアップモデル「INORAN×ORB Clear Force INRN PC」の2種がそろえられている。
プロジェクト始動日の当日には、数多くのイヤホンを手がけてきた凛として時雨のピエール中野をゲストに迎え、生配信のトーク番組で同製品の魅力を伝えたINORAN。本インタビューは、そんな番組の放送直後に行ったインタビューとなる。
――まずはプロジェクト始動のきっかけから教えていただけますか?
【INORAN】すべてのタイミングがよかったという一言に尽きます。僕自身、漠然と何かモノ作りがしたいと思っていて、ちょうどそのときに知り合いの方からピエールさんの記事などを見せてもらい、「同じ業界でこうやってこだわってモノづくりに励んでいる人がいるんだ」とうれしくなったんです。
――結果、漠然としていた創作願望がイヤホンに向いたんですね。
【INORAN】はい。僕は2017年に、米国・ニューヨークのヘッドホン&イヤホンブランド「MASTER&DYNAMIC」で自分モデルのイヤホン(500台限定で製作されたコラボモデル「ME03 INORAN EDITION」)を作ったんですが、その過程でORBの竹内さん(同社代表取締役・竹内啓敏氏)とも知り合ったんです。なのでもとを辿れば、実はもう5年ぐらい前からの流れになるんですよね。そういったいろいろな点と点がつながって、今回のプロジェクトに至ったんです。
――「MASTER&DYNAMIC」のコラボモデルは、同社の密閉型イヤホン「ME03」をベースとしたプレミアムモデルという位置づけでした。
【INORAN】その頃から、自分の名前を冠したイヤホンをイチから作ってみたいという願望はあったんです。リチューニングなどではなく、最初から製作に携わるという形で。でも、僕にはそういった技術やノウハウがないので、実際に動き出すところまではなかなか至らなくて。でも、僕もプロのミュージシャンとして「情熱があればどんなことだってできる」ということを奏でているわけで。
――創作願望の高まりと、これまで音楽に込めてきたメッセージ、そして人とのつながりが、プロジェクト始動への決意に結実したと。
【INORAN】「僕もイヤホンを作ってみたい」と思ったときに、自分の周りには竹内さんやピエールさんのような素晴らしい人がたくさんいて、そういった人たちの力を借りることで完成が目指せるんじゃないかと、道筋が見えたんですよね。
――フェンダーでご自身のシグネチュアモデル・INORAN Jazzmasterを開発されたエピソードを思い出しました。INORANさん自身がJazzmasterを所有していた背景もありつつ、最終的にはマスタービルダーのデニス・ガルスカ氏や同社チームビルドのメンバーの人柄に惚れたと話されていましたね。
【INORAN】確かに近い部分があると思います。何かを作りたいと思うときには必ず何らかの理由があって、影響を与えてくれたり、刺激をくれる人がいるんです。それが結果的にフェンダーでのギター開発につながったように、今回もこうやってイヤホンの世界に入ることができたということですね。
――ピエールさんは、INORANさんからイヤホン製作のお話を聞いた際、率直にどのように感じましたか?
【ピエール中野】単純にうれしかったですよね。ミュージシャンチューニングによるイヤホンが発売されるとなると、まず「あ、◯◯さんがイヤホンを作るんだ」って注目されるじゃないですか。で、みんなが「イヤホンを変えると音が変わるのかな?」といった興味を持ってくれるようになる。ミュージシャンモデルは、大きなキッカケの1つになると思うんです。今回、それをINORANさんという…僕が大好きなバンドのギタリストが担ってくれるということで、とにかくうれしかったです。
――近年では、ピエールさんをはじめ、HEY-SMITHの猪狩秀平さんやアイナ・ジ・エンドさんなど、アーティストからリスニング環境に対するアティチュードが製品として示されることも、1つのムーブメントとなってきているように感じています。
【ピエール中野】今言ったように、イヤホンが注目を浴びる機会になるという点ですばらしい取り組みだと思いますし、ユーザーの楽しみが広がると思うので、個人的にはどんどんやっていってほしいです。
「Clear Force INRN」における“プロユース”の定義=「プロが自信を持って届けるクオリティー」
――今回発表された「Clear Force INRN」は、「プロユースの音の完全再現を目指した、ハンドメイドのイヤホン」と銘打たれています。そもそも“プロユース”の製品とはどういったものなのでしょうか?
【ピエール中野】まず、何をもって“プロユース”とするか…ですよね。例えばライブ演奏で使うイヤーモニターなのか、楽曲制作時のモニターなのか。制作の中でもレコーディング、ミックスの確認、マスタリングチェックでは用途がまったく変わってくるじゃないですか。そこで使われるイヤホンは全部“プロユース”だけど、全部違うんです(笑)。
【INORAN】そこの定義をハッキリさせないと答えづらいよね(笑)。
【ピエール中野】でも「Clear Force INRN」は、素材そのものの音というか、作り上げられた音楽をそのままストレートに届けるクオリティーを持ったイヤホンなので、そういう意味で“プロユース”と定義できるのかなと思いました。要は、作り手が届けたいと思う音をちゃんと出すイヤホンになっているんです。
【INORAN】そうだね。僕はプロじゃないですか…一応(笑)。
【ピエール中野】一応って…(笑)。
【INORAN】(笑)。つまり、今回の「Clear Force INRN」における“プロユース”の定義は、「プロを名乗っている人間が自信を持って届けるクオリティー」ということ。
【ピエール中野】僕が作っているピヤホンとINORANさんのイヤホンは、アプローチこそ違うけど、「作り手が届けたいと思う音を出す」という目的は一緒なんです。
――ピエールさんは、AVIOTとのコラボモデル「TE-Z1PNK」(通称「ピヤホン」)や、Hi-Unitからご自身監修モデル「HSE-A1000PN」(通称「有線ピヤホン」)シリーズをリリースしています。
【ピエール中野】ピヤホンの場合は、いわゆる“味つけ”と言って、音の定位や解像度などについて“もっとカッコよく聴かせるための調整”を基本にしています。要はライブ会場で感動する、グッと来るような音の周波帯が存在するんですけど、そこを過剰にではなく、どうやってほんのりと出すかということを細かく狙っているんですよね。
【INORAN】僕は今回が初めてなので、ORBの竹内さんをはじめとするプロジェクトチームのみんなが「いい音だ」と感じるもの、みんなの意見を集めながら、もちろん僕自身が聴いて「いい音だ」と納得できるものを目指しました。そういう、さまざまな分野の音のプロみんなが提示する「いい音」が、今回のイヤホンになっています。
――INORAN Jazzmasterは、ご自身が所有されている1950年代製Jazzmasterのネックシェイプをもとにして製作されましたが、「Clear Force INRN」に関してリファレンスとなったモデルはなかったんでしょうか?
【INORAN】ないですね。世界の状況は日々変わっていくし、世の中の音楽も当然ながら変わっていくものだし、イヤホンのトレンドもそれに合わせて変化するじゃないですか。だけど今回のプロジェクトでは、そういった中で「“普遍的ないい音”ってなんだろうね」と考えるところから始めたわけです。結果、何かをモディファイするのではなく、それぞれのセクションの人が純粋に“いい音”を目指すことになった。そこがすごく大きいと思います。
【ピエール中野】だからこそ、ピュアな音がちゃんと伝わるようなイヤホンになっているんです。実はそれってすごく重要なことで、意外とこういったタイプのイヤホンってないんですよ。それをちゃんとリスナーへの提案として出せるのは、すばらしいことだなと思っていました。
「ギターを35年弾いていても、“いい音”の答えなんて出ない――求め続けるものだから」
――「Clear Force INRN」がもしシリーズ化する際には、今回のモデルが基準になるわけですね。
【INORAN】なったらいいですよね。今回のプロジェクトが成功しないとならないけど(笑)。
――期待しています!
【INORAN】ギターを35年弾いていても、“いい音”の答えなんて出ないわけですよ。結局それって求め続けるものだから。ピエールくんもそこを探求しているからこそ、ピヤホンを第7弾とかまで作り続けているんだと思う。イヤホンに関して言えば、僕はまだ探求を始めたばかり。だけど、始めたばかりの今しか出せないものもあって、ピエールくんみたいに第7弾までやったところでしか出せないものもあるんです。アルバムで言ったら、1枚目と7枚目は全然違いますよね。そういう旅はやっぱり楽しいものですよ。
【ピエール中野】僕も最初は難しかったです。手探りの状態で、何を提案するべきなのかかなり悩んだし、正直なところ有線イヤホンの第1弾はもっと追い込めたなと思っています。とにかく解像度が高くて、定位が良くて、「イヤホンを変えるとこんなに音が変わるんだ」ということをわかりやすく表現したつもりだったんですが、オーディオ業界の方々からは結構厳しい意見もいただいたので。
【INORAN】やっぱりそうだったんだね。
【ピエール中野】はい。でも結果、第3〜4弾くらいでオーディオ系のライター周りからも評価を得られるようなイヤホンが作れたんですよ。だから、INORANさんが言ったように、作り続けることによって見えてくる世界はあると僕も思います。
――他者からの評価と試行錯誤を繰り返す道のりですね。
【ピエール中野】音の評価って非常に曖昧なんですよ。「好み」とぶった切られてしまったら、それでおしまいなので。そういう中で、自分がイヤホンを出す上で求められていることと、録音する側の手法の変化や、みんながどんな風に音楽を聴いているのかっていうところまで含めたトレンドをちゃんと意識し続けなきゃいけない。楽しいんですけど、こんなに大変なんだなって(笑)。
――楽器以上にサイクルが顕著ですから。
【ピエール中野】そうですね。技術がどんどん進化していくので、そこに合わせてどういう調整をしていくのか、どうやって売り出していくのか…みたいな。例えば新しいイヤホンが出ると、だいたいガジェット系のYouTuberが紹介するので、彼らがどこを評価しているのかも踏まえて開発を進めていくんです。その結果、僕は個人的にノイズキャンセリングが好きじゃないから自分のモデルには載せたくないけど、ガジェット好きの人たちからすると必須の機能だし、メーカーも付けたがっている…というせめぎ合いが起きたりもします(笑)。
――ガジェット情報の発信のされ方にまで目を向けているんですね。
【ピエール中野】「メーカーの人よりもメーカーの人」って言われるくらいの営業マンなので(笑)。イヤホンは日常的に使うものだし、ユーザー数も圧倒的に多いし、誰もが使ったことのあるものだからこそ、サイクルがすごく早いんです。なので、製品としてどんなアプローチをするのかっていうことと同じくらい、見せ方や打ち出し方も重要で。その点、INORANさんの「Clear Force INRN」はすごくわかりやすい。「音楽そのものを純粋な音でしっかりと届ける」という目的が明確なので、本当にいいプロジェクトを始めていただいたなと感じています。
■「果てしない世界はすばらしい。人生もそう、モノづくりもそう」
――ピエールさんなら「Clear Force INRN」をどういう人に勧めますか?
【ピエール中野】まずはLUNA SEAが好きな人ですよ。それはもう間違いない。こういうことはちゃんと言った方がいいと思うんですが、INORANさんが作ったイヤホンでLUNA SEAを聴く喜びっていうのは絶対に存在する。それってすごく重要なことなんです。音そのものももちろん大事だけど、そういう心理的な要因があるのは当たり前のことじゃないですか(笑)。個人的には、そこが上手く伝わっていけばいいなって思いますね。
――ピュアなチューニングが施されている「Clear Force INRN」ならではの楽しみ方も?
【ピエール中野】もちろんです。すごくピュアな音だから、音楽そのものの良し悪しがどちらも出るんですけど、そこを楽しめるのが魅力。新しい発見がすごくたくさんあると思うんですよね。「今までのイヤホンだとこうだったけど、『Clear Force INRN』で聴くとこんな風になるんだ」みたいな。それが音楽そのものへの楽しさとか、好きになる気持ちを高めていく気がしています。で、それはたぶん、INORANさん自身がそういった思いを強く持っている方だからこそだと思うんです。
【INORAN】うん、僕も純粋に音を楽しんでもらいたいということに尽きますね。一緒にこのプロジェクトで動いてくれたチームのみんなは、本当に情熱を持った方ばかりなので、その情熱は確実にイヤホンにも乗っていると思う。そういうものを使って音楽を聴いて、豊かな毎日、時間をすごしてくれればいいなと。今回のイヤホンはその点で、いろいろなジャンル、世代、場所で生きている方に、フィットするようなものが作れたのかなと思います。
――今回のプロジェクトを通じて、ご自身の音楽観にも影響はありましたか?
【INORAN】絶対にあると思いますね。でも、それは現時点で具体的にこうと言えるものではなくて、たぶん次に作るものに自然と表れてくるものなんだと思う。今まで見えづらかったところが見えたことによって、自分の中での景色の解像度はまた限りなく上がっていくし、音の解像度も上がっていくだろうし。
――等身大の自分を音楽として描いてきたINORANさんだからこそ、新たなチャレンジを経た後にどんな音楽を生み出すのかという期待も高まります。
【INORAN】こうやってオーディオの世界に一歩踏み入れたことで、本当に果てしない世界だということが改めてわかったんです。果てしない世界ってすばらしいじゃないですか。人生もそうだし、モノづくりもそう。なんか…ときめくんですよね(笑)。自分の知らない世界を知っている人と話したり、交流したりすると。知らなかったものを採り入れることで、自分自身の人生がさらに豊かになっていくと思う。このイヤホンを手に取ってくれる人も、きっと新しい世界が見えてくると思うので、ぜひ素敵な発見の旅を体験してほしいですね。
■スタンダードモデル「Clear Force INRN SP」基本仕様
・構成:1BA+専用音響チャンバー
・インピーダンス:10.2Ω
・感度:104dB
・再生周波数帯域:20Hz - 18.5KHz
・質量:4g
・製造国:日本
▼付属ケーブル:Cable for the Silver Plating
・長さ:約1.2メートル
・機器側プラグ:3.5ファイ ステレオミニ金メッキプラグ
・イヤホン側プラグ:Custom IEM 2pin端子
■グレードアップモデル「Clear Force INRN PC」基本仕様
・構成:1BA+専用音響チャンバー
・インピーダンス:10.2Ω
・感度:104dB
・再生周波数帯域:20Hz - 18.5KHz
・質量:4g
・製造国:日本
▼付属ケーブル:Cable for the Pure Copper
・長さ:約1.2m
・機器側プラグ:3.5ファイ ステレオミニ金メッキプラグ
・イヤホン側プラグ:Custom IEM 2pin 端子
■共通付属品
・特装豪華パッケージケース
・INORAN直筆サイン入りギャランティカード
・イヤピース(SS、S、MS、M、ML、Lの6サイズ)
・説明書
・保証書
■「Clear Force INRN」先行試聴可能イベント
『冬のヘッドフォン祭 mini 2024』
日時:2月10日(土)11:00〜18:30
会場:ステーションコンファレンス東京(東京都千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー)6F
入場料:入場無料(事前登録不要)
ORBブース:602A/602B/602C/602D(5番ブース)
現在、応募受付中!!??
— INORAN_OFFICIAL (@INORAN_OFFICIAL) January 29, 2024
プロユースの音を完全再現!
INORAN監修の有線イヤホン「Clear Force INRN」製品化を目指し、クラウドファンディングがスタート!!!
制作インタビュー、製品レビューも必読??
▼プロジェクトサイトはコチラ!https://t.co/JlerIsYp9x pic.twitter.com/Va1pbIHiAj
2024/02/07




