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令和の演歌・歌謡曲界を盛り立てる コロナ禍を乗り越えた演歌第7世代のSNS戦略

 演歌・歌謡曲界を盛り上げたいという思いから、レコード会社や所属事務所の枠を越え、 「演歌第7世代」として一致団結して活動している演歌歌手の辰巳ゆうと二見颯一新浜レオン彩青青山新の5人。2021年からは「我ら演歌第7世代!スペシャルコンサート」を開催し、7回目となった今年10月15日も、オリジナル曲だけでなく、カバー曲や息のあったトークなど、趣向を凝らしたステージを展開。今や演歌・歌謡曲に馴染みがなかった若い世代にもファン層を広げ、絶大な人気を誇っている。彼らがデビューした平成の終わりから令和の初めといえば、コロナ禍真っただ中。20歳前後のスターの原石たちがキャンペーンやライブも開けない中、いかに人気を築き上げてきたか。個性豊かなその頑張りに迫った。

2021年から開催している「我ら演歌第7世代!スペシャルコンサート」より

2021年から開催している「我ら演歌第7世代!スペシャルコンサート」より

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■デビュー直後にコロナ禍に見舞われた 新時代の演歌界を担う新星5人

 戦後復興期に活躍した春日八郎、三橋美智也から数えて7代目ということからその名がついたといわれる「演歌第7世代」。5人のうち一番先にスポットライトを浴びたのは、「力いっぱい、演歌です!」をキャッチコピーに2018年1月17日、20歳でデビューした辰巳ゆうとだった。大学で英語を学ぶかたわら、歌手デビューを目指して演歌のストリートライブを行ない修業を積んだという異色の経歴の持ち主で、その甘いルックスから「現役イケメン大学生演歌歌手」と称された。

辰巳ゆうと

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 続く2人目は、19年3月6日にデビューした二見颯一。5歳から民謡を習い、中高生時代には全国大会で優勝するなど数々の賞を獲得した二見は、日本クラウンの新人歌手オーディションでグランプリを受賞。作曲家の水森英夫氏の門下生としてレッスンに励んだ後、辰巳と同じく20歳、大学2年生のときに、民謡由来の伸びのある爽やかな歌声から「やまびこボイス」というキャッチフレーズでデビューを飾った。

 その2ヶ月後、令和が始まった19年5月1日に22歳で歌手人生のスタートを切ったのが、新浜レオン。大学時代にミスターコンテストでグランプリを獲得したルックスと、野球で鍛えた逞しい体躯、演歌歌手の父親・高城靖雄譲りの高い歌唱力を持つ新浜は、B’z倉木麻衣大黒摩季らが所属するB ZONEグループ初の演歌・歌謡曲シンガーとしても脚光を浴びた。

新浜レオン

新浜レオン

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 新浜に続き、19年の6月26日にデビューしたのが、唄、三味線、尺八を操る「三刀流歌手」として注目された彩青だ。5歳から民謡、7歳から津軽三味線を習い始め、11歳という若さで細川たかしの目に留まり、5年間演歌界の真髄を学んだ後の、16歳でのデビューだった。

 そして、5人目となるのは、20年2月5日に「歌にまっすぐな19歳」のキャッチフレーズでデビューした青山新。中学2年生のときに出場したカラオケ大会をきっかけに、作曲家・水森英夫氏のもとで5年間修業。その後、テイチクエンタテインメント創立85周年、所属事務所の芸映創立60周年記念アーティストとして華々しい一歩を踏み出した。

 このように、平成の終りから令和の初めにかけて、新時代の演歌・歌謡曲界を担う新星としてデビューを飾った20代前後の5人。その大きな共通項は、デビュー直後にコロナ禍に見舞われたことだった。「不要不急」とまで言われ、大打撃を受けた音楽業界だが、演歌歌手にとって、自分の名前と曲を1人でも多くの人に知ってもらい、CDを買ってもらうためのキャンペーンができないのは死活問題。ましてや、まだ、名前が浸透しきれていないデビュー間もない新人歌手であれば、絶望的な気持ちになって当然だろう。

■「若い人たちにも演歌・歌謡曲の魅力を広めたい」SNSを活用し、ファン層を拡大

 しかし、この苦難を彼らは巧みに乗り越えていく。デジタルネイティブ世代の5人はすぐにSNSを駆使して、ネットサイン会や配信ライブなどを実施し、ファンとの交流を継続。さらにTwitterやブログやYouTubeチャンネルで、各々、個性を活かしたプライベート感満載の情報や企画を発信。ファンとの距離を縮めることはもちろん、それまで演歌・歌謡曲に興味のなかった中高生や同世代にまでファンを増やしていったのだ。

 その活用のうまさの象徴といえるのが、最新曲「捕まえて、今夜。」の振付の“窓ふきダンス”が関連動画再生回数7650万回(11月5日現在)を超えるなど大バズリした新浜レオンだ。ミュージックビデオ(MV)の歌詞が翻訳機能を使って英語、中国語、韓国語で表示されることを受け、新浜は自身のYouTubeチャンネルで、英・中・韓・仏・独・西など各国語での歌唱にもチャレンジ。グローバルにも訴求したことで、再生回数は驚異的な伸びを見せている。

 また、「デビューするまでJ-POPを聞いたことがなかった」という彩青は、自身のYouTubeチャンネルで、民謡のほか、X-JAPANの「FOREVER LOVE」やOfficial髭男dismの「Pretender」、DISH//の「猫」などJ-POPのヒット曲も披露。民謡で鍛えた彩青流J-POPは話題を呼び、新たな魅力を見せることでファンを増やしていった。

 その裏にあるのは、「演歌・歌謡界を盛り上げたい」という5人共通の思いだ。彩青と二見は幼い頃から民謡を習っていたが、他の3人も、演歌の道に進んだのは、幼い頃から家族の影響で演歌・歌謡曲に親しむ環境があったから。それゆえ、辰巳が「あこがれの氷川きよし先輩のように、若い人たちにも演歌の魅力を伝えられる存在になりたい」、新浜が「演歌・歌謡曲の魅力を若者や世界にも伝えられる歌手になりたい」と言うように、自分たちが注目を集めることで、それまで演歌・歌謡曲を聞かなかった若者たちを演歌・歌謡界に取り込みたいという思いは、5人に共通するデビュー当時からの強い思いだ。

令和の演歌・歌謡曲界を盛り立てる演歌第7世代の5人

令和の演歌・歌謡曲界を盛り立てる演歌第7世代の5人

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■個性を活かしてさまざまな楽曲に挑戦 互いの存在も刺激に

 さらにもう1点、5人に共通しているのは、「演歌を軸に、いろいろな歌を歌える歌手になりたい」という目標だ。「子どもの頃から長編歌謡浪曲が大好きだった」という辰巳は、鍛錬を積み、三波春夫の数々の名作を歌い継ぐ一方で、コンサートやアルバムで、昭和・平成のポップスやミュージカルソングもカバー。二見は、今年、自身初の東京での単独コンサートで、長編歌謡浪曲のほか、洋楽のラブバラード「アンチェインド・メロディー」や郷ひろみの「GOLDFINGER ‘99」をダンスを交えて披露。青山もジャズナンバーやタップを披露するなど、5人それぞれがジャンルの枠を越え、こだわりと個性を活かして、歌世界を広げている。それは、5人が集結した第7世代コンサートでも同じ。今年10月のステージでは「め組のひと」や「タッチ」「夏の終りのハーモニー」「YOUNG MAN」などを披露した。

 演歌・歌謡曲界に新たな波を起こすべく、奮闘している5人。第7世代コンサートでは回を重ねるごとに息の合ったトークと歌声を披露し、令和の演歌・歌謡曲界を担う若手としての結束の強さを感じさせるが、単なる仲良しなだけではないのも第7世代の特徴だ。ステージで顔を合わせるたびに、「〇〇は苦手を克服してきた」「〇〇は得意分野をさらに磨いてきた」とお互いの成長を確認し合っているという。

 5人の中で末っ子的な存在の青山も「デビューが一番遅かったからみんなが仲良くしてくれるけど、やっぱりどこかでライバル視しているところもあるし、そういうところも楽しい」と語っているように、第7世代コンサートは、お互いに負けないよう切磋琢磨する場にもなっているようだ。

 今後、第7世代がどんな成長を見せながら、演歌・歌謡曲界を盛り上げてくれるのか。令和の演歌界を担う5人の活動に期待したい。

文・河上いつ子

■辰巳ゆうと オフィシャルサイト:https://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A025361.html
■二見颯一 オフィシャルサイト:https://www.crownrecord.co.jp/s/c01/artist/futami/news?ima=1237&ct=ryuko
■新浜レオン オフィシャルサイト:https://niihamaleon.com/
■彩青 オフィシャルサイト:https://columbia.jp/artist-info/ryusei/
■青山新 オフィシャルサイト: https://www.teichiku.co.jp/teichiku/artist/aoyama/

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