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水卜麻美が持つ“多面的な魅力” 若林正恭とフィットした「犬も食わない」 安島隆氏が誕生秘話つづる【全文掲載】

 お笑いコンビ・南海キャンディーズ山里亮太オードリー若林正恭による『たりないふたり』の仕掛け人・安島隆氏が、書籍『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)を刊行した。ORICON NEWSでは、同書の魅力を伝えるべく、第3章から「最後にお笑い番組を「犬も食わない」水トさんの“熱”」のパートを紹介する。

『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)

『でも、たりなくてよかった たりないテレビ局員と人気芸人のお笑い25年“もがき史“』(KADOKAWA)

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 演出家として誰もが知るほどの大ヒットを飛ばしたわけでもない、会社員として仕事術を語れるほどの成果を上げたわけでもない、キャリアは山あり、谷あり。圧倒的に、谷多めで深め。お笑いとテレビとライブの波間で必死にもがくテレビ局員の姿は、会社や学校、家庭で上手に生きられない「たりない」あなたの胸に突き刺さるものとなる。

 バナナマンおぎやはぎラーメンズなど、ブレイク前の人気お笑い芸人たちとの知られざるエピソードのほか、山里、若林とのスペシャル対談も必読だ。

■最後にお笑い番組を「犬も食わない」水トさんの“熱”

ゴールデンタイムのレギュラー番組「解決!ナイナイアンサー」と「得する人損す
る人」が5年間で終了。前節で触れた、その間演出していた他のレギュラー番組や特番などもほとんどが終了していた2018年秋。45歳になっていた。自分の演出家としてのキャリアも秋風に吹かれているのを切実に感じていた。

次が最後だとしたらどんな番組がやりたいだろう。そう考えた末、テレビと向き合う時にずっとやってきた、世の最大公約数と自分の趣向や刺激性のバランスを取る手法はやめよう、思いっきり振り切った、今の自分が本当に面白いと感じるお笑い番組をやりたい、と思い至った。それは考えてみれば、「落下女」以来のことだった。どうせなら新しいものを作りたい。かといって、独りよがりで視聴者に伝わらないお笑い番組は、もう面白いと思えない。ウエルメイドな喜劇も違う気がしたし、10代の視聴者の人気を狙えそうなキャラクターコントも、40代半ばの自分には正直面白いとは思えない。

しかし、今を生きるおじさんや女性のリアルないやらしさや葛藤、人間くささを描くなら、興味もあるし何かを作れそうな気がする。何度もフレームを考えては崩した。信頼できる作家陣やディレクター陣にも相談しながら、ようやく企画書は完成した。AとBの異なる属性の人。たとえば、Aは「(若い女性への興味を隠さない)港区おじさん」で、Bは「(もはや女性には興味がないと語る)マラソンにハマったおじさん」。そんなAとBが、自分の生き方や考え方がいかに素晴らしいか主張しつつ、互いの属性がいかに間違っているかを攻撃し合う小競り合い。

港区おじさん「やっぱり女性は最高だね。マラソンなんて無理して格好つけてるだけじゃないの?」
マラソンおじさん「おじさんなのに女性と遊ぶなんて時間と金のムダ。マラソンの方がよっぽど気持ちいいよ」

当事者同士は大まじめに互いを否定し合うのだが、端から見ると大差ないし、そもそもどちらでもいい。当時そんな、本質は似たもの同士の局地的な争いが、世の中に蔓延していると思ったし、同じように感じている人も多いんじゃないかと考えた。そこでタイトルは、「ディスり合いバトルコント 犬も食わない」と付けた。そしてある属性を代表(レペゼン)して世に訴えるという精神はヒップホップに近いんじゃないかと思い、「たりないふたり」で関係が生まれたヒップホップユニットのCreepy Nutsにテーマ曲をお願いした(Creepy Nutsに関しては次章で書きます)。

実際の見せ方は、このAとBを描いたコントを芸人さんや俳優さんに演じてもらい、それぞれの主張を交互に切り替えながら見せていく手法。ストーリーはあるが、「架空の人物AとBに密着するドキュメンタリー」という設定なので、所作やセリフの細かいところまではカッチリ決めずに撮影する。つまり演者さんの即興の演技次第でいかようにも膨らむ。このアドリブ部分が特に面白くなった。それは、ご出演いただいた芸人さんや俳優さんの力量のおかげだった。コントVTRのチェックをしながらも、その演技のエゲツなさに怖くなるほどだった。

そして、そのVTRを見るスタジオには、MCとしてオードリー若林くんと日本テレビアナウンサー・水ト麻美さんがいる。時に乱暴で極端な主張が続くVTRを懐深く受け止めていただき、どちらが応援できるか?という目線でお互いの頭の中をぶちまけてもらう。加えて二人には、最終的な意見を番組公式アカウントからツイートしてもらい、世の中への拡散を狙う。この二人の存在があって、初めて番組として成立すると思っていた。水ト麻美というアナウンサーは、とても不思議な魅力がある人だ。芸人さんなど出演者に深いリスペクトを持つ謙虚な人で、「自分に自信がない……」と打ち合わせの時にこぼす姿は本心からだと思う。

しかし、大型特番の大舞台やレギュラー番組のMCとして本番を迎えると、アナウンサーとしてのスタンスを保ちつつ、圧倒的なオーラを放ち、それが説得力と信頼感を作っている。このオーラは内面に絶対の自信を秘めていなければ表に現れないと思う。そんな多面的な水トさんの新たな顔を、コントVTRをきっかけにして若林くんがニヤニヤしながら引き出していく。後に、南キャン山ちゃんが「なぜこの番組のMCは自分じゃないんだ」と嫉妬していたと聞くことになるのだが、確かにそれくらい若林・水トはめちゃくちゃフィットしていた(あまり言うとまた山ちゃんに怒られる)。

「たりないふたり」での山ちゃんポジションを、水トさんが担っている感じもあった。それができたのは、もしかして水トさんと山ちゃん、似ているふたりなのかもしれない。そういえば、水トさんにも山ちゃんのように「何かをやりたい」熱が極端なほど充満している。若林くんが、時にその熱さを怖がるほどだ。そんな彼女の熱望もあって、「犬も食わない」から派生したトークライブを開催したのだが、彼女はそこで話すエピソードをとにかく生真面目に、高いクオリティのものを数多く用意してきていた。

もう一つ彼女が用意してきたのは「お客さんに感謝の気持ちを表したい」と一枚一枚手書きでメッセージを記入した、番組ロゴ入りのシール350枚。トーク終了後、会場のお客さん全員に配っていた。その行動を、若林くんはいつも以上に怖がっていた(笑)。そんなMC二人、コント出演者、スタッフの熱に支えられて、「犬も食わない」は(1クールの期間限定放送ではあったが)思う存分に作ることができた。SNSで話題になったり、サブカル誌で特集してもらったり評価もいただいたりして、自分の中に徐々に、意欲と自信が戻ってきていた。まだ演出のキャリアを続けたい。最後まで、やはりお笑い番組をやっていたい。山ちゃんからあの電話がかかってきたのは、そんな風に腹を括れた頃だった。

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