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横山健「自分の役目はカッコつけること」 想いを背負いステージに立つギタリストの矜持【インタビュー後編】

 ロックバンド・Hi-STANDARDでメロディックパンクシーンをけん引し、2004年からはKen Yokoyamaとしても絶大な存在感を放ち続けているギタリスト・横山健が、9月26日にGretschから最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」を発表した。

横山健 (C)ORICON NewS inc.

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 多くのギタリストに衝撃を与えた初代シグネチュア「Kenny Falcon」発売から8年。「Kenny Falcon Jr.」や「Kenny Wild Penguin」といったモデルも世に放ちつつ、自身もライブで様々なニューモデルを起用し、ギターサウンドの探求を続けていた。

 箱モノギターに目覚めたきっかけやシグネチュア制作の過程を語ってもらった前編に続き、後編となる本インタビューでは、最新機種「Kenny Falcon II」の最深部を掘り下げる。自身の活動に通底させている“守破離”の精神が掲げられた同モデル。“破”の段階に至ったと言わしめた今作には、どのようなこだわりが注ぎ込まれたのだろうか。

横山健 (C)ORICON NewS inc.

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■伝統に敬意を払いつつ、“エキセントリックさ”を追い求めた開発期間

――Kenny Falcon IIを制作するにあたり、どんなオーダーをしたのですか?

【横山】ジェイソン・バーンズというアメリカのGretschブランドの責任者とやり取りしていて、最初に話したのは「次に作る僕のモデルはエキセントリックじゃないといけないよね」っていうことでした。

――その後、具体的なイメージや細かいアイデアを送っていたんですか?

【横山】そうですね。スタートしたのは2019年くらいで、完成形に近いプロトタイプ(試作品)が送られてきたのが2021年12月。つまり、2年間ぐらいあれこれと試していたわけですね。僕が突飛なアイデアを出す一方、ジェイソンはわりと渋めのアイデアを返してくれることが多かったんです。

――ジェイソン氏とはどんなやりとりを?

【横山】突飛なアイデアを採り入れようとすると、必ずどこかに歪みが生じてくるんですね。「このパーツを取りつけるとして、じゃああのパーツはどこにつけるんだ?」と。で、こっちも答えに困っちゃって…みたいなやりとりをしばらく続けていました(笑)。

――そのやりとりの中でKenny Falcon IIの仕様が出来上がっていった?

【横山】いえ、ある日突然この仕様が思い浮かんだ感じ。ギターって操作性とか機能性とかが大事じゃないですか。でも、僕はGretschに関して「機能性を高めすぎると装飾美が損なわれる」という経験があるんです。Gretschのカッコよさを活かすなら、どこかに“使いづらさ”も出てくる、と。なので、今回は装飾に特化したものを作ることにしたんですよ。

――カラーリングからも装飾美へのこだわりがうかがえます。

【横山】ギターの色決めって意外と難しいんですよね。塗装したサンプルの板を送ってくれるんですけど、実際に見てみると「ちょっと違う」と思ったり、「小さい板で見ているからそう思うだけで、ボディーに塗ったらいい色になるかも」とも思ったり…。

横山健Gretsch最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」

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――スパークルの粒の大きさや色合いも仕上がりを左右しますから。

【横山】そうそう、スパークルのサイズだけでもバリエーションがたくさんあるんです。今回は、Kenny Falcon Jr.のときにオリジナルで作ってもらったアーリーサマーグリーンというカラーがあるんですけど、「あれをラメラメにしたらどうかな?」って話をしたらいい返事が来て、そこから制作が動き出したんです。だから、Kenny Falcon IIは色から決まったようなものですね。

――最初は渋さを推していたジェイソン氏が、“ラメラメ”にノッてきたと?(笑)

【横山】もしかしたらちょっと折れてくれたのかも(笑)。その段階で、「3ピックアップはどうだい?」とか「ビグスビートレモロも搭載させて」といった話もしました。3ピックアップ仕様にすると回路も変わってくるので、コントロール類のアレンジについてかなり細かくやりとりをしたんです。

■装飾美に重きを置きながら実現した絶対的な機能美

横山健 (C)ORICON NewS inc.

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――Kenny Falcon IIは色合いこそエキセントリックですが、Gretschのトラディショナルなスタイルを踏襲している印象もあります。

【横山】色が派手なのと、3ピックアップなだけ。…これでも十分エキセントリックなんですけど(笑)。ただ、トラディショナルさは存分に残っていますよね。

――3ピックアップ仕様はジェイソン氏からのアイデアだったのですか?

【横山】僕からです。3ピックアップ仕様はこれまでカスタムショップが一点モノで作っていて、それをドーン!とレギュラー商品で作ったら面白いんじゃないかと。カッコいいじゃないですか、3ピックアップって。

――そこにGretsch独自の装飾美が加わると、メカメカしい見た目になりますね。

【横山】「あの車、なんであんなところからマフラーが出ているんだ?」みたいな(笑)。僕、突飛なところからマフラーが出ている車はダセェと思うタイプなんだけど、3ピックアップのギターは間違いなくカッコいい。

――コントロールの多さなどからも、昔のアメ車のような雰囲気を感じます。

【横山】そうそう! でも、Kenny Falcon IIのコントロールは使いこなせる範囲。整然とスイッチが並んでいるっていうのがカッコいいんですよね…。

横山健Gretsch最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」ピックアップ (C)ORICON NewS inc.

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――Kenny Falcon IIのピックアップ、TV JonesのKenny'Tronは本モデルのために新たに開発したそうですが?

【横山】リアピックアップがKenny'Tronですね。僕、見た目だけで言うと、一般的なネジタイプのポールピースが好きなんですけど、「とにかく歪むピックアップを作ってほしい」とリクエストしたら、このポールピースで出来上がってきた。きっとポールピースの素材やサイズも歪む要素になっているんでしょうね。

――「歪むピックアップ」というオーダーだったんですね?

【横山】もともとTV Jones社ともやりとりをしていたんです。トムさんという方がやっているんですけど、「君のサウンドにインスパイアされた」って昔からプロトモデルを送ってくれていたんですよ。Kenny'Tronは、その3、4つ目くらいに作ってくれたプロトモデルが原型になっていて、「これを採用してほしい」とGretschにリクエストしたんです。

――TV Jones側ともKenny'Tronが完成するまで何度もやりとりを?

【横山】トムさんは、僕のサウンドから「音がちょっと潰れたガレージ系の歪み」をイメージしていたみたいで、最初のプロトモデルはその傾向が少しあったんです。だから、今回は「音の粒がスッキリとしていて、ギャーンと歪む感じにしてほしい」とリクエストしました。

■長期にわたった開発をへて、横山健が放つ宣言「メインギターはKenny Falcon II」

横山健Gretsch最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」ヘッド (C)ORICON NewS inc.

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――Kenny Falcon IIの完成版を最初に鳴らしたとき、どんな印象でしたか?

【横山】僕の手もとに来たのが1年9ヶ月前。…僕があと30歳若かったら簡単に思い出せるんだけどなぁ(笑)。でも良かったはずですよ。自分の求めているサウンドと合わないギターは、どんどん倉庫の奥に押しやられてしまうんです。その点でKenny Falcon IIは、3ピックアップやスイッチ類に対応するための慣らし期間が必要でしたけど、手もとに届いた2ヶ月後のライブではデビューさせていました。

――『Tokyo Harbor Nights』というシリーズライブでしたね。重要なポイントである“股間への響き”もありました?

【横山】そこは手にする人にそれぞれ確かめてもらいたいですね。少なくとも僕はビンビンです(笑)。

――現在のライブでは準主役級で使われています。

【横山】最近は1回のライブで3〜4本のギターを持ち変えることが多くて、Kenny Falcon IIとFenderのTelecasterと、必ずLPスタイルも1本用意しています。ほかにも、その時期に弾きたいものを何本かセレクトしてツアーに持っていくんですけど、「メインギターはどれ?」と聞かれたら、Kenny Falcon IIを挙げますね。

Gretsch最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」をかき鳴らす横山健

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――現在、Ken Yokoyamaとしてシングル三部作をリリースしている最中で、第一弾が5月に発表した「Better Left Unsaid」、第二弾が9月に発表した「My One Wish」です。それらのレコーディングでもメインギターを鳴らしているんですか?

【横山】最近のレコーディングでは違うギターを弾いています。ただ、2015年に出した『Sentimental Trash』では、めちゃくちゃ速いミュートリフをオーシャンターコイズブルー色のFalcon Jr.で録りました。いい感じにロー成分がスッキリしていて、カッコいい歪みサウンドが出せるんです。最近は「メインギターだからレコーディングでも使わなきゃいけない」という考え方でもなくて、録りではいろいろなギターを使いますね。

横山健 (C)ORICON NewS inc.

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■「Gretschを手にしてからギターを弾くことがさらに楽しくなった」

――Kenny Falcon IIをはじめとするGretschギターを使いこなすコツは?

【横山】これは僕の性格かもしれないけど、気持ちひとつだと思います。ハードルを感じることもなく、「弾いてみようかな」ってスッと使い始める人だっているじゃないですか。だから弾いちゃえばいいんです。コツなんて特にないですよ。

――では、どんな人に手に取ってもらいたいですか?

【横山】ギター通でありながら、ギターをカルチャーなどとリンクさせて捉えている方には、Kenny Falcon IIじゃなくてもいいからGretschのギターを弾いてみてほしいです。面白い哲学があるギターだから。

――Gretschをメインで使い始めるようになって、健さんのギターに対する考えやプレイヤーとしてのマインドにも影響がありましたか?

【横山】すごくあると思います。これは文字で読んだら誤解を生むかもしれないけど、「毎日最高の音を追求しよう」なんて思っていたら、Gretschは弾いていない。馬鹿みたいに歪ませているせいか、Gretschって日によって本当に音が違うんです。でも、僕は「今日の音はヒドかったな」と笑えるタイプなんです。それはライブハウスの箱鳴りによるものなのか、ギターのコンディションなのか、自分の緊張からなのか分からない。でも、ライブをやって僕は生きているわけですから、それイコール、僕の生きる姿勢でもある。そういう点でも、間違いなくGretschを手にしてからギターを弾くことがさらに楽しくなっています。

――それだけトラディショナルなものには魅力がたっぷりあると。

【横山】その魅力の正体って、伝統やカルチャーだったりするんですよね。生き残ってきた理由が絶対にそこにはあって、その伝統に触れたとき、自分の中で新しいドアが開いちゃうんです。最新型もいいんですよ、その時代に合ったものだから。Kenny Falcon IIだって2023年に生まれたギターだから、新しくないとは言わない。ただ、伝統を背負ったちょっと扱いづらさもあるギター。踏み込むか踏み込まないかは、その人次第です。

■ギタークラフトマンたちへの敬意 ギタープレイヤーとしての誇り

横山健 (C)ORICON NewS inc.

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――インタビューの前編では「守破離」の「破」に至ったと話していましたが、今後の「離」についてはまだ具体的な構想を抱いていないですか?

【横山】この先Gretschが僕のモデルを出してくれるかどうかも分からないので(笑)。それに、新しいモデルを出すとなったら、再び「守」に戻るかもしれない(笑)。先のことはまだ分からない分、今は目の前のコイツと戯れている姿をどうやってカッコよく見せられるかって感じですね。

――もしKenny Wild PenguinにKenny'Tronを搭載したら、ものすごくエグい鳴りがしそうです。

【横山】そうなんですよね〜。ちょっとぶっちゃけて話しちゃっていいですか? Kenny Falcon IIのプロトタイプを作ったとき、実はPenguinも作ったんですよ。同じラメのカラーで、Penguinだけどダブルカッタウェイ。めちゃくちゃカッコいいでしょ? ただ、持ったときのバランスが悪くなっちゃって、これはあまりにもチャレンジしすぎだったかなと…。でも、人前に持って出る可能性はゼロじゃない。Kenny Falcon IIもプロト版と市販版の2本を持っていて、違いはロゴをプレートにしていることくらいなんですが、市販のやつの方が音がデカくて股間に来るんです(笑)。個体差なのかな?

――ソリッドギターに慣れているギタリストからすると、Kenny Falcon IIは最初、ブリッジの高さなどに戸惑うかもしれません。

【横山】ボディーと弦が遠いのは僕も最初に感じました。それはGretschのネックのジョイント法が関係しているんですよ。セットされている部分を見ると、ちょっとだけ空間があるんです。その空間をなくしてボディーにベタづけすれば、弦とボディーの距離は当然近くなる。ただ、この空間にも絶対に秘密や理由があるはずなんです。

横山健Gretsch最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」ボディー (C)ORICON NewS inc.

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――そこもすでに検証している?

【横山】実はKenny Wild Penguinのとき、わざと空間をなくしてブリッジの木台も外したんです。そういった細かいチャレンジもしていて、まだまだやれることはいっぱいあると思っています。ひとつひとつ考えているとアイデアは尽きません。

――ギタークラフトの領域まで掘り下げていくと、本当に様々な要因が音を作り上げているんだと感じさせられます。

【横山】話が少し逸れちゃうんですけど、コロナ禍の外出禁止期間、意外と多くの人が「家具からギターを作ってみた」みたいな動画を上げていたじゃないですか。それを見たとき、「ギターを作りたかった人がこんなにいたんだな」って胸が熱くなったんです。

――QUEENのブライアン・メイは、暖炉で使われた古材などを使ってあのトレードマークでもある“レッド・アイ”を父親と一緒に制作したという有名な話もありますから。

【横山】そうそう。気軽に言ったらクラフトマンの人たちに怒られちゃうかもしれないけど、できるなら僕も自分の手で作ってみたいし、ギターの工場を見るのもすごく好きなんです。クラフトマンやいろいろなスタッフの想いと技術でギターが出来上がっていると思うと…アツいですよね。アメリカからジェイソンが来日したときにも、僕が「こんなギターを作れないか?」って言ったら、隣にいたもう1人の技術者と2人で何やら計算を始めたんです(笑)。それを見て、「おお、ギターオタクだ!」ってすげーうれしくなりましたね。

――まさに「ギター技術者たちの饗宴」ですね。

【横山】いいッスよね、そういうシーン。最高。僕はね、お米を食べるときに農家の人に感謝するように、ギターを持つときに「いろいろな人の手を通ってここまで来たんだ」って感じているんです。だから、自分の役目はカッコつけること。上手く弾くことも大事だけど、その人たちの気持ちを背負ってカッコつける。それが役目なんだって、いつも思っています。

文:長谷川幸信
写真:岡本麻衣(ODD JOB)

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  1. 1. 横山健、今なお止まらないギターキッズ魂 プロギタリスト歴30年で貫く“守破離”の精神【インタビュー前編】
  2. 2. 横山健「自分の役目はカッコつけること」 想いを背負いステージに立つギタリストの矜持【インタビュー後編】
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