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天才・テリー伊藤の現役テレビマンへの遺言「ファッションじゃないんだから大振りしろ!!」

 『天才たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)や『ねるとん紅鯨団』(関西テレビ系)、『浅草橋ヤング洋品店』(テレビ東京)など数多くのメガヒットバラエティを生み出してきた稀代の天才演出家・テリー伊藤。“早朝バズーカ”をはじめとして、コンプライアンス問題に揺れる今のテレビ界ではできない過激な演出が伝説になっているほか、多くの模倣番組も作られ、“テレビ界の革命”として今も語り継がれる人物だ。そんな天才も今や72歳。そろそろ落ち着いてきたか…と思いきや、「コンプライアンスが厳しい? だからこそ面白いものが作れる」と豪語する。天才が放つテレビ界への“遺言”とは?

「テリー伊藤の死にたくないテレビ」で久しぶりに演出を手がけたテリー伊藤(C)BS日テレ

「テリー伊藤の死にたくないテレビ」で久しぶりに演出を手がけたテリー伊藤(C)BS日テレ

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■バラエティ番組の極意は日本が誇る武術

 「『〜元気が出るテレビ!!』を始めたのは30代半ばぐらい。その時、僕は確かに“革命を起こす”と言ってましたね」と目を細めるテリー伊藤。11年続いたその人気番組の最終回でビートたけしに「今のバラエティでやっていることはすべてこの番組でやってきた」と言わしめたほか、番組から安室奈美恵、観月ありさ、岡田准一、X JAPAN、劇団ひとり、的場浩司、山本太郎(当時はメロリンキュー)、飯田各自、COWCOW、2丁拳銃、稲森いずみ、よゐこ、矢作兼など数多くの芸能人、スポーツ選手、著名人も輩出。

 先述の“早朝バズーカ”をはじめ、高田純次の“テキトー”リポート、“勇気を出して初めての告白”、“大仏魂”、“高校生制服対抗ダンス甲子園”など数々の名コーナーは伝説となり、また『ねるとん』からは『バチェラー』のような恋愛リアリティ番組を、『ASAYAN』のオーディションでは“素人使いのうまいテレ東”の礎を盤石にしたといっても過言ではない。

 どのような手法でこうした革命を起こし続けられたのか。「実は僕、ほかのバラエティ番組を当時からあまり観てなかったんですよ。あまり観るとそれが自分の中に入ってきてしまう。ダリとか晩年のピカソもそうですが、よその絵を観て描いてないと思うんですね。自分の中の構造だけで考えて描いている。それと一緒で、“あれ、あそこから持ってきたでしょう”“パクったでしょ”と言われるのは恥ずかしい。つまり、よその番組を観ると自分が汚れるから、10人中2人が面白いと自分が思えるものを作ってきました」

 一方でしなやかさも併せ持つ。「映画監督は年に1本ぐらいしか撮らないから、自分の力で押さえつけた“これが面白いんだ”という演出ができる。ですがバラエティはそうではない。1本は“どうだ面白いだろう”というものができても、来週もその次もある。毎回、毎回、力技では無理が来るんですよ。ですから柔道や合気道と同じで、相手、出演者の力を利用してより遠くへ飛ばすということをしないと続かないですね」。そうした意味でテリーは素人の、ある種“無限大”の力も利用。テリーの手法はYouTubeでも利用されている。

27日放送の「テリー伊藤の死にたくないテレビ」(C)BS日テレ

27日放送の「テリー伊藤の死にたくないテレビ」(C)BS日テレ

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■“死にたくない”=“元気が出る”? テリー節が炸裂! 

 そんなテリー伊藤が、久しぶりに演出をしたバラエティー『テリー伊藤の死にたくないテレビ』(BS日テレ 27日 後7:00)が放送される。もちろん企画、演出、出演も担当。現在も芸能界でカッコよく活躍するシニア芸能人たちの参考にしたい人生をテリーが独断で選び、スタジオのいとうあさこ、壇蜜、泉谷しげるらと語り合う番組だ。VTRで紹介されるのは、池畑慎之介(ピーター)、和泉雅子、岡田奈々、加賀まりこ、勝野洋、草笛光子、SAM、高田純次、長沢純、夏木マリ、尾藤イサオ、山本リンダ、由紀さおりら。貴重な映像や写真も公開される。

 「僕、芸能界に48年いるんですね。その中でも特に同世代…シニアの方達の中で格好いい生き方をしてる人たちは多く、そういう人らの生き方って観る方の人生に参考になるかなと思って。タイトルも、僕が『天才たけしの元気が出るテレビ!!』をやっていたので、それを文字って、『テリー伊藤の死にたくないテレビ』。“死にたくない”の裏にあるのは、どうせ生きるんだったら怠惰に生きるより格好良く行きた方がいいよね、という、つまり“元気が出る”というニュアンスです」

「和泉雅子さんの生き方を観て思ったんですけど、別になんでもいいんすよ、生きていれば。素敵に生きようとすると面倒くさい。それより自分の幸せを考えた方がいいと思って。ピーターも、僕は“時代と添い寝してる”って表現しているんですけど、いつの時代も今の時代風に見える。苦しさを感じないんですね。そういったいろんな方の人生が紹介されますので、自分に合った生き方を参考にしてもらえばうれしいと思いました」

テリーが演出するVTRにしてもテリー節は顕在。由紀さおりのVTRでは往年の“勇気を出して初めての告白”のような趣もある。「尾藤イサオさんのリーゼントのVTRも、あれを音楽の著作権などをクリアしてYouTubeで流したら1億回ぐらい再生されるんじゃないですか。世界全国、おそらく誰もが分かる、そういった面白いものになっていると思うので是非、観てみてください」と手応えも充分だ。

そんな現役のテリー伊藤だが、今のコンプライアンスに揺れるテレビ業界について、どのような想いを持っているのだろうか。

27日放送の「テリー伊藤の死にたくないテレビ」(C)BS日テレ

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■ビッグネームのタレントの出演料を払うなら、より自由な番組作りを

 3月29日、テリーの盟友であるビートたけしが、テレ東の『レベチな人、見つけ』で、「やりたいバラエティも映画もあるけど、今の地上波だとなかなか。SNSがあって、コンプライアンスとかいろいろ言い出した時に、自分はそういうのまで考えてやりたくない。そっちの世界じゃなくて、ネットでムチャクチャやろうかなと思っている」と語った。

 コンプライアンスに対するテリーの考えは「今の時代もテレビ作りは全然難しくないですよ。コンプライアンスはあった方がいいです。ないとつまらないですよ。例えば修学旅行、夜10時消灯と言われなければ、夜中遊んでいても面白くない。規制があったり、明日、社会的にきっと怒られるぞっていうぐらいの方が作りは面白い」

 SNSでクレームが可視化されたことについても、誰もがいつ、つらい目に遭うかわからず、それぞれの事情があるため、それはそれで仕方ないと受け入れる。「だから僕はSNSも見ません。ネットニュースも見てもそれで終わり。クリックしていると批判とか悪口とかに行き着いてしまう。僕はそれで自分の感性を汚したくない。演出家ですから人を盛り上げるのが仕事であり、面白いんですよ」

 今後も演出依頼があれば「むしろ来てほしい、お願いします」とテリー。敢えて今のテレビマンへの“遺言”を、と聞いてみると「大振りしてほしい」と返ってきた。「空振りしてもいいから、横を見ないで自分の好きなことをやってほしい。ファッションだって横を見るから、皆同じようなファッションになってしまう。あと日本は若い人を使いたがるんで、欧米のようにベテランと若い人を混ぜることで面白いものが生まれるのではないか。またビッグネームのタレントばかり使わないこと。出演費が高いし、そこで費用使うより、中身で使ってみてください。するともっと自由なことができるはず」

 最後に彼は「この番組もパクらないでね(笑)。あと、シニアの方の生き方を参考にしたら老後が幸せになるというのも、(ぶっちゃけテレビ的な)“まやかし”ですから」と茶目っ気も見せてくれた。彼の言うように、過去には「テレビはテレビ」と誰もが分かっていて楽しんでいたところがあったと思う。そんなおおらかな時代に賛否両論はあるが、彼の言葉を聞きながら、“古き良きテレビ”の“楽しさ”、またテレビ自体が“死にたくない”と笑っている画が筆者の脳裏には浮かんだ。


(取材・文/衣輪晋一)

■BS日テレ「テリー伊藤の死にたくないテレビ」(5月27日 後7:00)

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