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古舘伊知郎『トーキングブルース』で見せる新境地「話芸にも加齢臭のよさ」

 古舘伊知郎(65)のトークライブ『トーキングブルース』が、また帰ってくる。1988年から2003年まで毎年開催し、14年に一夜限りの復活を果たした同ライブだが、今年8月には史上初の配信限定無観客ライブを実施。それを経て「主人であるお客さまの表情を見ながら、息づかいを感じながらしゃべるのが、お客さまにかしずいてしゃべる人間の役割なんだ」との思いを強くした古舘が、12月4日と5日の2日間にわたって、東京・恵比寿ザ・ガーデンホールを舞台に『古舘伊知郎トーキングブルース―やっかいな生き物―』と銘打って、客席を半数にして“有観客”で開催する。

『古舘伊知郎トーキングブルース―やっかいな生き物―』を行う古舘伊知郎(C)2020FURUTACHI PROJECT Co .,Ltd. All right reserved

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■無観客ライブで感じた“くやしさ” 新たな試みにも意欲「お楽しみコーナーを…」

 前回の無観客ライブについて「くやしかった。ライブはお客さんが主役で、舞台上はお客さんに支配されるので、やっぱり予想できたとは言うものの、空回りしたり、いつもはお客さんのため息とか笑いとか笑顔を見ることでいい間合い、いい抑揚、メリハリが自然と出てくるんですが、それがなかった。ひとりでキャッチボールができないのと同じで、森の中でやっているよな感じでしたね」と率直な感想を吐露。「コロナで『当たり前の日常が大事だ』って言いますけど、まさにお客さんが来てくれるのが前提でやっていたのが、お客さんがいないっていう状況だったので、当たり前の幸せを感じましたよね。だから、今度は尋常じゃないくらい、お客さんに気を使いたいし、客席は半分ですけど、気持ちは『超満員×2』くらいですよ」と言葉に力を込めた。

 無観客での『トーキングブルース』では、いつもとは違った感情に支配されていた。「今までだったら、会場のざわざわとした声とかいったノイズとか入ってくると、いよいよだと緊張感が出てきて、それだけでトークライブ脳になれたんですよ。だけど、それがないから、いつまで経っても気合を入れるタイミングがなくて、今度は緊張してない自分に焦って…。そういった状況で、1時間半以上しゃべるのが初めての経験だったので。これだけ違うんだなと思いましたね」。そんな中、政治家のしゃべり方をまねて披露するなど、意欲的な試みも行った。

 「前回は、政治家のしゃべりのまねをやったんですけど、僕は事務所の後輩の松尾貴史みたいに声色のまねはできないし、形態模写もうまくない。だけどウケたんですよ。それはなぜかというと、文脈模写をやっていたんだなと。口調とか言葉選びをまねて『この人だったら、こういうことを言うだろうな』ということをやった。言葉選びの傾向がある。それに味をしめてっていうのはなくて、今回もちょっとお楽しみのコーナーを作ろうかなと。話芸っていうものを伝えるようなコーナーをやってみたいと考えています」

■現代社会の流れを汲んだ変化 歳を重ねた今だからこそ出る“円熟味”

 「やっかいな生き物」というタイトルは、今の状況はもちろん、自分自身にも向いている言葉だ。「今までは『世の中なんなんだ』とやってきたんですけど、この頃は自分もいい年になってきました。今年に入って友人が3人亡くなったんですよ。それで、やっぱり考えちゃいますよね。いつ自分もどうなるかわからない、仏教で言うところの一日一生だなという心境になりました。人のことを打つ前に、自分の中にある偏見とか差別とか決めつけがあるじゃないかと。それも含めて『やっかいなオレ』っていうのもあるし、『トーキングブルース』では世の中や人のことを言ってきましたけど、今はそういうことを思っちゃったオレとか、主語は自分にしないと聞いてくれる人が共感しなくなってきたんだと思うんです」。その上で、現代社会について自身の視点を語っていった。

 「今は昔以上に責め込まれたくないと思うんですよね。ネットの社会の台頭で炎上だなんだっていうこともあって、言葉という刃で自殺に追い込まれる人もいる。責め込み、責め込まれる時代だから、あんまり人から言われたくないと思うんですね。それもあって『今がよければいい』という考えから、保守政権の支持率も高いと思う。だから、今回はベクトルを変えて、矢の切っ先を自分に向けることにしました。オレってひどいみたいなこともいっぱい言っていきたい」

 無観客から4ヶ月も経たないうちでの開催となるが、それによって構成にも変化が訪れた。「昔は僕の発表会みたいな感じだったので、終わった瞬間から『来年は仏教にしようか』って話し合いを始めたりしていたんですけど、もうちょっとそんな感じじゃないなと思っていて。フリートークライブというか、その場のアドリブも含めて、トーカーはしゃべり手だから、台本もありませんし、基本的に自分のネタでやる。仲間の構成作家にも相談しますし、アレンジャーはいてほしいけど、自分発でいきたいなと。それによって悪く言えば荒っぽくなるし、よく言えばトークライブっぽくなるかなと。違うジャンルにチャレンジして。いい歳こいてチャレンジするコーナーも作りたいと思っています」。

 TBSの安住紳一郎アナ(47)が、本人を前に万感の思いで披露した「薬局のドリンク売り」に代表されるように、古舘の高速回転する脳そのままに発されるマシンガントークも魅力だが、歳を重ねた今だからこそ出せる語りの円熟味もある。「歌うこととか語ることっていうのは、基本的には歳とともに変わらないといけない。僕が20代、30代くらいまでにやってきて、よく言われる『薬局のドリンク売り』だって、あのしゃべりを出せって言われたら出ないと思う。少なくとも10秒くらいは遅れるんじゃないかな。それが衰えてきているということだから、どこでカバーするかって言ったら『話芸にも加齢臭のよさ』っていうね(笑)。それはトーカーであっても、なければいけないなと感じています。若い頃に『なんなんだ、世の中は』って言っていたことから反転して、矢を自分に向けて、自分の業を笑うっていう」。

 これまで圧倒的なスピードと、ほかにない切り口で奏でてきた『トーキングブルース』は、ここにきて新境地を見せることになりそうだ。

■『古舘伊知郎トーキングブルース―やっかいな生き物―』
日時:12月4日午後7時〜 12月5日午後5時〜
料金:7000円(チケットは28日よりオフィシャル先行受付開始)
会場:恵比寿ザ・ガーデンホール

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