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「映画館に笑いを戻したい」 『爆笑問題 with タイタンシネマライブ』が10年かけて築いたライブビューイング文化

 映画館でライブを見る、いわゆる「ライブビューイング」は、今では定着しつつある文化だが、10年前は違っていた。「歌舞伎や宝塚を映画館で上映するということはやっていたようですが、録画したものを上映する形で、生中継ではなかった。そんな中、生でお笑いライブを見てほしいと思ったんです」。こう語るのは、お笑いコンビ・爆笑問題らが所属する芸能事務所・タイタンの太田光代社長。2ヶ月に1度、東京・銀座の時事通信ホールで行われているお笑いライブ『タイタンライブ』を映画館で同時生中継する『爆笑問題 withタイタンシネマライブ』を立ち上げてから、きょう11日の公演で丸10年という節目を迎える。

『爆笑問題 withタイタンシネマライブ』が丸10年 (C)ORICON NewS inc.

『爆笑問題 withタイタンシネマライブ』が丸10年 (C)ORICON NewS inc.

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■ネットでの失敗が生んだ「シネマライブ」 あくまでこだわった“生中継”

 シネマライブを始めるきっかけとなったのは、前年に1度だけ行ったインターネット配信。「お客さんが座る位置を選べるといったこともやって、生配信をやったのですが、当時は通信技術や画像のレベルなどがまだ追いついてなかった。これも大きな要因ですが、ほかの人と一緒に見ていると笑えるものも、ひとりで見ているとなんだかわからなくなって、笑えなくなるという状況もありました。テレビのネタだと、その辺まで考えられていますけど、舞台でやるネタは芸人にとって裸の芸ですよね。そういったこともあって、莫大なお金をかけたのですが、1回で引っ込めました(笑)」。

 高画質の素材もある中、何とか多くの場所で同時生中継できる手段はないかと思案していたところ、出会いがあった。「別件で映画会社の方が話に来ていたのですが、その時に『スクリーンで同時生中継するのはどうかな』と思いつきました。そこで『映画館で生中継できますか?』と聞いてみたら『スクリーンがデジタル化すると可能でしょう』という返答をいただきました」。これだと直感的に構想が浮かんできた。

 「映画館は、ライブの小屋にお客さんが足を運ぶのに近いものがあって、自分が見たいものにお金を払って来るという共通点があります。それに、お笑いは好きなんだけど、寄席やライブ会場にまで行くのは…とためらっている方にとっても、イスはゆったり確保されていて、軽食やお酒を飲みながら見ていただける。技術的には最先端なものを提供しているのですが、昔の寄席みたいな雰囲気も出せるのではないかと思って、東宝さんの映像事業部というチームを紹介していただきました」。

 まずは、ネット配信用に撮影していたライブ映像をスクリーンに投影してみた。「意外と想像と違う画になりまして。テレビでもないし、映画でもない、ちょっと見たことない感じでした」。光代氏だけでなく、東宝の映像事業部も手応えがあった。「テストとして1週間レイトショーでかけることになりました。そこから本格的に話を進めていくことになったのですが、私は『生中継じゃないと意味がない』ということは強調しました。この回を見逃したら絶対に見られませんっていう絶対的な価値が大事で、生じゃないタイタンライブを流したら、もう別のものになってしまいますから。会場と映画館で見ていらっしゃる方が同じものを見ていて、ハプニングもすべて映し出されていることが大事だということはお伝えしました」。

 こうした経緯を経て、2009年10月に産声を上げた『タイタンシネマライブ』。お笑いライブを映画館のスクリーンで見るという文化を定着させるまで“時間”が必要だった。「金曜日の夜7時半からという時間はけっこうお客さんも入るので、その枠をひとつ空けるのは、TOHOシネマズさんにとってかなりリスキーな決断だったと思います。なので、まずは映画館さんへのお礼、そしてライブを知ってもらうための宣伝活動に力を入れました。1日支配人を数え切れないほどやりました(笑)」。現地でチケットの手売りやチラシ配りをする地道な活動をしていく中で、思わぬ出会いもあった。

 「(チラシを)渡そうと思って、パッと見たら『この人見たことあるな』と思ったんですけど、その時は通り過ぎられたんですね。役者さんかなと思っていたら、その方が戻ってきて『ください』って言ってくれたんです。それで渡したら、よくよく見たら小栗旬さんだったんです。わざわざ取りに戻ってくれるなんて、いい人だなと思ってそこから大好きになっちゃいました(笑)」。

■転機となった東日本大震災 シネマライブをやる意義「芸人としての本領が…」

 「次までシネマライブを続けられるかどうか」というほどの苦境に立たされる中、2011年3月11日の東日本大震災が起こった。日本全体が“自粛ムード”に包まれていたが、光代社長は何かできることはないかともがいていた。「この年は自粛が多かったんですけど、笑いっていうのが重要なんじゃないかと。被災地が大変で、笑える状況じゃないことは十分わかっていますが、人間から笑いを取っちゃうと、精神衛生上、絶対によくない。自分が持っている能力とか仕事で助けたいという気持ちでいっぱいでした」。そんな時に思いついたのが「被災地でシネマライブを行う」ことだった。

 「収益を義援金として贈ることも大切ですが、被災地の避難所にスクリーンを持っていって、笑いを届けたいと思いました。東宝さんとも話を進めて、震災から3ヶ月後の6月公演では、福島でシネマライブをやりました。最初の方の出演者のネタでは、みなさん戸惑っている感じだったのですが、次第に打ち解けてきて、ゲストのコロッケさんのところでは、もう大爆笑でした。これは間違ってないかなと思って、8月は宮城でやりました」

 こうした経験をきっかけに、少しずつ上映館を増やしていった。光代氏は「『シネマライブ』をやろうと思ったのは、実はもうひとつ理由があったんです」とゆっくりと話し始めた。「もともと映画館って、娯楽としての映画があって、みんなで笑いながら見ていたと思うんですけど、いつからみんな静かに見ないといけなくなったんだろうなという思いがありまして。これだと、日本の笑いの映画が育たない。声を出して笑わないと、映画館にいても、ネットのスクリーンをひとりで眺めている状態と変わらない。大層なことを言わせていただくと、シネマライブというものをやることで、お客さんが映画館で笑うっていう、昔はやっていた文化を再び戻したいという気持ちがありました。せっかくのエンターテインメントですから、映画館で感情を現しながら見るっていうのは、自分の中の文化的なものを育てるためにも大切。その使命感も持ってきたつもりです」。

 この10年で、ライブの“見せ方”も変わってきた。「制作会社の方にご協力いただいて、普段はテレビ番組をやっているスタッフさんにやってもらったのですが、テレビはスイッチングの文化なので、カメラを4〜5台持ってきまして…。人って、大きなものを見る時に自分の好きなところを探して、そこにのめり込んでいくらしいのですが、ガチャガチャ切り替わると、そこで自分の感情がストップしてしまう。映画は“長回し”という言葉あるように、長い引きの画から、できるだけ切り替えずに展開していきますよね。だから、映画館でネタを見せる技術も10年で培ってきました。たくさんの人の協力と努力の賜物です(笑)」。

 最近では、うれしい反響もあった。講談師の神田松之丞が出演した6月公演では、チケットが完売する映画館が相次いだ。「あの方も100年に1人の逸材でしょう。本物を見ているという感覚になりますよね。太田(光)とラジオを通じてずっとやり合いをしていて、一番いい形でお迎えできたのが良かったですね」。映画館で松之丞の講談を見た観客からも絶賛の声が相次いでいたが、光代氏はシネマライブと講談が好相性だと見抜いていた。

 「私が自分のお小遣いで初めて見た映画が、森田芳光監督の『のようなもの』(1981年公開)だったのですが、その時に『落語を映画でやるんだ』ってすごく斬新で面白かったんです。スクリーンのワンショットがどれだけ映えるのかを体感して、森田さんは落語がスクリーンで映えるってわかっていたんだなと思いました。それでシネマライブをやる時も落語は絶対にいけるという確信があって、立川談志さん、笑福亭鶴瓶さん、たけしさんも立川梅春として落語をやっていただきましたが、いずれも大好評でした。同じひとりしゃべりの講談も絶対に合いますし、松之丞さんがやると、迫力が倍増、それ以上になりますから、スクリーン映えするという思いがありました」。

 10年という節目を迎えて、さらなる飛躍を誓う。「シネマライブはもっと伸びしろがあるので。TOHOシネマズさんの全館とはいかないまでも、半分くらいの館で上映できるようになればと思っています。レギュラーのネタ番組をテレビでやるのが難しい中、芸人としての本領が発揮できるシネマライブという場所は続けていきます」。

■『爆笑問題 with タイタンシネマライブ』
爆笑問題をはじめとした人気芸人たちが出演する『タイタンライブ』を、全国のTOHOシネマズ系映画館で同時生中継。お笑い好きのみならず、お笑いイベントの会場には足を運んだことのない層にも「気軽にライブを体感できる」と好評を博している。今年の6月公演から和歌山、富山が加わり、全国20館での上映となった。

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  • 太田光代社長

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