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ピエール瀧容疑者の作品「自粛」を巡る賛否 専門家はどう見る

 麻薬取締法違反容疑で逮捕されたピエール瀧(本名・瀧正則)容疑者が所属するテクノユニット・電気グルーヴのCD・映像等の作品が、彼の逮捕を受けて出荷停止・回収となり、デジタル配信されている作品に関しても配信停止の対処がなされた。本件に対し、音楽家の坂本龍一氏はTwitterで、「なんのための自粛ですか?電グルの音楽が売られていて困る人がいますか?ドラッグを使用した人間の作った音楽は聴きたくないという人は、ただ聴かなければいいだけなんだから。音楽に罪はない」とコメントするなど、各所で賛否両論が巻き起こっている。このような不祥事を巡る「自粛」について専門家はどう見るのか。音楽ジャーナリストの柴那典氏に寄稿してもらった。

電気グルーヴのCD、デジタル配信楽曲に加え、ライブ等の映像作品も、出荷停止・自主回収となった

電気グルーヴのCD、デジタル配信楽曲に加え、ライブ等の映像作品も、出荷停止・自主回収となった

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◆現状、こうした問題に明確な指針は存在しない

 ピエール瀧の麻薬取締法違反容疑での逮捕を受けた「自粛」を巡る話題が賛否両論を呼んでいる。所属レコード会社のソニー・ミュージックレーベルズは、3月13日、電気グルーヴのCDや楽曲の配信と出荷の停止、回収を決定。これに対し、方針の撤回を求めるオンライン署名に6万筆の支持が集まる(3月25日現在)など大きな波紋を呼んでいる。CMやドラマなど俳優活動の影響も多岐に広がるなか、出演映画『麻雀放浪記2020』を配給する東映の多田憲之社長は、同作をノーカットで予定通り4月5日に公開すると発表。観客の意思に委ねる判断を示した。

 海外においてはこういった薬物所持の罪で作品が影響を受けることはほとんどない。しかしその一方、性的虐待や人種差別発言については、厳しい対処がとられることが多い。たとえば今年1月、未成年者などへの性的暴行疑惑を告発するドキュメンタリー『Surviving R. Kelly』の反響を受け、ソニーの音楽レーベル「RCA」が米出身のアーティスト、R・ケリーとの契約を解除したと報じられた。また、レディー・ガガはデュエット曲「Do What U Want feat. R. Kelly」をすべてのストリーミングとダウンロードサービスから削除。現在は聴けなくなっている。

◆なぜ決断に至ったか、意思決定者のメッセージを明確に示す必要があったのでは

 こうした問題に、現状、明確な指針は存在しない。『被害者がいる犯罪かそうでないか』という基準も挙げられるが、判断が難しいケースもあるだろう。企業がコンプライアンスに細心の注意を払わなくてはならなくなった時代背景もある。しかし一方で、ファンや世論の反応を見ると、こうした自粛行為が逆にレーベルのブランドを毀損するリスクもある。

 何より大事なのは、こうした対処の判断自体が、企業体としての価値観を強く問われる発信になる、ということだ。だからこそ、レーベル側は『ファンの皆様、関係各所の皆様にご迷惑とご心配をおかけしております』という無味乾燥なコメントではなく、なぜ今回の決断に至ったか、意思決定者のメッセージを明確に示す必要があったのではないかと思う。

●柴那典(しば とものり)
1976年生まれ。ライター、編集者、音楽ジャーナリスト。音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。著書に『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)ほか

提供元:CONFIDENCE

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