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【バラエティー制作現場探訪 Vol.1】お笑い制作の精鋭集団「シオプロ」若手社員のリアルな声

 2018年、バラエティー番組は変化の時を迎えた。『とんねるずのみなさんのおかげでした』や『めちゃ×2イケてるッ!』など長く愛されたテレビ番組が終了し、往年のファンが悲しんだ一方で、ネット動画配信サービスではテレビ以上の豪華キャスト&莫大な予算のバラエティーが次々と制作され、支持を集めている。放送コードの規制強化や放送形態が多様化する中、コンテンツの内容がますます問われていくバラエティーの今後はどうなっていくのか。そのヒントを探るべく、テレビ東京『ゴッドタン』『勇者ああああ』やAbemaTV『日村がゆく』などを手がける番組制作プロダクション「シオプロ」代表の塩谷泰孝氏と同社の若手社員に話を聞いた。バラエティーの未来を担う若き才能たちは、何に憧れ、何を思いながら日々の業務に励むのか。

お笑い制作の精鋭集団「シオプロ」若手社員にインタビュー(左から鈴木深さん、鎌田柊太郎さん、牧野玖美さん、谷口晴楽さん、坂元奎太さん)(C)ORICON NewS inc.

お笑い制作の精鋭集団「シオプロ」若手社員にインタビュー(左から鈴木深さん、鎌田柊太郎さん、牧野玖美さん、谷口晴楽さん、坂元奎太さん)(C)ORICON NewS inc.

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■全員に共通するのは「番組制作会社ではなく、シオプロに入りたかった!」

 話を聞かせてくれたのは、入社2年目の谷口晴楽さん(『日村がゆく』担当)、1年目の坂元奎太さん(『勇者ああああ』担当)、鈴木深さん(『ゴッドタン』担当)、牧野玖美さん・鎌田柊太郎さん(『日村がゆく』担当)の5人。見た目の雰囲気も性別もバラバラな若者たちだが、共通しているのはバラエティー番組への深すぎる愛情だ。全員が学生時代からシオプロが携わってきた番組に熱中し、テレビ制作を志した。いや、正確には“シオプロ入社”を志した。

 「学生時代から『大好きな番組を作っているシオプロに入りたい!』という思いだけだったので、ほかの制作会社は受けませんでした」(谷口さん)
 「昔から憧れていましたが、番組を見て『この芸人さんが出て、この面白い感じは……、シオプロ制作かな』とわかるようになってきた頃には、シオプロを“唯一志望”にしていました」(牧野さん)
 「愛知の大学で教員を目指して勉強していたのですが、シオプロが好きという思いを諦めることができず、ダメ元で応募しました。教員になると約束していた親とは揉めましたが(笑)、自分の思いを伝えて納得してもらいました」(坂元さん)

 影響を受けた番組を尋ねると、シオプロ制作の番組のほか『みなさん』『めちゃイケ』『ガキの使い』など人気番組の名が挙がったが、バナナマン、おぎやはぎ、オードリーなど芸人の深夜ラジオも人気だった。中でも鎌田さんは「人生で一番衝撃を受けたのは『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』です。自分が笑いに携わる仕事をすると決意した番組ですし、大学の卒業論文もこの番組をテーマにしました」というほど。話を聞いた以外の若手社員にもラジオリスナーが多く、ここからも“シオプロイズム”が感じられた。と思ったが、代表の塩谷氏は「俺は学生時代、ラジオ聞いたことないよ。ガハハ!」と笑い飛ばした。

 以前に塩谷氏にインタビューした記事(http://www.oricon.co.jp/news/2095395/)で、出演する芸人との“距離感の近さ”がシオプロの特徴と紹介したが、新入社員も早速感じているようだ。『日村がゆく!』担当の谷口さんは「日村さんがすぐに私のことを覚えてくださいました。『そんなバカなマン』という番組が大好きでシオプロに入って、その番組にも携わることができて、いま死んでも悔いはないです(笑)」とうれしそうに話す。同番組担当の鎌田さんも「風俗ネタの回の担当で、連絡を取るうちにお店のグループLINEに入れられました(笑)。別のお店のニューハーフ風俗嬢の人は、収録前日に急に『出たくない』って連絡が来たので、急いで会いに行き『大丈夫ですよ』って励ましたことも…」と、他業界の新人ではありえない対応力を身につけている。

 『ゴッドタン』担当の鈴木さんのエピソードは、塩谷氏が教えてくれた。「鈴木に『マジ歌選手権』のリハーサルで、ちょっと試しに歌ってもらったら、めちゃくちゃ上手で周りがざわついたんですよ。東京03さんの角田さんも『歌をやってた?』って聞くくらいの歌声でした(笑)」。鈴木さんは「イジってもらえてうれしかったです(笑)。『ゴッドタン』は僕のようなADでも演者さんに“こうしてほしい”という指示が出せますが、それが番組の面白さに直結するので、下手なことはできないという意識は常に持っています」と真面目な表情で語る。そんな鈴木さんの配属初日の最初の仕事は、人気企画「キス我慢選手権」で芸人にキスを迫るセクシー女優の演技練習相手で、「いきなり『シオプロって最高だな』って思いました(笑)」と鼻の下を伸ばしながら振り返ってくれた。

■“超ブラック業界”は過去の話 時代に合わせて働き方改革を目指す

 テレビ離れが叫ばれて久しいが、そんな状況でも制作会社に飛び込んでくるだけあって、全員そろって生粋のお笑い好きだ。大学4年の時に全日本学生落語選手権で優勝し、立川志の輔から「テンポと構成が素晴らしい」と絶賛された牧野さんは、高校生のころはオードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の『たりないふたり』にハマったという。「学校前に朝から並んでチケットをもらって、番組観覧に行っていました。ほかにもお笑い番組が大好きで、感想をつぶやく専用のツイッターアカウントも作ったり…」。教員を志望していた坂元さんも、『ガキの使い』をきっかけにお笑い番組の魅力に目覚め「そこからさかのぼって『ごっつええ感じ』も全部見て、どんどんのめり込んでいきました。高校生で『ウレロ』シリーズにハマって、DVDで本編よりも先にメイキングを見るくらい。友だちに知られると引かれると思って、お笑い好きなことはずっと隠していました(笑)」と明かす。

 秋田出身の鎌田さんは「『ゴッドタン』が半年くらい遅れて放送されるので、我慢できずにネットで動画を探して見て、次の日に『自分で考えたんだよ』って顔をして学校で芸人さんのマネをして人気を集めたり(笑)。高校時代にドイツに留学していたときも『ゴッドタン』だけはネットで見ていました」と過去のイタい行動を告白。そんな若手社員の話を聞いていた塩谷氏は「みんな気持ち悪ぃなぁ」とつぶやきながら、楽しそうな表情を浮かべていた。

 「僕はそこまでバラエティーに熱量はないです」と笑う鈴木さんだが、大学時代の恩師であるドキュメンタリー映像監督の森達也氏から「バラエティーはキツいからやめておけ」と助言されていたという。それでもシオプロに飛び込んだのだから、彼も生粋のお笑い好きだ。確かに森氏の指摘する通り、テレビ業界のADといえば、一般的に「きつい」「寝れない」「帰れない」などハードな職業というイメージが浸透している。だが、シオプロの若手社員に仕事のスケジュールを聞いてみると、「収録直前はたまに夜通しで作業することもある」と前置きしながら、それ以外の日は午前11〜12時ころに出社し、午後7〜8時ころに帰宅するという、意外なほど“ホワイト”な環境だった。これはもちろん、塩谷氏の考えによるものだ。

 「僕が若いときは超ブラックな環境で、1ヶ月くらい家に帰れないこともありました。テレビ局のトイレに行ったら、となりに某大御所アナウンサーの方が来て、面識がなかったのですが『お前、風呂に入ってないだろ!』って怒られて。言わずにいられないくらいムカつく悪臭だったんでしょうね(笑)。でも、今は働き方改革で変えていく時代ですから。ウチはカロリーの高い番組が多いので、1つの番組に対して作業量がどうしても多くなってしまうのですが、1人の量を増やすのではなく人数を増やして解決しようと。今年10人を採用したのですが、それまでの社員25人だったのが一気に1.5倍になって、俺が一番不安になっています(笑)」

 塩谷氏が働き方改革を目指すのと並行するように、バラエティーもテレビと配信の競争という新たな時代へ突入している。幼い頃からインターネットがあり、中学生の時にiPhoneが発売されたデジタルネイティブ世代の彼女たちが、これからのバラエティー番組でどのように活躍していくのか。面白いバラエティーを見つけたら、ぜひスタッフロールにも注目していきたい。

 個性的でお笑いが好きすぎる若手社員を迎えた代表の塩谷氏は、これからのバラエティー業界をどのように見据えているのか。後編では、そのビジョンに迫る。

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  • シオプロが手がける『バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく』(Abema TV)の番組カット
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  • シオプロが手がける『バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく』(Abema TV)

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