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“盗用”疑惑の『美しい顔』、新潮社が経緯説明 講談社の対応に「困惑」

 第159回芥川賞の候補作になった北条裕子氏の小説『美しい顔』作中に、石井光太氏のノンフィクション『遺体 震災、津波の果てに』内の表現と酷似する部分があると問題となった件で、『遺体 震災〜』出版元の新潮社が6日、書面で経緯を説明した。

文芸誌『群像』6月号

文芸誌『群像』6月号

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 第61回群像新人文学賞を受賞した『美しい顔』は講談社の文芸誌『群像』6月号に掲載。その後、『遺体 震災〜』からの“盗用”疑惑が問題となったことを受け、今月3日に講談社が声明を発表。参考文献として掲載しなかった点について謝罪したが、盗作・剽窃(ひょうせつ)といった指摘については抗議する姿勢を示した。きょう6日に発売された『群像』8月号でも、『遺体 震災〜』を参考文献として未掲載だった点については謝罪している。

 新潮社は一連の問題について、5月14日にまずは石井氏へ、講談社から両作品を比較した類似箇所のリストの提示、それを元にした事情説明と謝罪があり、同29日には新潮社に対し同様の事情説明と謝罪があったと明かした。

 その後、両社での協議に至り、新潮社は1. 『群像』の誌面で、何らかの回復措置を講じること、2. 特に酷似した箇所の修正、3. 石井氏を信じて取材に応じた被災者の方々への対応を考えること、4. 北条氏自身からの説明、5. 今回の件についての社としての見解をまとめること、などを要望。これら要請に「講談社には前向きに弊社の要望を検討頂いたことで、問題は徐々に解決に向かいました」とした。

 そんななか6月29日の読売新聞朝刊に、「小説に参考文献つけず 『群像』おわびと一覧掲載へ」との記事が掲載。これに対しコメントを求められた新潮社側は「複数の類似箇所が生じていることについては、単に参考文献として記載して解決する問題ではないと考えています。北条氏、講談社には、類似箇所の修正を含め、引き続き誠意ある対応を求めています」と見解を発表している。

 これを受け、講談社は今月3日に『美しい顔』の評価を問うため全文をネットで無料公開すると発表。併せて「6月29日の新潮社声明において、『単に参考文献として記載して解決する問題ではない』と、小説という表現形態そのものを否定するかのようなコメントを併記して発表されたことに、著者北条氏は大きな衝撃と深い悲しみを覚え、編集部は強い憤りを抱いております」と新潮社に対するコメントを発表した。

 新潮社は上記の声明に対し、きょうの文書で「この講談社のリリース内容に、弊社はただただ驚くとともに困惑するばかりでした。弊社のコメントを再度お読み頂ければお分かりのように『小説という表現形態そのものを否定する』記述などどこにもありません。また、講談社が怒りの矛先を向ける『単に参考文献として記載して解決する問題ではない』という弊社の見解も、5月29日以降の協議ごとに講談社側にはお伝えしてきたもので、今回のコメントではじめて弊社が表明したものではないことは、これまでの経緯からご理解頂けると思います」と、遺憾の意を示した。

 続けて「6月29日の読売新聞による報道以後、『美しい顔』という作品、また北条氏に対して、インターネット上で誹謗、中傷が激しさを増しているとすれば、弊社もそうした状況を良しとするつもりなど決してありませんし、同情申し上げるしかありません」とする一方で「しかしながら、そうした状況をつくり出した原因があたかも弊社にあるかのような講談社の声明は、本末転倒としか言いようがありません。そもそもの原因は、参考文献を掲載せず、類似箇所を生じさせた講談社側にあるのではないでしょうか。講談社には、版元として冷静な対応を望みます」と強く要求した。

 その上で、講談社と北条氏に対し「石井氏及び弊社が望むのは、残された課題2と3の一部への速やかな対処です。つまりは、参考文献掲載のみならず、特に酷似した箇所の修正であり、『遺体』で描かれた被災者の方々への引き続きの誠意ある対応です。講談社は『美しい顔』の全文掲載に踏み切りましたが、残念ながらこれらについては対処頂けていないままです」と引き続きの対応を求めている。

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