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フジ『ザ・ノンフィクション』好調の秘けつ 「民放局として視聴率」を意識、撮影期間も改革

 10月15日と22日の2週にわたり、2002年に発覚した「北九州連続監禁殺人事件」の犯人の息子(24)の初メディアインタビュー「人殺しの息子と呼ばれて…」を放送し、大きな話題となったフジテレビ系ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜 後2:00※関東ローカル)。番組を統括する立場にして、この息子を10時間にわたって取材した張江泰之チーフプロデューサーに、テーマ選びのポイント、ドキュメンタリー番組を作るうえでの心得と覚悟、シリーズ化の判断基準などじっくりと聞いてみた。

■20年の節目で断行した改革 F3を意識し短期間取材ネタも

 大学卒業後にNHKに入局した張江氏は『クローズアップ現代』や『NHKスペシャル』などを担当し、2004年に文化庁芸術祭やカナダ・バンフテレビ祭で優秀賞を受賞するなど報道番組の第一線で活躍。05年のフジテレビ入社後は『とくダネ!』やゴールデン帯の特番を担当し、2015年7月に自身も一人のプロデューサーとして携わってきた『ザ・ノンフィクション』のチーフPに就いた。

 「チーフP就任当初は番組が20年目を迎える節目でしたが、視聴率も番組の勢いも停滞気味でした。局にとって大事な番組ですし、『フジテレビの良心だね』って言ってくださる方も多くて、バトンを受け取った以上は『面白くなるように、こねくり回してやろう!』と思いました。テーマ選びで心がけているのは、何かを背負っている人にスポットライトを当てること。皆が皆、幸せじゃない世の中で、それでもひたむきに生きている人の姿をちゃんと伝えたい。わざと暗いテーマばかりを選んでいるわけじゃないですが、そういう人が多くなりがちなので、SNSでは放送時間になると『関東一暗い番組が始まります』とつぶやかれますね(笑)」

 張江氏が意識的に変えたのは、撮影期間だ。長期間の密着取材が番組の売りでもあったが、「時間をかけすぎることで鮮度が落ちることもある。視聴者の気持ちの移り変わりは早いので、感情に強く訴えるものは短期間の撮影でも勝負をしていこう」と改革に着手。視聴層のボリュームゾーンであるF3(女性50歳以上)層を徹底的に意識したテーマ選びにもこだわった結果、視聴率は上昇傾向となり昨年は同時間帯で1位に。「人殺しの息子と呼ばれて…」後編は、7年半ぶりに10%を獲得した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。とはいえ同時間帯には、2時間サスペンスドラマやバラエティー、不定期で人気スポーツ中継が放送されるため、「本当に1本1本が勝負です」と決して油断はしない。

 「フジテレビは民放局だから、番組を長く続けていくには絶対に視聴率が大事。ドキュメンタリーの作り手は、当然ながら作品性をアピールしたがりますが、内容の良し悪しと視聴率はまったく関係ありません。視聴率が悪いと『良い作品だったよ』と傷を舐め合いますが、そんなことをしていても前進しませんし、民放でドキュメンタリーがなくなってしまう。0.1%でも視聴率を上げて、『ザ・ノンフィクション』が視聴習慣化すれば、より社会的なテーマ、例えば夏には戦争特番を制作するといったような、視聴率をあまり意識せずに社会的に意義のある作品にも取り組めるようになるんです」

■大事にしている3つの基準 時には現実を超えるドラマが生まれる

 番組のテーマの決め方について、複数のスタッフによる定期的なネタ出し会議があるのかと思っていたが、張江氏は「私が一人親方です」ときっぱり。制作会社やフリーのディレクターなど、番組に携わるスタッフと個別に連絡を取り「こういう企画はどうかな?」と提案することもあれば、逆にスタッフから売り込まれた企画を吟味してGOサインを出すことも。常に何十本もの企画が同時進行しており、「私の頭のイメージでは、来年の秋くらいまで放送の予定が何となく決まっています。放送時期をある程度は明確にしておかないと、スタッフも暗闇を走っている感覚になって、迷惑をかけてしまう。各企画のおおよそのゴールを決めて、そこから放送日をパズルのように埋めていく感覚ですね」。

 来年までの予定がびっしりと書き込まれた資料を見せてもらうと、各企画について張江氏がそれぞれ丁寧に説明してくれた。「12月にはキラーコンテンツを持ってきますよ。実は中国政府から『一緒に番組を作りたい』と声をかけられて、今年の8月に共同制作1本目の『上海シングルマザー物語』を放送したところ、向こうの反応も良かった。その第2弾として、現在、2人の日本人が上海でラーメン店を開業しようと悪戦苦闘する姿を撮影中です。そのスタートのところと今後の可能性をお見せしたいですね」。

 番組として「放送できる」とジャッジする基準は、3つあるという。「主人公が魅力的であるか」「1時間ドキドキしながら見られるストーリーであるか」「20秒でもいいからエモーショナルに訴えられる瞬間があるか」。この3つの条件がそろった上で、最終的に「主人公を好きになる、応援したくなる」との思いを視聴者に抱いてもらうことが、張江氏にとっての「番組としての成功」だ。

 長期的に追いかける“シリーズ化”する判断基準は「視聴者の皆さんが主人公のその後の姿を見続けたいか」とこちらもきわめて明快。「『上京物語』の嘉数仁くんや『マキさんの老後』などの人気シリーズは、私がいる限りは続けていきます。ほかにも“日本一有名なニート”でニート王国を作ったPhaさんや、地下アイドルファンのキヨちゃんなど、その後が気になる人もいろいろ考えていますよ」。

 筋書きのないノンフィクションだからこそ、時にはフィクションを上回ることもある。最近で話題になったのは、9月17日に放送された柔道一家に生まれた姉妹の成長を描くシリーズの第3弾「乙女盛りを勝負にかけて…18歳真夏の涙」だ。主人公は全国大会の団体優勝を目指す名門女子柔道部のキャプテン。切磋琢磨してきた親友であるエースが大けがを負い大会に出場できないピンチに陥るも、自分の妹が入学して目覚ましい進化を遂げ、最後の決勝ではキャプテン自ら勝利し、見事に全国優勝を飾った。

 あまりにも劇的で“出来すぎ”な展開に「知り合いから『あれ、やらせだろ?』って言われましたけど、当然のことながら全国大会の結果をこちらが操作できるわけがないです」と張江氏は笑う。もともと、妹が天才柔道少女ということで2014年から密着が始まった同シリーズだが、今回はスピンオフとして姉を主役にしたところ、制作側が予想もできない結果が生まれた。読めない展開の先に感動がある、これこそノンフィクションの醍醐味だろう。



関連写真

  • フジテレビ『ザ・ノンフィクション』張江泰之チーフプロデューサー (C)ORICON NewS inc.
  • 大きな話題となったフジテレビ系『ザ・ノンフィクション』の「人殺しの息子と呼ばれて…」 (C)フジテレビ
  • 大きな話題となったフジテレビ系『ザ・ノンフィクション』の「人殺しの息子と呼ばれて…」 (C)フジテレビ

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