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有馬隼人&堀潤が語り合う、TVに高まる不信感とニュースメディアのあり方

 TOKYO MXで放送800回を超える人気番組『モーニングCROSS』が10月より新たに日曜版『激論! サンデーCROSS』をスタート。両番組でMCを務める堀潤と、同じくTOKYO MXのニュースショー、『TOKYO MX NEWS』の新MCとなった有馬隼人に、“メディアは、ニュースは、今どうあるべきか”“東京五輪に向けて今やるべきこと”を語り合ってもらった。

◆TVメディアへの高まる不信感にどう応えていくべきか

――お2人は就職活動の時期も同じで、なおかつNHKとTBSから離れ、それぞれ独自の道を開拓してこられたという共通点もあります。TOKYO MXでの再会と、今の意気込みなど教えてください。
堀 もう社員かというくらいMXに通っていますが(笑)、手探りで始めた『モーニングCROSS』では、朝からシリア問題、イスラエル問題など本丸のニュースもきちんと触れつつ、リアルタイムで視聴者も参加し議論できる場として、段取りにこだわらないニュース番組を展開してきたつもりです。今回は日曜昼という新たな枠への拡張ということで、視聴者も出演者もスタッフも、さらに深く議論し、考える場にしていきたい。MXという局は都が出資しているわけですが、たとえば都政や都議会、知事への批判も取り扱える懐の深さ、自由さを持っています。スタジオのどこかで誰かが表情を曇らせていることはたまにありますが(苦笑)。
有馬 学生時代から東京で17年暮らし、もはや東京はホームタウンです。ここには私のように東京以外で生まれた方もたくさん住んでいる。そんな人々が、ホームタウンとして自信を持てる情報をニュースとして伝えていきたいと思っています。夕方の時間帯なので、できるだけ暖かく、多面的にいろんな角度から情報に接していただけるよう心がけていきたい。堀さんは同期ではあっても、思い切った角度で行動できる稀有な存在。ジャーナリストとしても非常に信頼できる。MXでは大先輩です。
堀 就活で一緒だった者として言わせてもらえば、有馬さんはもう当時からエース級の逸材。スパッと辞めて次の道へというのもかっこよかったですよ。それがMXに……。ついに君もかと(笑)。例えばキー局時代には5秒でも10秒でも時間がかかりすぎると、それだけでとんでもない“尺泥棒”のようなイメージで時間をコントロールしていたじゃないですか。そこがMXなら臨機応変に、柔軟に対応してもらえる。これは特色だし、特長。あるテーマについてとことん議論するのにも向いていると思います。固定で観ている人も多く、Twitterなどで参加して、誤情報などもすぐに訂正してくれます。
有馬 イメージとしてラジオ番組にも近いですね。極端な話、5000字くらい必要な説明を特にキー局では50字で簡潔にわかりやすくまとめるといった作業が発生する。その過程で言葉を選びすぎ、何も伝わらない結果になってしまったり。局にいた頃の先輩たちには、相手が小学校でもわかるように喋りなさい、VTRを作りなさい、と教えられて、実際に現場でもそれは信じられています。ただ、ラジオの場合は間違った言葉もすぐに言い直せますし、5000字分の情報をそのまま説明できる。MXは、そういう意味でラジオ寄り、視聴者に寄りそう局ということかも。例えば、テレビの世界ですと、この情報は要らない、と作り手側が勝手にジャッジするケースも多い。ですがラジオならば“こういう情報は要りますか?”とまず一度、聴取者に問いかけてみることができるんです。その結果、“あの時ちゃんと要るかどうか聞いてくれたよね”という信頼関係が伝える側と聴取者の間に生まれる。今は、“どうせ出したいニュースだけ出してるんだろ”という不信感が強い。まず、そこから変えていかなければ、という思いも強いですね。

――視聴者のニーズでいえば、政治家やタレント含め、ゴシップやスキャンダルがニュースとして堂々と扱われる現状はどう思いますか。
堀 結局、雑多な情報の1つとして人間ドラマみたいなものも渦巻いているのがテレビだとするなら、観る人がどう判断するかということでしかないんだろうと思います。ただ、弱っている人を袋叩きにしていいんだ、というような空気感は、個人的には嫌ですね。その心理の根源が経済的な格差や、将来や生活への不安・不満なら、もっと根本的に考えていかなければならない。副産物としてTwitterやSNSが荒廃してしまうとしたら、とても残念な影響ですね。
有馬 むしろ、可視化されたということかもしれません。それまでテレビでは直接的な罵倒をできなかった領域がSNS上で言語化されてしまって、それをテレビがまた取り込む奇妙な循環というか、相互作用。そういう意味では、SNSなどを介した視聴者との距離感も意識せざるをえないものですよね。
堀 『モーニングCROSS』でのSNS活用では、視聴者の自治が働くようになってきているんですよ。もっと罵詈雑言が寄せられるのかと身構えていたら、Twitterユーザー同士で、“ちょっと言い過ぎでは”とか“もっと建設的な意見を”という投稿を共有し合っている。都合のいいものを切り取って峻別するという手法をあらかじめ放棄しているからこそ、集合知的な賢さが視聴者に生まれていく過程を見てきました。結局、いわゆるメディア構造への不信感というのは、テレビ側が視聴者を信じていなかったということに由来するのだと思います。特権的な壁の内側に立てこもって、とにかくオレの出す料理を食え、という。食べる側の声を聞く気がない。僕らも未完成で不完全で、間違えるし偏ったりもする。だから美味しい料理のために皆さんの力が必要なんですと。今はそういう立場から番組に携わっているつもりです。

◆東京五輪・パラ五輪に向けてメディアが果たす役割とは?

――2020年の東京五輪・パラ五輪に向けて東京はどう変わるべきだと考えますか。また、そこでメディアの果たす役割とは?
堀 先日、上海で中国と日本のジャーナリスト同士が交流する会議に参加してきたのですが、中国に行くと毎回、都市の発展ぶりやテクノロジーの進化に驚かされます。日本ではまだ決済は現金主義で、クレジットカードでさえ使えないところも多い。ですが、上海や北京だとスマホアプリとかで決済しちゃう。そのへんの屋台でもQRコードにスマホをかざせば済んでしまいます。普段は気づかないけれど、海外から東京に戻ると、あれ? と思うことはそういう意味でいくつもあります。2020年、改めて見たら、なんだ東京って案外ショボイな、などと思われないためにできることは、まだあるはず。規制だとか古い慣習とかに縛られすぎていているせいかもしれない。
有馬 東京に対して何かしら良いイメージを持って訪れてくれるであろう海外のお客さんに、何を提供するかということですよね。リオでもそうでしたが、どうしてもメディアでは「こういう問題が起きそう」というニュースが先行しがち。東京や五輪に興味のある海外の方にそんな情報ばかりが伝わってしまうのは少し心配です。きちんと、東京の魅力という面も堂々と情報発信していくべきでしょう。迎える側の都民すべてがホストになるともいえますから、今からホストとして的確にガイドできるような意識作りも必要。自信を持って言葉を発するだけでもいい。迎える側のそういったポジティブな空気を作っていくことも、これからの課題の1つだと思います。
堀 リオパラ五輪の取材に行ったとき、街の人々の醸し出すハッピーな空気感がとても印象に残りました。それこそが本当に重要なんじゃないかと思いましたね。東京はバリアフリー対策という面でも、あるいはLGBT対応でも、まだまだやりようがあるはずです。世界標準をどこかに合わせるということではなく、多様な文化・習慣・言語をどれだけフラットに受容できるかという話。これは、放送・報道の現場でも同じですし、そこを伝えて改善の糸口にできるのもニュースメディアとしての腕の見せどころなんだと思います。
有馬 前回の東京五輪のときも、実は都民の50%以上は反対派だったそうです。でも実際にやってみたら、こんなに楽しい祝祭なのかと。スポーツを観る楽しみを、都民はもちろん日本中の人々が知り、盛り上がった。では今回、どんな新しい感動が提示できるのか。360度カメラを会場内外にいくつも設置して世界に同時配信するとか、日本の現在の技術ならここまでスポーツ観戦は進化しているのだ、ということを世界に示す大きなチャンスでもあります。「行ってみたら素晴らしかった街」「絶対に行ってみたい街」と改めてアピールできる。そういう意味でもこれからの3年間は本当に大事だと思います。



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