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公開120館規模で『聲の形』10億突破 続く“青春ラブストーリー”アニメ映画のヒット

 新海誠監督作品の映画『君の名は。』が、8月26日の上映開始から28日間で興行収入100億円を突破。宮崎駿監督以外では初の興収100億円を突破したアニメ作品となり、大きな話題を呼んでいる。一方、『君の名は。』の陰に隠れてしまった感があるが、上映館数が少ないながら9月17、18日の映画観客動員ランキングで2位となり、公開120館という規模としては異例の公開12日目にして興収10億を突破したのが京都アニメーション制作によるアニメ映画『聲の形(こえのかたち)』だ。スタジオジブリや大御所監督による作品、萌え系や奇抜なストーリーを軸にした深夜アニメ系の映画ヒットが多かった中、若者の繊細な心理劇を描いた“青春ラブストーリー”ものが時同じくしてヒットしているのだ。

京都アニメーション制作『映画 聲の形』(C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

京都アニメーション制作『映画 聲の形』(C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

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■実は当初本命視されていたのは『聲の形』だった!?

 『君の名は。』は、東京に暮らす男子高校生と飛騨の山奥に住む女子高生の夢の中で入れ替わるという、中高年世代にとっては映画『転校生』を思わせる設定だが、内容的には彗星の衝突なども絡むSF要素を含んだ青春ラブストーリーとなっている。監督の新海誠氏は現在43歳、『言の葉の庭』(2013年)など良質なアニメ作品の監督・脚本・演出を手掛けて、すでに多くのファンがいるが、これまでの作品の公開館数が小規模だったこともあって、“知る人ぞ知る”感もあった。本作で一気にメジャーの監督となったことは間違いなく、ロックバンド・RADWIMPSによるサントラも大ヒットと、社会現象とも言える人気を獲得している。しかし、当初は今年公開予定のアニメ映画では『聲の形』を本命視している人が多かった。

「もちろん、神木隆之介ら豪華俳優陣をキャストに迎えた『君の名は。』も鳴り物入りでしたが、“大本命”とされていたのは『聲の形』だったと思います。原作は『週刊少年マガジン』に連載され、『このマンガがすごい!』(2015年版)の男編で1位になるほどの人気コミック。聴覚障害者といじめという非常にデリケートな問題をテーマにした青春ラブストーリーで、道徳・人権学習用教材ドラマにもなっています。その難しいテーマを、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』などを手掛けた京都アニメーションが制作、繊細な心情描写に定評がある『けいおん!』の山田尚子監督が手がけるわけですから、特にアニメや原作ファンからの期待値は高かったのではないでしょうか」(エンタメ誌編集者)

■ここ数年“萌え”に押され気味だったアニメ映画に変化の兆し

 ここ数年、相変わらずスタジオジブリによる作品、『名探偵コナン』などのファミリー向け作品が人気を集める一方で、劇場版アニメ映画といえば『ガールズ&パンツァー』や『ラブライブ!』、『魔法少女まどか☆マギカ』といったコアファンが多い深夜アニメからの劇場版作品が映像パッケージも含めてヒットするというパターンが多かったように思う。各社がプッシュする邦画作品と比較すると上映館数こそ多くないものの、数億〜数十億規模の興収を記録。世界観やストーリーなどしっかり作りこんであるものの、傾向としてはいわゆる“萌え”であり、基本的な客層としては、大人のアニメファンがメインといったところだろうか。

 しかし、その流れがあった中で、『君の名は。』も『聲の形』も、青春真っただ中の普通の若者が成長していくという普遍的なテーマを描き、普段映画を観ない層にも受け入れられたことで、ここまでの大きなヒットとなっている。
「『君の名は。』では、電車で高校生のカップルや男女グループなどが、映画のパンフレットを手にしながら感想を語り合うなんていう光景もありましたし、『聲の形』も劇場で女性同士や若いカップルをよく見かけます。近年、アニメ映画がある程度安定した興収が見込める“萌え”に押され気味だったなかで、これまでアニメに興味がなかった若い層が青春映画を観に行くような感覚で観ている感じがあります。「こっちが面白かったから観てみよう」と、相乗効果でヒットしているところもあるでしょう。この2作品の成功で、今後も、中高生をターゲットにした王道青春系のアニメ映画が増えていくかもしれませんね」(前出・編集者)

 王道青春アニメの監督といえば、細田守監督が真っ先に思い浮かぶところだが、今回、気鋭の監督によるヒットが続いたことで、このジャンルが盛り上がっていく可能性は充分に考えられる。また、近年、少女漫画などからの実写化が相次いでいる中で、アニメでも若者を取り込めるとなれば、実写化の流れに批判が少ないアニメにシフトしていくかもしれない。両監督の次回作や新たな作品の登場にも期待したいところだ。

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