• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
ORICON NEWS

衰退するコント番組に一石を投じる『SICKS』 テレ東イズム溢れる型破りな挑戦

 コント番組なのか、ドラマなのか。新しい感覚を覚える『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』(テレビ東京 毎週金曜 深夜0時52分から放送)が中盤を迎え、「面白くなってきた」「ワクワクしてきた」と話題を集めている。一見、バラバラに見えていたコントに張り巡らされていた伏線が次々と回収され、やがてひとつのストーリーへ。おぎやはぎやオードリーをはじめ、注目の若手女優・清水富美加、アイドルグループ℃-uteの中島早貴らが熱演するストーリー仕立てのコントは、Czecho No Republicを起用したエンディングテーマが流れるまで、独特な世界観をまっとうする。テレビ東京イズム漂うチャレンジングな番組だ。

『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』に出演しているおぎやはぎとオードリー (C)ORICON NewS inc.

『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』に出演しているおぎやはぎとオードリー (C)ORICON NewS inc.

写真ページを見る

■深夜帯ならではの尖った切り口で魅せるコント×ドラマ

 “現代病”を軸に、おぎやはぎ・矢作兼がコンプライアンスを気にしすぎる公務員を演じる「公務員戦隊コンプラー 叩かれたくない病」や、オードリー・若林正恭による自分の好きな清純派AV女優が“処女”と信じて疑わない「永世認定処女 ガチ恋病」、佐藤仁美らが鬼気迫る表情でネットを駆使して依頼を調べ上げる「鬼女探偵事務所 晒したい病」など、現代人のあるある“症状”を誇張して展開されるコントは、シュール感たっぷり。深夜ならではの、プライム帯の番組では見られない際どい切り口からも挑戦が窺える。セットを作らず完全オールロケ。通常のコント番組とは違い、“強烈なキャラクター”に頼りすぎないところなどからは、制作側のこだわりが感じられる。

 スタッフには映画、ドラマ、舞台で高い評価を受ける精鋭たちが集結している。監督は、映画『ヒロイン失格』『貞子3D』『ハンサム★スーツ』などラブストーリーからコメディー、ホラーなど幅広いジャンルで高い評価を受ける英勉(はなぶさ・つとむ)。脚本は『ウレロ』シリーズの土屋亮一氏、劇団「ピチチ5」「ベッド&メイキングス」などを主宰する福原充則氏、『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)、『はねるのトびら』(フジテレビ系)、『リンカーン』(TBS系)に携わった大井洋一氏、TBSラジオ『バナナマンのバナナムーンGOLD』の構成作家・永井ふわふわ氏というそうそうたる顔ぶれ。よくあるコント集かと思いきや、各コントエピソードに散りばめられていた伏線が回収され、回を重ねるごとにつながっていくドラマのようなエッセンスは、コント番組の常識を打ち破る。

■佐久間プロデューサーを突き動かしたコント番組への想い

 テレビ東京は、山田孝之をドキュメンタリータッチに描いたドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』、そしてアドリブコント企画から派生して映画2作も制作された『ゴッドタン』など、現代の事象にうまくフォーカスした新感覚の「ドラマ」「コント」番組を生み出すのが得意だ。『SICKS』は、各局のコント番組が減少する中、『ゴッドタン』、『ウレロ』シリーズなどを手掛ける佐久間宣行プロデューサーの肝いりでスタートした。

 ここ最近、かつて隆盛を極めていた「コント番組」を見かける機会がすっかり減ってしまった。継続して話題を提供しているのは、NHK総合の『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』くらいだろう。佐久間プロデューサーは今年5月に実施したORICON STYLEのインタビューで「何が起こるか分からないトークバラエティも好きですけど、『夢で逢えたら』(フジテレビ系)などに強い影響を受けたのは、紛れもない事実。でも今の時代、ただコントを番組として継続すると、回顧主義の作品になってしまうことが多いので。だったら今の時代に即した要素を入れた形で、今の若い世代の視聴者にも届けたいなっていう気持ちはあります」とコントへの想いを話している。

■『ゴッドタン』の成功に見る『SIKCS』の番組作り

 そんな佐久間プロデューサーは『ゴッドタン』を手掛ける際、「捨て身の覚悟で新たな一石を投じる必要があった」と明かしている。今でこそ10年目を迎えるほどの人気となった『ゴッドタン』だが、当初は「1クールのみ」の放送、当時テレビを席巻していた関西芸人をキャスティングできず、東京芸人のみで番組を制作するなど、実は制約の多いなかで始まった。氏はとある講演で「番組が続いたのはDVDが売れたことが大きいが、単なる偶然だけじゃなかったはず。制約が多いなかで選択したものが独自性につながった」と分析していたが、これぞまさにテレ東イズム。『SICKS』も制約の範囲内で、ぎりぎりのところまで攻めていると言える。

 また、「若い世代の視聴者にも届けたい」という想いは、絶妙なキャスティングにも表れている。おぎやはぎやオードリー、アンガールズ・田中卓志はもちろん、清水や中島、岸井ゆきの、佐藤仁美、大倉士門などお笑い芸人以外の旬の俳優・女優をキャスティングしているが、「アイドルや演劇人を取り入れれば、お笑いマニアだけでなく新規のファンもつきやすい。お笑いマニアだけが集まる番組よりも長続きするからだ」と佐久間プロデューサー。『ゴットタン』の成功から学んだ結果だ。

 『SICKS』は人気ドラマ『孤独のグルメ』の後枠に放送されるという追い風もあって、若年層や大人の男性視聴者など幅広い視聴者を取り込んでいる。東京03の飯塚悟志、ハライチの澤部佑、キングオブコメディの今野浩喜、どきどきキャンプの佐藤満春、ザ・ギースなど、勢いのある芸人が続々と出演することも発表されたばかり。チャレンジングな展開が功を奏し、コント番組の人気シリーズとして定着していくか、注目したい。

(文/長谷川朋子)

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

 を検索