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GoogleとApple、「音楽サービス」異なる戦略

 日本でグーグルの定額制音楽配信「Google Play Music」が始まった。聴き放題のストリーミングが使えるだけでなく、ストアや、5万曲まで手持ちの曲をクラウド保存できるストレージを提供するなど、これまで参入してきた定額制サービスとは一線を画する内容となっている。グーグルにはApple Musicが放つ圧倒的な音楽ブランドとしての存在感がまだ欠けるが、他社を凌駕する独自の狙いが見えてくる。

「Google Music」(左)は日常生活を音楽でどう良くするか、「Apple Music」(右)は音楽生活をさらに良くするか。音楽体験に対する2つのアプローチは異なる

「Google Music」(左)は日常生活を音楽でどう良くするか、「Apple Music」(右)は音楽生活をさらに良くするか。音楽体験に対する2つのアプローチは異なる

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 アップルとグーグルの共通点としては、人力のキュレーションによる「プレイリスト」が挙げられる。とはいえ2社では戦略がまったく異なる。

グーグルの特徴は「コンテクスト型プレイリスト」で、利用者のムードや行動、心境、時間に最適なプレイリストを常に提供し続けるモデルだ。勉強や運動、明るい気分、月曜朝の通勤時間など日常生活をベースに音楽を聴き出会うことができる。これは14年にグーグルが買収したプレイリスト型音楽配信サービス「Songza」が得意とする領域で、同社の知識や人材が生かされている(創業者達は現在も製品開発に従事)。音楽専門家達が日常というコンテクストへの理解を進めながら常に最適化を
図っている。

 アップルのプレイリストも専門家がキュレーションする手法を取っているが、その特徴は、「音楽」中心のプレイリストをメインに推し出している点であり、利用者の嗜好に合わせてプレイリストを次々と提案して音楽との出会いを促進する。特に「Connect」や動画配信など、アーティストと利用者を結びつけるチャンネルを複数設けていることから、音楽との接点に深みを持たせる利用法を意図していると感じる。

 一方でグーグルは、利用者の日常や感情をある意味「予測」することで、生活の中で手軽に音楽との接点を作る。つまり、グーグルは日常生活をどう音楽で良くするか、アップルは音楽生活をさらに良くするか、という音楽体験に対する2つの異なるアプローチが見えてくる。

 海外ではプレイリストが新しいラジオとも言われるほど、新しい音楽に出会う方法として注目を集めている。長期的に見た場合、今後はキュレーションを組み合わせながら、利用者データを活用し、プレイリストを最適化できるサービスに一日の長があると考えられる。この点では世界屈指のデータ企業であり、幾つものサービスを連携できるグーグルは優位なのではないか。

 課題はこのコンテクスト型プレイリストの魅力をどう日本人にマーケティングするか。特に世界的なサービスをローカルの市場に浸透させるには時間と人材が必要不可欠で、日本人向けかどうかは利用者や業界も気にする部分である。

 可能性として挙げられるのは、「日常生活を軸にしたプレイリスト」のイメージを訴求できるブランドや企業とのコラボレーションである。例えば飲食やスポーツのブランドやインフルエンサーが選曲するブランド・プレイリストなどを作ることで、利用者に価値観を届けることへの一歩になるだろう。

文/ジェイ・コウガミ(音楽ブロガー、All Digital Music)


(ORIGINAL CONFIDENCE 15年9月14日号掲載)

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