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なぜ完結した作品を“再アニメ化”するのか?

 『週刊少年サンデー』(小学館)の伝説のコミック『うしおととら』(原作:藤田和日郎)が今夏、TVアニメ化されることが先ごろ発表され話題を呼んだ。同作は1992年〜1993年にOVAが発売されており、TVアニメは初となるものの、厳密には“再アニメ化”となる。ここ最近、『うしおととら』をはじめ、『美少女戦士セーラームーン』や『ドラゴンボールZ』『HUNTER×HUNTER』など、1980年代〜1990年代に一世を風靡した人気作品の再アニメ化が相次いでいる。作品としてすでに完結しているものを、20年、30年経った今、なぜ改めてアニメ化するのだろうか? その背景や狙いについて探った。

『美少女戦士セーラームーンCrystal』は、4月より地上波で放送されることも決定。写真は昨年12月24日に発売された『美少女戦士セーラームーン Crystal オリジナル・サウンドトラック』ジャケット写真 (C)武内直子・PNP・講談社・東映アニメーション

『美少女戦士セーラームーンCrystal』は、4月より地上波で放送されることも決定。写真は昨年12月24日に発売された『美少女戦士セーラームーン Crystal オリジナル・サウンドトラック』ジャケット写真 (C)武内直子・PNP・講談社・東映アニメーション

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■“再アニメ化”には一部で批判の声も

 “再アニメ化”と一言でいっても、現在放送中の『ドラゴンボール改』(フジテレビ系)のようにシリーズのなかで特に人気の高かった『ドラゴンボールZ』をデジタルリマスターで再編集した作品、『美少女戦士セーラームーン』に代表される、より原作に近づけるかたちで完全新作としてスタートした作品、また過去のアニメ化では制作されなかった一部のエピソードを抽出し新作アニメ化した作品まで、様々だ。ある意味再放送ともいえるため、メイン声優が旧作とほぼ同じ『ドラゴンボール改』を除いては、キャストは若手声優に一新されるパターンが多い。

 なぜ改めてアニメ化する必要があるのか。根強いファンを持つ作品が多いだけに、再アニメ化発表の際には、旧作アニメファンから度々批判の声が聞かれる。過去に完結している作品をキャストも一新し完全新作としてイチから制作するというのは、旧作ファンからしてみれば嬉しくもありつつ、あの頃に夢中で見た作品を否定されたような複雑な気持ちにもなる。

 再アニメされる理由のひとつとして挙げられるのが、長期シリーズに多い“原作との相違”という問題点。アニメの放映が長期化すると、アニメのストーリーが原作に追いついてしまうことがあり、その場合は、原作のストーリーがある程度進むまで、アニメ版オリジナルストーリーを差し込むこととなる。また、アニメ化にあたって、視聴ターゲットなどを考慮し原作にはないオリジナル要素を入れ込むことも多い。もちろん、オリジナル要素=悪いということではないのだが、再アニメ化作品はアニメのオリジナル要素をカットし再編集した『ドラゴンボール改』や、キャラクターデザイン、ストーリーをより原作に忠実にした『美少女戦士セーラームーンCrystal』など、原作ファンがより楽しめる内容となっている。原作者が「監修」というかたちで関わっているパターンも多く、これは過去のアニメ作品に少なからず不満を抱く原作者の“落とし前”の意味合いが強いのだろう。

■子供だった世代も立派な社会人 再アニメ関連商品は“手堅い”

 また、ふたつ目の理由のヒントとなるのが、旧作アニメの高額Blu-ray BOX(以下、BD BOX)が好調なセールスを記録していること。ここ1、2年ほど、3万円台から、時には5万円以上する作品まで、旧作アニメの高額BD BOXが新作に混ざって上位にランクインするケースが目立っている。以前、この高額BD BOXについて映像ソフトメーカーの担当者に話を聞いたとき、ターゲットのひとつとして「当時、まだ年齢的にVHSやDVDなどを購入することができなかった20代〜30代のファン」を挙げていた。当時は子どもや学生だった世代も、今はある程度自由にお金を使える社会人になっている。彼らの購買意欲を掻き立てたことが、セールスを後押ししている。

 これは再アニメ化された作品も同様で、アニメファン以外の購入も見込めるため、原作や映像商品、グッズなど、うまくいけば新作以上の売上も期待できる。実際、『セーラームーン』は「20周年プロジェクト」の一環としてリアルタイムで見ていた20代、30代の女性をターゲットにした下着セットやコスメなどを展開し、大ヒット。大衆的な人気を獲得しているだけに、改めて脚光を浴びさせることで、コンテンツ全体を活性化させることができるのだ。

 しかし、再アニメ化が話題になっても、以前のように“社会現象”となるほどまで影響力を与える作品はいまだに生まれていないようにも思える。今後も冒頭の『うしおととら』や『銀河英雄伝説』など、多くの作品の再アニメ化が控えているが、直撃世代のみをターゲットに絞った安易な戦略では再び大きな渦を巻き起こすことは難しい。原作を知らない若い世代に響いてこそ、初めてムーブメントと呼べるのだ。
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